2011年1月31日月曜日

幻惑の死と使途 ILLUSION ACTS LIKE MAGIC

幻惑の死と使途 森 博嗣 ISBN4062730111 講談社文庫

犀川助教授と西之園萌絵のS&Mシリーズ。だいたい読んでいるつもりだったのだけど、リストを見てみたら結構抜けていたので落ち穂拾い。しかし、このころの森博嗣は面白い。というか、ちゃんとミステリーの範疇に収まっている。最近のは、どうもなあ。。。まあ、あれはアレでいいと思うんだけど。

脱出を得意とする初老のマジシャンが、池での箱からの脱出劇の際に胸をナイフで刺さされて死亡する。さらに、その葬儀で遺体が霊柩車の棺のなかから消え失せた。その後、マジシャンの道具作成を担当してた男が殺害されているのが発見される。3人の弟子のうちの一人である、女性の弟子が崩壊するビルからの脱出直後に殺される。

トリックよりも動機が面白い。ちょっと異常だが納得のいく範囲。97年の本なのだが、インターネットの描写が懐かしい。大学のインターネット環境が一番快適、って、確かにそういう時期だった。「ホームページ」はあるけど「ブログ」はまだ。HTML を手で書いていたころだ。

そうそう、Gシリーズの主人公の一人、加部谷恵美が、まだ中学生で端役として出てきてる。ちょっとうれしい。

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森 博嗣
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2011年1月26日水曜日

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語―

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語― マーク・ベニオフ ISBN4478012482 ダイヤモンド社

クラウドの最古参業者であるセールスフォースの創業社長Marc Benioffによる111のアドバイス。 技術書を期待してたんだけど、バリバリのビジネス書だった。。。まあ、縦書きだし、 ダイアモンド社だし、技術的な内容を求める方がおかしいのだけど、もうすこし書いてあっても 罰は当たらないと思うけどな。なぜクラウドにしたほうがいいのか、についてすらあまり書かれていないのは ちょっとどうかと。

Marc BenioffがもとOracle社員だったというのは知っていたが、副社長までつとめていたとは。Larry Ellisonと非常に親しく、Larryは初期の投資家のひとりで、Salsesforceの大株主なんだそうな。Salesforce と Oracleは製品発表の度にお互いをけなし合っているけど、そういうパフォーマンスもこのような人間関係があってこそなのだな、と納得。

にしても、Marcという人はちょっと面白い。冒頭でSalesforceを立ち上げるか、Oracleに残るかをなやんでインドに旅行に行き、ダライラマと会見しちゃうあたりなど、面白いを通り越してちょっと引いてしまう。Salesforceは社会貢献を重視していて1-1-1運動として、利益の1パーセント、就業時間の1パーセント、製品の1パーセントを無償で各種団体に提供してるのだそうだ。就業時間に関しては有給のボランティア休暇が6日間つくのだそうだ。6日間が1パーセントというのはどういう計算なのか謎だが。。。

アップルでのインターンの話も面白い。ジョブズがいるときと、追い出された後の2回インターンに行ったのだけど、全く会社の雰囲気が違っていたそうだ。そうなんだろうなあ。

Salesforceという会社が非常に特殊なリーダーに率いられた、非常に特殊な会社であることはよくわかった。 こういうビジョンをもった会社は働きやすそうだなあ、などと。

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語―
マーク・ベニオフ カーリー・アドラー 齊藤 英孝
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2011年1月25日火曜日

世界がわかる宗教社会学入門

世界がわかる宗教社会学入門 橋爪 大三郎 ISBN4480422277 ちくま文庫

社会構造を規定するものとしての宗教について 世界の主要な宗教について紹介している。 東工大の授業をまとめたものらしく、端的でとてもわかりやすい。 特に朱子学を江戸幕府が推奨したことの矛盾のあたり、面白かった。

山本七平の「現人神の創作者たち」に言及されている。次はこれを読んでみよう。

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部族虐殺―夜明けの新聞の匂い

部族虐殺―夜明けの新聞の匂い 曾野綾子 ISBN4101146381 新潮文庫

作家、キリスト者にして、当時の日本財団の会長である曾野綾子が、新潮に書いたエッセイを集めたもの。タイトルの「部族虐殺」はルワンダのフツ族によるツチ族の虐殺を指す。

この人のある種特殊な立ち位置がちょっとわかったような気がする。 曾野綾子の小説は一つも読んだことがないのだけど、読まないといけないな。。

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2011年1月17日月曜日

テレビゲーム文化論―インタラクティブ・メディアのゆくえ

テレビゲーム文化論―インタラクティブ・メディアのゆくえ 桝山 寛 ISBN4061495739 講談社現代新書

2001年とちょっと古い。 内容は特に後半が散漫で主旨がよくわからなかったが、 すごくざっくり言うと、テレビゲームは「遊び相手ロボット」であり、 今後はAIBOのような肉体を手に入れるだろう、ということ。

AIBOが生産中止になって久しい現代から後知恵で振り返ってみても 主旨自体は間違ってないように思う。kinect なんかは、ちょっと違うけど、 同じ方向を向いているのかもしれない。ただ、おもちゃという特殊な市場向けとしては 現在のロボットはあまりに脆弱で、とても子供の相手はつとまらない。 まだまだ、相当な進化が必要だろうなあ。。。

ゲームが肉体を持たなければならない、という理屈の傍証として 知能の発生には肉体が必要だ、という議論が出てくる。でも 基本的には、何らかの「法則」が機能する「外界」がありさえすればいいはず。 それは計算機の中のシミュレーション環境で十分なんじゃないだろうか。 だから、物理的な肉体は必要ないってだろう。ゲームというロボットとインタラクションするのは 物理世界ではなくて、シミュレーションの中でOKなんじゃないだろうか。

格安エアラインで世界一周

格安エアラインで世界一周 下川 裕治 ISBN4101315523 新潮文庫

いわゆるLLCで世界をぐるっと回ってみる、という旅行記。何となくアジア 近辺が中心なのかと思っていたが、もともとLLCはヨーロッパ発祥だそうだ。 確かに需要は多そう。大西洋横断路線もあるというのは驚き

さすがに、太平洋横断できるLLCはない。 最短でも7時間はかかるので、さすがに狭い座席だと体力的にきつすぎるということだろうか。

アジア各地にはLLC専用の空港やLLC専用ターミナルがあったりするというのが驚きだ。 茨城空港なんかは首都圏から近いし直行バスもあるので、東京のLLC専用空港を目指すと いいのかも知れない。

そのうち、アジアの出張はLLCで行け、とか言うことになったりするかもな−。 韓国や台北ぐらいまでならともかく、それ以上遠くだときつそうだ。

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2011年1月6日木曜日

進撃の巨人

進撃の巨人 (1)(2)(3) 諫山 創 ISBN4063842762, 4063843386, 4063844102 講談社

この世界には、なぜか身長十数メートルの巨人と普通の人間が住んでおり、巨人はほとんど知性を持たず、人間を捕食している。人間は城塞を築き、そこで長い間細々とではあるが安全にくらしていた。 しかし、ある日通常の巨人を遙かに上回る大型巨人が登場し城塞の一部を破壊したことで、安寧な時代が終わる。

各所で話題になっていたのをようやく読んでみた。 噂に違わず、これはちょっとすごい。絵がへたなんだけど、その下手さが妙な迫力を醸し出している。 夢に見そうだ。。

よく考えてみると、巨人と人類が共存して進化してきたはずはないので、巨人は人類の創造物なんだろうなあ。今後に期待。

THE END OF SOFTWARE―IT経営の常識が変わる

THE END OF SOFTWARE―IT経営の常識が変わる ブレインワークス ISBN4778200322 カナリア書房

2006年の本。クラウドという言葉はなく、ASPにかわってSaaSという言葉が出てきた頃。 SaaSによるIT革命を説く。

タイトルの the end of は、SalesforceのMarc Benioffの言葉。内容もSalesforceの話が大半。 ブレインワークスというのは、コンサル会社らしい。ちなみに出版元のカナリア書房は、ブレインワークスグループ。 営業用の本を自前で出版したのに近いかも知れない。

THE END OF SOFTWARE(ジ・エンド・オブ・ソフトウェア)―IT経営の常識が変わる
ブレインワークス
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2011年1月1日土曜日

間違いだらけのエコカー選び

間違いだらけのエコカー選び 徳大寺 有恒 ISBN4759311033 海竜社

巨匠、徳大寺先生によるエコカー批評。燃費測定法の批判、軽自動車制度撤廃の提案、自動車関係の税金のガソリン税への一本化など、 なかなか面白い提案が。なによりスゴイのは、徳大寺先生は、自動車文化が善であるということを心の底から信じているということだ。いまどき、これはなかなかできないことだと思う。後半は各「エコカー」の批評。

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