2000

12月

2000/12/31 「影との戦い」アーシュラ・K・ル=グウィン なぜか読んでいなかったジュブナイルファンタジーの名作、ゲド戦記のI。 若く未熟なゲドが、自分の影と対決して、影と再合一するまで。 「真の名前」という概念は、この種のファンタジーでは一般的なのだろうか。 どれがオリジナルなのだろう。 2000/12/28 「祈りの海」グレッグ・イーガン いま一押しのオーストラリアのSF作家グレッグ・イーガンの日本オリジナル 短編集。どの短編も、きらりとひかるアイディアがあり、かつそれを 単なるアイディアにとどめず、消化、展開させている。すばらしい。 今後も期待だ。 2000/12/26 「ひかるの碁 1-10」 平安時代の囲碁の鬼の幽霊に取り付かれた少年が自分の意思に反して 囲碁の世界に引き込まれていく。。。という話:)。週刊少年ジャンプ連載。 評判どおりさすがに面白い。おもわずgnugoをダウンロードしてしまった。 2000/12/22 「SFの殿堂 遥かなる地平 2」ロバート・シルヴァーバーグ編 -- ダン・シモンズのハイペリオン、 -- フレデリック・ポールのゲイトウェイ、 -- グレゴリイ・ベンフォードの銀河の中心、 -- アン・マキャフリーの歌う船、 -- グレッグ・ベアの道 「歌う船」が懐かしくてよかった。 2000/12/21 「リプレイスメント」映画 ストライキで出場を拒否している選手たちの代わりに雇われた、 アマチュアプレイヤの活躍。キアヌ・リーブスが、QBで主演。 「はずれもののチームが努力の末エリートチームを倒す」という 昔から非常にありがちなテーマの焼き直し。 アメフト版「がんばれベアーズ」というほどつまらなくはなかったけど。 2000/12/20 「SFの殿堂 遥かなる地平 1」ロバート・シルヴァーバーグ編 人気SFシリーズの作者に、シリーズの外伝的短編を書かせた短編集。 -- ル・グィンのハイニッシュ・ユニヴァース、 -- ジョー・ホールドマンの終わりなき戦い、 -- オーソン・スコット・カードのエンダー、 -- デヴィッド・ブリンの知性化宇宙、 -- ロバート・シルヴァーバーグの永遠なるローマ、 -- ナンシー・クレスの無眠人 読んでないシリーズや、昔読んだので忘れてしまっているもの、 日本未訳のシリーズもあったりするが、どれもさすがによく書けていて、 オリジナルシリーズから切り離しても面白い。 2000/12/18 「斜線都市」グレッグ・ベア 「女王天使」の続編。相変わらず複数のストーリーが同時並行する スタイルでややこしいが、それぞれのキャラクタがよく書き込まれている ので、それほど混乱はしない。 選ばれた人間を冷凍睡眠状態で未来へ送る巨大なピラミッド状施設は 半村良の「石の血脈」を髣髴とさせる。 バクテリアや昆虫のコミュニティを利用したバイオコンピュータという のも面白い。ロディがジルにコンタクトしてくるあたりは攻殻機動隊を 思い出させる。 2000/12/12 「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン 高校生のときに読んだものを再読。傑作シリーズの第一弾。 センスオブワンダー系なので、ネタを知っているとつらい。 その辺が落ちがわかっていても楽しめる「エンダー」とは違う。 科学と人類の未来を信じる「正しいSF」。最後の一文は、 わかっていてもやっぱり感動。 2000/12/8 「看護婦の世界」別冊宝島編集部 いろいろ大変なのね。医療行政の矛盾が一点に集中しているような。 2000/12/8 「闇に消えた怪人」一橋文哉 副題「グリコ・森永事件の真相」であるが、全部読んでも結局どういう グループが犯行を行ったのかまったく見えてこない。団体Zとはなんぞや。 これだけ気を使っているところを見ると、同和系だろうか。 オープニングの「北陸の男」が結局なんでもない、と言う落ちはひどいぞ。 2000/12/4 「エンダーのゲーム」オーソン・スコット・カード 「エンダー」シリーズの第一巻。再読。シャドウも悪くなかったけど、 やっぱりこっちのほうがずっといいかも。

11月

2000/11/29 「「大変」な時代」堺屋太一 副題「常識破壊と大競争」。1995年刊行。歴史を参照しながら 現在我々が置かれている状況を分析している。今から振り返っても 驚くほどあたっている。しかし日本の将来は暗い。 インターネット普及前なのでまったく言及がないが、インターネット について、どのように捉えているのか知りたい。 「じゃじゃ馬ぐるーみんUP! 1-25」ゆうきまさみ 6年間の連載が終わって単行本が全て出た。季節感のあるよい漫画だった。 問題は漫画の中の季節と、実際の季節がまったく連動していないことだが。 最後に15年後になって終わるあたり、古典的だが、それがまたうれしかったり して。次回作に期待。 2000/11/28 「バービーはなぜ殺される」ジョン・ヴァーリィ SF短編集。八世界シリーズ。しゃべるブラックホールが出てくる 「ブラックホールとロリポップ」はどこかで読んだことがあるような。 「80年代SF傑作選」とかだろうか。 少年時代の終わりをテーマにした作品が多い。設定とガジェットが多彩 なだけでなく、叙情的な作品が多い。すばらしい。 2000/11/25 「新釈遠野物語」井上ひさし 柳田國男の遠野物語に対するオマージュと言うか、パロディというか。 釜石の郊外の療養所で働く主人公が山中の洞穴に住む犬伏老人から 昔話を聞く、という形式。最後のおちが秀逸。 「魔球」東野圭吾 東京オリンピックのころを舞台にした、青春推理小説。 綿密なプロット、確かな描写力。すばらしい。 宮部みゆきに作風がちょっと似てるかも。 「仰天・プロレス和歌集」夢枕獏 「仰天・平成元年の空手チョップ」に先行する「仰天文体」で書かれた 和歌集?プロレスラーが書いた和歌に夢枕獏が解説をつけるという形式。 しかし、この本スパース。僅か35字x13行程度で例の改行の多いスタイル だからほんとうにスカスカ。 2000/11/24 「妖怪学新考」小松和彦 副題「妖怪からみる日本人の心」。 小学館ライブラリーという、普通の文庫本と新書の中間のような変な装丁。 論文集ではなく書き下ろしの本と言うことで、まとまりがあって読みやすい。 妖怪を考え出してしまう人間のコスモロジーを分析し、 いわゆる都市伝説のようなものもこの文脈で解釈していて、とても興味深い。 2000/11/12 「怪笑小説」東野圭吾 巷で評判の東野圭吾を読んでみよう、まずは短編集、と古本屋で購入。 が、なんかこれは違う。まるで清水義範だ。あとがきや解説によると やっぱり例外的な作品集らしい。普通の作風の物も読まねば。 「アルジャーノンに花束を」のパロディ「あるじいさんに線香を」は タイトルだけ笑った。 2000/11/4 「エンダーズシャドウ」オーソン・スコット・カード あの「エンダーのゲーム」をエンダーの副官ビーンの側から語ったもの。 基本的に起こることは「エンダーのゲーム」と同じだからストーリーは わかっているのだけれど、楽しめるところがすごい。 主人公ビーンはビジョルドのマイルズとイメージが重なる。 ビーンの悲劇的な体質や、結局生きのびた悪役アシルの話が 伏線として残されているので、きっと続編が出るのだろう。期待。

10月

2000/10/24 「科学の終焉」ジョン・ホーガン 著者は、サイエンスの記者。科学は収穫低減期に入っており、 今後、量子力学やDNAの構造や進化論に匹敵するような大発見はおき ないだろう、という主旨。本自体の主旨が混乱しているが、 「発見すべきことはすべて発見したからもう発見できない」のか、 「発見すべきことはたくさん残っているが、人間の能力や実験的な 限界によってもう発見できない」のか、ぜんぜん違うと思うのだが。 いずれにしろ、わたしはしがないエンジニアなので科学が終わっても 困らないけど。 個々の科学者をえらく批判的に描写しているけど、著者のその後の 取材に影響しなかったんだろうか。心配。現在の科学哲学者について 網羅的に概観できたのが収穫。 2000/10/20 「ディファレンス・エンジン」ウィリアム・ギブソン、ブルース・スターリング     サイバーパンクの両巨頭による共作。いわゆるスチームパンクというやつ。     19世紀のロンドンに、歯車でできた蒸気で稼動する計算機(エンジン)があって     「エンジンの女王」エイダやバベッジが実名で出てくる。     実は自己言及的になっており、この話自体が1991年に自意識を持った蒸気     計算機の産物なのである、という構造なのだが、はっきりいって私には     よく読み取れなかった。やはり私にはギブソンは読めても、スターリングは     読めないということだろうか。 2000/10/18 「柳生刺客状」隆慶一郎 短編集。表題作他、張りの吉原、狼の眼、銚子湊慕情、死出の雪。 表題作がよい。銚子湊慕情は全くの未完。わずか5年の活動期間というのが 本当に惜しまれる。 2000/10/17 「悪夢喰らい」夢枕獏 昭和60年の短編集。「中有洞」「骨董屋」など。 山系の幻想的短編が多い。 2000/10/12 「吉原御免状」隆慶一郎 処女作。伝奇的傾向が強い。ちょっと山田風太郎みたい。 「影武者徳川家康」のネタがでてきたりするが、脇役のアクが強すぎて 後水尾院の落胤で宮本武蔵に育てられたという、経歴だけは派手な 主人公のキャラが今ひとつたっていない。詰め込みすぎかな。 2000/10/8 「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク 人類が別のレベルに移行していく未来を描く、古典中の古典。 原書は1953年に発表されている。アポロ計画以前。 悪魔に酷似したオーバーロードのイメージが、時間をさかのぼって 人類の記憶に刻まれている、というのは面白い。     共有意識をもつことによって個々の個体が個性を失い、やがて     物質的な基盤をも捨てていくという未来の人類。 今となっては、ネタ的に見るべきものは無い(というか、いかに 多くのSFがこの作品に影響されているか、ということなのだろうけど) が、小説としての構造や叙情もさすが巨匠といったところ。 2000/10/6 「『夢分析』マニュアル」別冊宝島編集部 前半がユング流の夢分析、後半は夢分析によるカウンセリングの実例など。 カウンセリングを読んでいると、すごく危ない技術のように見える。 大丈夫なのだろうか。 2000/10/4 「月の王」夢枕獏 アーモン王子を主人公とする、古代インドを舞台にした冒険譚の短編集。 各短編のテーマは、陰陽師と通じるものがあるが、こちらのほうが古い だけあって、つっこみが浅いか。 2000/10/3 「妖樹・あやかしのき」夢枕獏 アーモン王子を主人公とする、古代インドを舞台にした冒険譚。 シリーズらしい。長さは結構あるけど、ねた的には短編程度。 軽い。

9月

2000/9/30 「超芸術トマソン」赤瀬川源平 路上考現学なるものを創始した原典。トマソンという名は巨人の外人選手に 由来し、「何の役にも立っていないのに丁寧に保存されているもの」という 意味からきているが、本人はこのことを知っているのだろうか。 「サル学の現在 上下」立花隆 広範なサル学者へのインタビューをまとめたもの。猿楽ではない。 ボスサルなどいない、とか、カニバリズムやゴリラのホモセクシュアルなど、 非常に興味深い。例外なく完全に固体を識別しているのがすごい。 どの種類も何らかの社会構造を持っていて、そのバリエーションが豊富なのも おどろき。 2000/9/29 「誰がどうやってコンピュータを創ったのか?」星野力 共立出版 コンピュータの歴史について一次資料にまでさかのぼって検討した 力作。「プログラム可変内蔵式」をコンピュータの定義としている。 特にバベッジ、エイダの話は面白い。アナリティッカルエンジンはすごい。 実際に作ってみたいものだ。 2000/9/18 「郵便局があぶない」別冊宝島編集部 特別郵便局の話、郵貯の財政投融資の話、宅配便に対する民業圧迫の 話など興味深い。やはり民営化するべきだよなあ。 2000/9/11 「60 セカンズ」映画 古い映画のリメイクらしい。車を盗みまくるだけのバカ映画。 ニコラスケイジがなかなかよい。 しかし60秒、というタイトルに相当するシーンはまったく無かった ような気がするぞ。 2000/9/11 「新版 危険な話」広瀬隆 チェルノブイリの話。1989年刊行。前半の危険性を説く部分は、 まだ納得いくのだが、後半になってロスチャイルドとかロックフェラー とかの陰謀論になっていくのはどうにも。陰謀などなくても原発を 作ってしまう程度に人間はおろかだ、ということが受け入れられない のだろうか。 2000/9/8 「ガメラ3 邪神覚醒」映画 TVで鑑賞。前田愛がよい。ハリウッドとはちょっと違う、 パースを多用した和風の特撮がすばらしい。14インチのテレビだと ちょっときついけど。 それにしてもなんで、ゴジラはああなのにガメラはこうかねえ。 技術レベル的も予算的にも似たようなもののはずだから、やはり コンテや脚本の差なのだろうか。 2000/9/7 「風果つる街」夢枕獏 金を掛けて将棋をうつ真剣師の話。主人公の加倉文吉は 「獅子の門」にでてくる加倉文平の父。羽柴彦六もでてくる。 なかなか。 2000/9/5 「鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで」宮部みゆき 3作の超能力ものからなる短編集。燔祭の(ちょっとしかでてこない) ヒロインは「クロスファイア」のヒロインと同じ人らしい。 いつもどおり、ディティールを書き込んでいくことによって登場人物を 浮き立たせる手法がすばらしい。物語の構造を意図的に複雑にしているのに 読みやすさが損なわれていないあたり、天才の仕事という他ない。 どれもとても良いが、鳩笛草の能力のなくなってしまう刑事の話が 一番いいかな。 2000/9/4 「伝染る「怖い話」」別冊宝島編集部 怪談/都市伝説を成立させる構造を考察した論考集。 牛の首」の原典が小松左京である(ほんとうはもっとさかのぼれるらしい) ということが確認できたのは収穫。 2000/9/2 「サイエンス・ナウ」立花隆 1989年から1990年にかけて科学朝日に連載されたルポもの。 高エネ研、公害研などもでてくる。レーザー核融合が出てるのに 電総研が出てないのは残念。それにしてもわずか10年の間に 世間の科学技術に対するスタンスすら変わっているような気がするのは 気のせいだろうか。

8月

2000/8/31 「電脳進化論」立花隆 1991年から1992年にかけて書かれたコンピュータ関連のルポをまとめた もの。10年一昔というが、状況が大きく変わったことを実感。 クレイは健在だし、電総研のジョセフソン素子コンピュータも出てくる。 頭蓋骨を拡張するために、一度取り出した頭蓋骨をはさみで細く切って かごみたいにくみあわせて戻す、バンブーウェア法というのがおそろしい。 「いきなり最終回1」別冊宝島編集部 ちょっと前にはやったやつの文庫化。巨人の星、タイガーマスク、 バカボン、750ライダーなどの最終回だけを収めてある。 やっぱり巨人の星が濃くていい。 2000/8/28 「超老伝 カポエラをする人」中島らも サブタイトルのカポエラに惹かれて読んでしまった。自称「ぴちがい」の カポエラ使いの老人が主人公。地の文がなくて全部せりふという書き方が 落語的で非常に巧み。 2000/8/24 「分裂病の少女の手記」セシュエー ルネという少女が、分裂病から快復する過程をルネ自身が語っている。 3部構成で、第2部では主治医が手記を解釈、第3部ではルネが分裂病に 至るまでの生活史がかかれている。完全に幼児退行した状態から、 快復してくる過程の内面記述は非常に興味深い。 第3部を読むと、分裂病には器質的側面はあるにせよ、明らかに環境にも 要因があると思える。こんな育て方するか? 2000/8/24 「魔術はささやく」宮部みゆき ミステリー。例によって非常にすばらしい。登場人物一人一人が 同級生などの端役にいたるまで生き生きと描写されている。 「火車」はカード破産を背景テーマにしていたが、こちらは 恋愛商法を背景にしているが、そんなこととはまったく関係なく、 本当にすばらしい。おすすめ。 キーワード:サブリミナル広告、後催眠。 2000/8/11 「恐るべきさぬきうどん」麺通団 編 香川県で購入。高松のタウン誌の記事を集めたものらしい。 なんと第4巻まででているのだが、さすがに1巻だけにした。 さぬきうどんの隠れた名店を探求する探訪記。この本を参考に 何点か回ってみたのだが、帰ってきてから改めて読んでみると、 もっと時間を取ってじっくり回ればよかったと後悔。また行きたいものだ。 「さぬきうどん全店制覇攻略本」麺通団 編 「恐るべきさぬきうどん」の人々が集めた香川県内のうどん屋大全。 各市町村ごとにうどん屋一軒あたりの人口が書いてあったりしてわらえる。 わりに詳しい地図がついていて資料価値は「恐るべきさぬきうどん」より 高い。 2000/8/1 「マイクロチップの魔術師」ヴァーナー・ヴィンジ 再読。脳波によるサイバー空間への進入、プロセッサ空間をめぐる戦い、 自意識を持った人工知性体、魔術的に表象されるサイバー空間、 といった、サイバーパンクにありがちなガジェットが満載だが、 本書はサイバーパンクではないだろう。全然パンクじゃないからね。 1981年の作品というからすごい。 解説をミンスキー(!)が書いていて「心の社会」の宣伝をしている。 原題「Real Names」。こちらのほうがはるかに格好いいね。

7月

2000/7/26 「麻雀放浪記(二)風雲編」阿佐田哲也 いきなり「坊や哲」がヒロポン中毒になっている。すごい話だ。 大阪に流れて、寺を一つつぶしてまた東京へ戻ってくるという。 ブウ麻雀とかいうルールは初めて聞いた。奥が深い。 2000/7/24 「邪馬台国はどこですか?」鯨統一郎 邪馬台国が岩手にあった、とか、磔にあったイエスはユダだった、 とかいった大胆な仮説を、口当たりよく読ませる歴史ミステリー。 ネタはおもしろいけど軽いし、よく考えてみるとミステリーの 体裁をなしていなかったりするが、まあ面白かった。 2000/7/22 「オーパ!」開高 健 ブラジルにピラルクを釣りに行く紀行文?というか写真集か。 写真は高橋昇。文庫で読んだのだが、大きいので読みたかった。 オーパとはブラジルの言葉で、「まあ、びっくり」というような 意味らしい。文体は骨太で名文。アマゾンの存在感に圧倒される。 「ピラーニャ(ピラニア)は、神のごとく偏在する」というフレーズ が気に入った。続編もあるらしい。 トヨタのOPAはこれから来ているのだろうか? 2000/7/19 「精神と物質」立花 隆・利根川進 ノーベル賞学者利根川進に立花隆がインタビューした本。 免疫抗体の多様性についての研究らしい。面倒くさそうで地道な 操作を泥臭くやっているのにおどろいた。 アメリカやヨーロッパでの研究環境に関する話も興味深い。 タイトルは「精神と物質」となっているが、精神に関する議論は、 最後の方にちょろっと出てくるだけだし、議論としても一般的な 域をでていない。なぜこのタイトルなのか疑問。 2000/7/17 「箱男」安部公房 「すすめ電波少年」の企画名になっている中篇。 箱男とは、世間をすて、腰までもあるようなダンボールをかぶり、 常にその中で暮らしている存在のこと。浮浪者ではない。 話は基本的に箱男の手記という形で書かれているのだが、 登場人物の中の誰が実際に登場人物で、誰が箱男の妄想なのか、 もわからない。幻想的。重厚な文体もさすが。 何点か写真が収められているが、写真も安部公房の作らしい。 2000/7/14 「トンデモ大予言の後始末」山本弘 おなじみトンデモシリーズ。2000年を無事迎えてしまった今、 ノストラダムスの大予言に関する総決算しようという本。 前作「トンデモノストラダムス本の世界」でカバーし切れなか ったことや、その後の研究の成果がかかれている。いつもながら、 この人の言う「科学的」ってなんかちょっと違うと思うんだけど、 まあいいか。 「闘人列伝」夢枕獏編 格闘技ものの小説、漫画を集めたアンソロジー。実に16編、600ページ。 ラインナップも、江口寿史から勝目梓まで実に幅広い。 変わったところでは、大仁田厚や橋本治なども書いている。 大仁田のは、さすが大仁田って感じでわけわからないけど。 全体になかなかよかったが、ちばてつやの「テンカウント」が気に入った。 2000/7/11 「麻雀放浪記(一)青春編」阿佐田哲也 映画にもなった高名な作品の一巻。 西原理恵子の「まあじゃんほおろおき」の元ねた?ともなっている。 戦争直後の東京が舞台とした、誇り高きバイニンの物語。 くらくらしてくる。また、麻雀がすごい。誰一人としてまともに打たず、 積み込みすり替えあたりまえ。恐ろしい、恐ろしい世界だ。 「哭きの龍」よりすごいかも。 「日本の怪談」田中貢太郎 日本各地の怪談をあつめたもの。ただの収集にはとどまらず、 一編一編が文学的情緒をもって書かれているのがすばらしい。 2000/7/4 「もう一つの万葉集」李 寧熙 万葉集が古代韓国語でかかれていた、という趣旨の本。 「人麻呂の暗号」と同じ人かな? たしかに韓国語の影響は大きいのだろうけれど、全体に「トンデモ」 の香りがただよっているのは気のせいだろうか。 古典も古代韓国語もわからないからなんともいえないが、 性的な解釈が異常に多いのはやりすぎなんじゃないだろうか。 2000/7/2 「二重らせん」ジェームス・D・ワトソン DNAの構造を特定してノーベル賞を受賞した生化学者が、当時の ことを書いた記録。構造の特定に模型を使っていたりして、 結構いいかげんな感じ。アメリカのグループと競争していたのだが、 そのやりとりに手紙を使っていて、いまからみるととても のんびりしている。今だったらこんなものではすまないだろうなあ。 それにしても、当時若干24歳。おそるべし。 2000/7/2 「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏 陰陽師シリーズ4巻目。長編を入れると5冊目か。いつもどおり。 蓬莱宮というHPができたらしい。今度見てみよう。 長編の朝日新聞連載以来、ちょっとした安部晴明ブームになって いるようだが、陰陽師の映画化の話もあるとか。だれが晴明と 博雅をやるんだろう。なかなかむずかしそうだが。

6月

2000/6/26 「ターミナル・エクスペリメント」ロバート・J・ソウヤー 「スタープレックス」「フレームシフト」が面白かったので、再読。 神経スキャンと、そのシミュレーションによる人格の計算機への移植。 スキャンの副産物として発見される魂波、シミュレーションされた 3つの人格のいずれかによる殺人、あたりがガジェット。 しかし、この人のよさは、ガジェットではなくて、きちんと作中人物が 表現できていると言う点だろう。そのへんがホーガンあたりとは違う。 私が読んだ4編すべてにおいて、夫婦の問題が背景テーマになっている のも興味深い。 2000/6/25 「シュリ」映画 韓国でメガヒットという作品らしいのだが、まあ人が死ぬ死ぬ。 ちょっと死に過ぎでしょう、これは。ハリウッドの馬鹿映画でもこんなには死なない。 あと、韓国の公安、弱すぎ。たった4人を数十人の狙撃兵で囲んでおいて、しとめ そこなうとは。北の連中が強すぎるのか? 2000/6/24 「インターネット事件簿」別冊宝島編集部 インターネット上での事件を何十人ものライターが、数ページづつ 書いている。それぞれの突っ込みが甘くあまりおもしろくない。 2000/6/18 「理由は聞くな。大人なら。」いのうえさきこ DOS/Vマガジン連載のあやしいグッズ漫画。 雰囲気的に西原理恵子に通じる部分もあると思うのだが、 西原理恵子に比べるとだいぶ小物って感じで、それゆえの安心感が。 「覆面作家は二人いる」北村薫 家の外にでると人格が変わってしまう「お嬢様」作家と、その担当である 主人公によるホームズ、ワトソン的な短編推理小説集。 まあ、おもしろいけど、軽いなあ。 2000/6/17 「スタープレックス」ロバート・J・ソウヤー 未知の文明によって構築された超高速の移動を可能にする"ショートカット"、 イルカを含むいくつかの種族による銀河連合、連合の巨大な探査宇宙船 スタープレックス号、と、「ゲイトウェイ」と「スター・タイド・ライジング」と 「宇宙船ビーグル号の冒険」を足したような設定。さらに、未発見のクォークに よって構成されるダークマターが発見され、しかもそれが生きていたりなんかする。 「フレームシフト」とは対照的にこてこてのSFギミックが山盛りだが、これは これでちゃんとまとまっていてとても面白い。やるなあ。 2000/6/16 「機関童子」荒俣宏 帝都物語という作品がかつて存在した世界の精神病院で、カラクリ人形を 憑坐に加藤が復活するという、ちょっとメタなおはなし。作者の博識には 圧倒されるけど、それだけかな。 2000/6/13 「宇宙からの帰還」立花隆 アポロ計画等の宇宙飛行士に宇宙旅行による内面的な変化をインタビュー した本。1983年刊。ほぼすべての宇宙飛行士がなんらかの内面的な 変化を告白している。宗教家になってしまったひとまでいるようで。 インタビューや出来事を羅列しているだけの構成に見えるが、 実はきちんと読みやすいストーリーができているあたりただものではない。 おそるべし。 2000/6/12 「カルト資本主義」斎藤貴男 個人主義的社会へのアンチテーゼであったニューエイジムーブメントが、 そもそも個人主義的性向が希薄な日本精神的土壌と融合して、 企業にとって好都合な理屈として大企業に利用されている、という主張。 たしかに、京セラはひどいという話は良く聞く。 この種の超楽天的、思考停止的な動きは確かに気になるけど、 それには、「気」や「永久機関」といったいわゆるオカルトは、 直接的には不要なのではないかと思う。 2000/6/9 「笑う月」安部公房 作者が実際に見た夢を記したもの。短編集として読める。 夢ならではの不条理な展開で頭がくらくら。 「奇譚草子」夢枕獏 掌編集。表題作は、2ページぐらいの小ネタをならべたもの。 2000/6/5 「あいどる」ウィリアム・ギブソン 「ヴァーチャル・ライト」と世界を共有する連作。前作の登場人物も 何人か登場する。ロー/レズというロックバンドの片割れが投影麗という 日本のヴァーチャルアイドルと結婚すると言い出し、バンドのファンが 真相を探りに日本へ向かう、という話。「あいどる」は原作中では IDORUと綴られているらしい。どうも投影麗はいつのまにか 本物の知能になってしまっていて、それがレズとの関係を望んでいる、 という「攻殻機動隊」のような物語らしいのだが、あまりその辺に フォーカスがおかれていない。九龍城をヴァーチャル空間に作るとか、 あやしい「東京」の風景とかを楽しむ話なのだろう。 3連作らしいので、最終作が文庫になるのが楽しみ。

5月

2000/5/31 「お役所の掟」宮本政於 かなり前に話題になった、厚生省官僚による内部告発的な本。 いまではかなり一般的に知られていることも多いような気がする。 おもしろいが、構造的な批判になっていないという説も。 2000/5/30 「フレームシフト」ロバート・J・ソウヤー ハンチントン舞踏病の遺伝学者がネオナチと戦う!という話? フレームシフトによって遺伝子に隠されたプログラムが顕在化する、 というあたりの話を除けばSFネタは登場せず、ほとんど一般小説である。 しかしその一般小説的な部分がとてもよく書けているので楽しめた。 解き明かしたにもかかわらず、主人公の病気が治らないあたり、 なかなか。 2000/5/29 「地下街の雨」宮部みゆき 短編集。表題作ほか全7編。どれもなかなかだが、表題作が いちばんよかったかな。 2000/5/29 「精神病を知る本」別冊宝島編集部 編 いわゆる精神医学に対する批判として構成されている。 分裂症の定義がこれほどあいまいだったというのはおどろき。 正常な人間を偽患者として精神病院に送りこんだら、 分裂症と診断され1週間から2ヶ月拘束された 「ローゼンハムの実験」は示唆的。 2000/5/23 「おはよう寄生虫さん」亀谷了 著者は、なぞのデートスポット、目黒寄生虫館の館長。 非常に興味深い話が多いのだが、いかんせんまとまりがなくて、 よみづらい。もう少し分類学的な話も欲しかった。 あと、図版が一点もないのは残念。あまりたくさん入れられると 気持ち悪くて読めないかもしれないけど。 2000/5/22 「マッド・サイエンティスト」S・D・シフ編 最近ホラー系SFのアンソロジーが流行っているからなのか、 創元から出たアンソロジー。原典は1980年にアメリカで出版されたもの。 クラークも書いていたりしてなかなか。レイ・ラッセルの 「サルドニクス」が、かび臭いような雰囲気まででていてよい。 2000/5/21 「怒涛の虫」西原理恵子 サンデー毎日に連載していた漫画付きエッセイ。古本屋で100円で購入。 2000/5/18 「カンブリア紀の怪物たち」サイモン・コンウェイ・モリス 「ワンダフル・ライフ」同様、カンブリア紀の爆発のことを扱っている。 「ワンダフル・ライフ」以降の発見もあり興味深いが、本としてはいまいち。 グルードの発生初期に多様性が最大になるという説に反論しているが、 なんかいまいち説得力がない。やはりプロのモノカキでもあるグルードと 一般書の土俵で勝負してもかなわないか。 2000/5/16 「田宮模型の仕事」田宮俊作 あのTAMIYAの社長が書く、田宮の歴史。ミリタリーシリーズの取材を 自ら欧米の博物館に行ってしていたとか、ソ連の戦車の取材をしに、 戦乱のイスラエルに行ったとか、1/8ポルシェ934ターボを作るために 911を買ってばらしたとか、恐るべきはなしがぞくぞくと。 さすがのこだわりである。「田宮模型全仕事ビジュアル版」という シリーズが3巻構成で出るようだが、こういうものは、DVD-ROMでも 作っておいて欲しいものだ。 2000/5/14 「ミクロ・パーク」ジェイムズ・P・ホーガン マイクロマシンねたのSF。最近のホーガンの例に漏れず、陰謀ものに なってしまっていて、ハードSFとは言いがたいのは残念。 主役のはずのマイクロマシンそのものよりも、マイクロマシンに 感覚的に没入するシステムのほうがはるかに難しそうだ。

4月

2000/4/30 「グッドラック 戦闘妖精・雪風」神林長平 「戦闘妖精・雪風」の続編。前作ラストで新たな機体を得た雪風と 零が新たな関係を築いていく。こういう関係が「愛情」なんだ、 という結論は気恥ずかしい。しかし結局「ジャム」とはなんだったの かはまた棚上げ。残念。続編希望。 2000/4/28 「ワンダフル・ライフ」スティーヴン・ジェイ・グールド サブタイトル「バージェス頁岩と生物進化の物語」。 「カンブリア紀の爆発」として知られる、カンブリア紀中期に起こった 多細胞生物の爆発的出現の直後の化石層「バージェス頁岩」から 見つかった非常に多様な化石動物群と、それがもたらす進化観の変容。 従来の逆円錐形に、多様性が増していくという進化観ではなく、 発生初期にこそ多様性が最大で、そこから悲運多数死によって偶然 選ばれたデザインが生き残る、という進化観が暗示されるという。 内容も面白いし、現存する動物の門には分類できないという、 多様な生物の図版が面白い。コンウェイ・モリスの 「カンブリア紀の怪物たち」も読んでみよう。 2000/4/26 「HAL伝説 2001年コンピュータの夢と現実」デイヴィッド・G・ストーク 「2001年宇宙の旅」に登場するHALの生誕を記念して1997年に発売された本。 1960年代には2001年には実現すると考えられていたHALのテクノロジーに ついて分析し、なぜそれが実現できなかったのかを各分野の科学者が 書いている。いわば「ウルトラマン研究序説」みたいなものだが、テーマが HALだけに、AIにおける包括的なサーベイになっていて面白かった。 2000/4/25 「陰陽師 生成り姫」夢枕獏 朝日新聞に連載された陰陽師シリーズの長編。 短編「鉄輪」をベースにした長編化で、従来の短編との重複も多い。 なんか、余分なエピソードが多くて、短編のほうがよかったような 気がするが、連作短編を読んでない読者が多いから、こうせざるを 得なかったのだろうか。 あとがきによれば「獅子の門」再開とか。何年ぶりだろう。 2000/4/19 「ヴァーチャル・ライト」ウィリアム・ギブソン サイバーパンク、というほど、サイバーでもパンクでもない。角川文庫。 赤瀬川源平のトマソンや、特撮映画「ガンヘッド」がでてくる。 トマソンの語源解説までしてあったりして。 ヴァーチャル・ライトというVR機器を盗んでしまった自転車配達人の 少女がトラブルに巻き込まれ、「トミー・リー・ジョーンズ似」 主人公がそれを助ける話。話の骨格はどうでもいいし出てくるテクノロジーも 知れているが、地震で崩壊しかけたサンフランシスコのベイブリッジに ホームレスが街を作っているというイメージはすごいなあ。 2000/4/11 「ピッチングの正体」手塚一志 あやしい野球理論書。2重螺旋で投げるのだ!など納得できる 部分も多いが、眉唾の部分も多いような気がする。 サンデー連載中の「MAJOR」という漫画にジャイロボールなる魔球?が でてくるが、これの元ネタが実はこの本かも。 ときどき意味不明にプロレスの写真が載っているが、ファンなのだろうか。 2000/4/10 「犬張子の謎 御宿かわせみ21」平岩弓枝 2000/4/5 「神はカオスに宿りたもう」会原一幸、黒崎政男 ASCIIに連載されていた、工学者と哲学者の対談形式のカオス解説を まとめたもの。ニュートン的世界観で扱ってきた世界は、世界全体の ほんの一部で、その外側にはニュートン的アプローチではあつかえない 無限の暗闇が広がっている、という感覚はとても面白い。 心臓の拍動がカオス的に乱れたときに、アトラクタに引き込むように 制御することで拍動をとりもどす、というような話ものっているが、 やはり、どのような応用、予測が可能なのかにもう少し焦点をおいて 語って欲しかったかな、工学者としては。 隣の部屋にいた「へんなおやぢ」松本元さんの研究がちょっとわかった のも収穫。 2000/4/3 「お吉の茶碗 御宿かわせみ20」平岩弓枝 2000/4/1 「三屋清左衛門残日録」藤沢周平 用人を引退して隠居となった主人公の生活を勢力争いを背景に描く 短編連作集。老境にはいっての心情変化を描いてなかなか味わい深い。

3月

2000/3/30 「雨月物語」青木正次 訳注 夢枕獏の「雨晴れて月は朦朧の夜」の原典となっているという江戸時代に 書かれた物語。本文もそれなりに面白いのだが、解説がもっとすごい。 微に入り細をうがつみごとな解説。ここまで深読みしなくてもいいのでは、 という感じもするが。 2000/3/21 「奇跡の少年」オーソン・スコット・カード 「エンダーのゲーム」のカードによる17世紀のアメリカを舞台にした ファンタジー(?)、アルヴィン・メイカーシリーズの1巻。めずらしく角川文庫。 まあ、なんというか、いつもどおりのカードで、説教くさいが泣ける。 アメリカでは5巻まで出ているということなので今後に期待だが、 角川だと翻訳のペースは遅そうだなあ。 2000/3/19 「スポーツ科学・入門」宝島編集部 文庫。網羅的な内容がとりとめもなくかかれているのはいつものことか。 トレーニング法や、トレーニング時の食事の理論は参考になる。

2月

2000/2/29 「模造世界」ダニエル・F・ガロイ 公開中の映画「13F」の原作。1950年代に書かれたというのが意外だが、 典型的なヴァーチャル世界ものと言っていいだろう。世界設定にも ひねりがなく、裏表紙のあらすじを読んだだけで、なんとなく ネタばれしてしまうあたりがかなしい。小説としてはなかなか 面白くて悪くないと思うが現代のSFとしてはちょっと弱い。 しかし、ホーガンの「仮想空間計画」といい、この話といい、 仮想世界シミュレータの用途は、マーケットリサーチしかないの だろうか。なんか悲しい。 2000/2/29 「ロボットにつけるクスリ 誤解だらけのコンピュータサイエンス」星野力 アスキーでの連載をまとめた本。さすがにおそろしいほどの知識量。 SF読みとしてもやわらかいものから硬いものまでよく読みこんでいる ものだ。齢60を超えてlainを見ておられるとはおそるべし。 しかし、なぜFPGAにこれほどこだわるのか、なんでノイマンハードの ソフトウェアでシミュレートしたのでは実現したことにならないのか、 というあたり、理解できない。自意識は複製不能であるということへの こだわりも。まあ、哲学的な理由なのであろう。 2000/2/25 「漫画博士読本」空想科学漫画研究所 御茶ノ水博士、天馬博士をはじめとする、漫画に出てくる博士を紹介した 別冊宝島の文庫化。最近こんなかるい本ばっかりだな。反省。 やっぱり岸和田博士が一番かな。 2000/2/20 「中田語録」小松成美 ローマに移籍してから調子が悪かったけど、最近2試合で2ゴールと 調子を上げている中田英寿の語録。頭がよくて才能のある若者なのだなあ。 若い気負いが気持ちいい。 2000/2/20 「隣のオウム真理教」別冊宝島編集部 版形が変わってB5になって、値段も安くなっている。 島田裕巳関連のアーティクルが3つあるが、どれもわけわからん。 2000/2/19 「変身の原理 密教の神秘」桐山靖雄 オウムの麻原が、そのシステムを学んだという阿含宗管長が、 まだ阿含宗創設前の1975年に書いた本。そうとう勉強している人では あるらしく、大脳生理学から量子力学、心理学まで持ち出してくる。 基本的には密教の技法であなたにも超能力が使える!というような 本らしいが、具体的な修行方法はあまり載っていなくて、ご利益話が 多い。しかし、ご利益話の多くが行方不明者の死体の発見ではあまり ありがたみがないような。文体は読みやすく力づよい。影響力をもつ のも理解できる。オウムや幸福の科学の原点を見る思いだが、大川隆 法なんかよりは好感が持てる、かな。 2000/2/18 「自己組織化とは何か」都甲潔 江崎秀 林健司 ひさびさのブルーバックス。われわれの業界で口にするとマルキ扱い されるが、自己組織化というのは非常に魅力的な概念だと思う。 なんとかうまく使えないものだろうか。イクラの模造品の作り方が、 一種の自己組織化の応用だというのはおどろき。 2000/2/16 「唯脳論」養老孟司 ちくま学芸文庫 1989年発行。著者は解剖医。関係ないけどカイボウ医とカウボーイは似てる。 社会は脳の投影であり、心は脳の機能である、という、ほとんど 自明とも思える議論。1989年にはそれなりに新規だったのだろうか。 脳が手足を認識するように、脳が脳を認識することが「意識」なのだ という議論はなかなか面白い。 人間の社会の発展が、外界を脳化していく過程であり、同時に身体的 なものを抑圧する過程であるから、究極的に身体的な行為である 性と暴力が、社会においては禁忌となる、という分析も面白い。 中盤かなりトンデモじみていてちょっとこわい。 2000/2/5 「農協月へ行く」筒井康隆 短編集。「日本沈没」のパロディ「日本以外全部沈没」が楽しい。 「気は挑戦する」別冊宝島編集部 文庫で入手。原版は、やはり90年代初め頃らしい。 このシリーズには珍しく、オカルト系を肯定的に書いている。 電総研の先輩にあたる猪俣修二さんの「物理学の終焉と気の挑戦」が 興味深い。物理法則を虚数項を導入して拡張して、その虚数部が 気だという主張。普通オカルト的なものを信じている人は、なんらかの 強烈な個人的体験があるものだと思うのだが、そういう部分が 全くなくて不思議。 「小周天に至る道」に出てくる、この項の著者が作成した修行用ツール 「小周天バンド」を、なぜかたまたま人からもらって保管しているのだが、 このバンドの意味がわかったのも有意義。 2000/2/4 「雨晴れて月は朦朧の夜」夢枕獏 「自選恐怖小説集」ということで、ホラー系の短編集。 「鳥葬の山」から2編とられているので、読んだことが ある短編が多くて残念。そして、ちょっとエロティックな作品が多い。 タイトルは江戸時代中期の上田秋成の「雨月物語」という短編集? から採られているそうだ。こっちも読んでみたい。 2000/2/2 「アジア ラーメン紀行」森枝卓士 徳間文庫 森枝卓士といえば、「美味しんぼ」にも登場するカレーで有名な人。 私も彼のレシピ集を持っていたりする。その「カレー大王」がラーメン進出? やはりネタがつきたのだろうか(^_^;)。 内容は汁そばだけではなく、焼きそば、汁をまぶしてたべるそば、 ビーフン、沖縄そばまでと幅広い。文化論として読むと、カレーに関する 同一著者の文章と比べても、まだ全然突っ込みも取材も足りていなくて、 ものたりないが、カラー写真が豊富でつい食べたくなる。 ああ、パットタイが食べたい。

1月

2000/1/31 「いまどきの神様」宝島編集部 1990年代のはじめごろに出版された別冊宝島の文庫化。 小さくなって安くなってうれしいんだけど、何か読みにくいなあ。 オウムが(比較的)肯定的に書かれているなど、現在との視点の 違いに戸惑う部分もあるが興味深い。現在との相違という点では インターネットに関する記述がないというのも時代を感じさせる。 2000/1/30 「スキップ」北村薫 17才の意識で42才の自分にスキップしてしまうSF?ミステリー? 主人公の現状をあきらめるのではなく受け入れる態度がとても 「綺麗」ですばらしい。 2000/1/25 「日本沈没 上下」小松左京 昔、400万部売ったという長編SF。さすがにすさまじいまでの力作。 破滅もののSFなのだろうが、国内外の政治的な動きの描写が、 一致団結して困難に対処!というふうにならないあたり妙にリアル。 おそるべし、小松左京。 2000/1/21 「講談 碑夜十郎 上下」半村良 古本屋で3冊100円で購入。講談仕立の痛快時代劇。主人公がタイムスリッパー だというあたりが、半村良か。勧善懲悪なので読後感がよい。 しかし国士舘の剣道部員があそこまで強いということがあるだろうか? ちょっと疑問。 2000/1/13 「ノヴァ」サミュエル・R・ディレイニー これも大昔に買って読んでなかったようだ。 ノヴァの中心から超重金属イリュリオンをとってくる、というスペオペ。 例によって複雑な隠喩が込められた話らしいが、よくわからないのだった。 表面的なスペオペ話だけでも面白いけど。 「かくれんぼ 御宿かわせみ19」平岩弓枝 2000/1/10 「トンデモ本 女の世界」と学会 一連のシリーズの最新作なのだが、批評家陣の質の低下がはげしい。 特に立川某、田原某はつっこみどころがはずれていて、読んでいて 悲しくなる。この種の本は批評家の知識と態度のバランスがとれてはじめて 読むに耐えるものなのだから、もうすこし考えて欲しいもの。 中盤のライスチャームだのあやしい装身具系へのつっこみはなかなか 面白かった。 2000/1/5 「花ざかりの森・憂国」三島由紀夫 「憂国」が「帝都物語」に出てきたので、古本屋で購入。短編集。 「憂国」は強烈。本人は、「憂国」が自分の本質だみたいなことを 後書で書いているが、だとしたら、一生友達になれそうにない。 他の話はそれなりにおもしろい?ので、長編を一つぐらい読んでみようかな。 2000/1/1 「終わりなき平和」ジョー・ホールドマン 創元SF 98年のヒューゴー、ローカスのダブルクラウン。 「終わりなき戦い」の続編かと思うとなんの関係もないという。 遠隔地から「集団ジャックイン」できるロボット軍団、 ソルジャーボーイやら、なんでも作れるナノ鍛造機やら、木星の回りに 巨大な加速機をつくる「ジュピュター計画」やら、てんこ盛り。 「ジュピュター計画」から全人類改造計画に進む辺り ちょっと無理があるような気もするし、こんなまどろっこしい 方法でうまくいくとも考えにくいが、たしかに人類の技術は 人類の本質的な間抜けさを補わないままに強力になり過ぎているよなー、 とY2Kの本番に思うのであった。 「帝都物語 11 戦争篇」荒俣宏 5巻と6巻の間に位置するべき外伝。2次大戦中の、5巻にでてくる フリーメーソンの怪人と加藤の対決。 総評: 想像していたよりもずっと面白かった。実在の人物がざらざらでてくるけど、 人によっては結構な書かれ方をしたりして、ひとごとながら、面倒なことに ならないのだろうか心配。とくに三島由紀夫。 後半、昭和70年代に突入していくのにも驚いた。昭和天皇がちょっとやばい 事情で以上に長生きしていたりして、右翼にはやばいのではないかなあ。 いっそ昭和天皇対加藤とかになったら盛り上がったかも。

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