2012年2月23日木曜日

スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ ウォルター・アイザックソン ISBN4062171260, ISBN4062171279 講談社
ベストセラーになった、アップルの創設者スティーブ・ジョブズの伝記。 ようやく読んだ。 基本、礼賛本ではあるのだけど、かなりジョブズの負の側面にも言及して興味深い。 しかし、自ら築いた会社からたたき出され、その後も失敗を繰り返したけど、 斜陽の会社に戻って立て直し、前例のないような収益を上げる、なんて、 ジャンプ漫画みたいに燃える展開だ。

ジョブズは偉大な人物だけど、一緒に仕事するのは本当にしんどそうだ。 1,2年なら是非一緒にやらせて欲しいけど、それ以上は無理っぽい。 現実歪曲フィールドをApple][のころから使いこなしていたとは驚きだ。

読んでて、昔のアップル製品のことをいろいろ思い出した。 わたしが中学生のころ、apple][ は高嶺の花で、ひとりだけ持ってる先輩がいらして 羨ましいと思っていた。 LISAのパロディのLIKAとかいうのがAh!Skiに載っていた。 マッキントッシュが発表されたときには、 特集を組んだ1984年11月号のbitを初めて買ったりした。 apple][cは本当にきれいなマシンだった。 バイト先で見たNeXTは訳の分からない形をしていて、画面は綺麗だけどクソ遅かった。

ジョブズのプレゼンは神がかっているが、それが地道なリハーサルと 改善の賜だというのを知ってちょっと安心した。なんとなく天才だから ナチュラルにああいうプレゼンになるのかと思っていた。 ジョブズのような才のないわれわれは、もっともっとリハーサルをちゃんとやらないと いけないということだな。

書籍への注文としては、これだけデザインに言及している本なのだから 製品の写真をもっと載せてほしかった。いくら言葉で説明しても NeXTのインパクトは伝わらないと思うのだ。

スティーブ・ジョブズ I
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ウォルター・アイザックソン
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スティーブ・ジョブズ II
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2012年2月9日木曜日

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬の銀河

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 小川 一水 ISBN4150310505 ハヤカワ文庫JA

毎回話しが飛ぶのでついていくのが大変なシリーズ5作目。今回は数千万年前の 遠い銀河で起きた被展開体知性の発生と、4作目と同時期の 太陽系の小惑星ベルトの農場での父娘の生活を並行して描くという離れ業。 知性の発生の描写は実にたくみで、「そういうこともあるかなあ」と思わされて しまう。農場での生活の描写も見てきたかのよう。

これでようやく、六本腕の猿や羊の話がつながった。でもまだ一作目の 世界まではかなり遠い。ちゃんと着地してくれるのを楽しみに待とう。

ところでこのシリーズ、翻訳して輸出したりしないのだろうか。その価値は十分ある と思うのだけど。

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
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2012年2月3日金曜日

アキハバラ@DEEP

アキハバラ@DEEP 石田 衣良 ISBN4167174111 文春文庫

ライフガードサイトで出会ったそれぞれに欠落を抱えた6人の若者が、 アキハバラにベンチャーを立ち上げ画期的な検索エンジンクルークを発明する。 「デジキャピ」にクルークを強奪された6人は、正面から戦いを挑む。

映画にも、TVドラマにもなっている青春小説。 「デジキャピ」のモデルは「ソフトバンク」なんだろうなあとか、 となれば当然「頭髪が薄くなっている」中込社長は、孫正義なんだろうなあとか、 水戸黄門みたいに最後に出てくる「国産OSの開発者の教授」半沢航のモデルは坂村「トロン屋」ケンちゃん なんだろうなあとか。

個性を与えられた検索エンジン(というよりは検索コンパニオンプログラム)が人工知性に成長する、 というのは荒唐無稽だ、とか、借りにもクロールする検索エンジンのストレージが1部屋におさまる程度で すむわけ無いだろ、とか、いろいろ突込みどころはあるけど、まあ、それは小説なので。

ひとつだけ。ベンチャーのオフィスに飾られた人間大のザクの模型の描写。 ザクが持ってるのは実弾のマシンガンで、ビームライフルではない。ここは直してほしいな。

アキハバラ@DEEP (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋
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