2001


12月

2001/12/30 「妖しき瑠璃色の魔術」吉村達也 女性刑事烏丸ひろみを主人公にした3部作の3作目。が、なぜか第1作に続いている。 どういう構成になっているのだか。主人公のキャラがまったく描ききれていなくて、 全然感情移入できない。主人公が黒いライディングスーツにピンクのヘルメットで またがるという450ccのバイク「シルバー号」とはいったいどういうバイクなのか。 450ccのバイクなんて聞いたこと無いぞ。トリックというかネタはそれなりに面白い のだが。薬師如来を信仰しているからといっていまわの際に「瑠璃光!」と叫ぶ なんて、考えられん。なんだかなあ。主人公以外のキャラも類型的でどうにも。 2001/12/26 「ライン」乃南アサ 今は懐かしい、パソ通ネタのミステリ。実は、92年ごろにかかれたものをリファイン したものらしい。主人公があまりにあまりで、前半を読むのがつらい。ネカマの 心理はまったく理解できないし。 2001/12/20 「今はもうない (SWITCH BACK)」森博嗣 犀川助教授、西之園萌絵の「S&Mシリーズ」(というらしい) の一冊。別荘の となりあった映写室と鑑賞室で二人の姉妹が死体で発見される。シリーズの一冊 ではあるが、実は二人はほとんどでてこない。トリックは普通だが小説として とても楽しめた。S&Mシリーズ最高傑作との評価もうなずける。 「笑わない数学者」あたりを読んで、別にどうでもよいと思っていただけに、 思わぬ収穫。他のも読んでみたくなってきた。 作者は理系らしく、外来語の末尾を伸ばさない習慣らしいが、「ディナ」は いただけない。 2001/12/17 「漆黒の霧の中で」藤沢周平 「彫師伊之助捕物覚え」の2作目。いわゆるマゲモノ・ミステリー。主人公は かつては岡引だったが、事情があって今は版木を彫っている。かつての上司筋 に依頼されて、探索にあたる。下手人があまり描かれていないのが気になるが なかなか面白かった。 2001/12/15 「ニュートンの密室」吉村達也 天井のない高さ15メートルの円筒の中で他殺体が見つかる。犯罪者には 通常密室を作る必然性がない、という密室トリックものの本質に挑戦して いるのだろうがなんかいまいち納得いかない。トリックとしてはありがち。 家庭教師・軽井沢純子シリーズの4作目らしい。軽井沢純子は魅力的な キャラのようだが、あまり描写されていないのが残念。 2001/12/14 「ウインク」小松左京 昭和47年発行の短編集。スラップスティック。 2001/12/11 「ダライ・ラマ自伝」ダライ・ラマ チベット仏教の指導者ダライ・ラマによる自伝。若くして即位した直後に 中国の侵攻を受け、交渉の甲斐なくインドへ亡命する。しかしこの当時の 中国は何を考えているのか、さっぱりわからん。共産主義が蛇蠍のごとく 嫌われている理由が少しわかるような気がする。しかしダライ・ラマは 共産主義自体は否定していない。というか何も否定していない。この辺が さすがである。 2001/12/7 「黒祀の島」小野不由美 調査会社の主人公が九州の離島で消息を絶った友人を探しに行くが、 閉鎖的な村社会に妨害される。島では4件もの殺人事件が起きていたが 島の特殊な信仰によって完全に隠蔽されている。 消息を絶った友人であるところの葛木は、文面にはまったく登場しないにも かかわらず、かなり強いキャラで描写されているのはさすが。 伝説に理性の光を当てて解決したかと思ったところで、どんでんがえし、 というあたり「東亰異聞」と構造が似ていなくもない。 ラストがかろうじてハッピーエンドなのが救い。 2001/12/4 「李歐」高村薫 あてどもなく日常を暮らす大学生が、美しい中国人青年の李歐に出会ってからの 10数年間を淡々と描く。最後の大団円?にいたるまで、スケールが大きく すばらしい。同性愛的な部分にちょっと抵抗があるが、なんかいわゆる同性愛とは ちょっとちがうのではないかという気もする。いろいろな意味で圧倒される逸品。

11月

2001/11/29 「爬虫館事件 新青年傑作選」 大正、昭和初期の雑誌「新青年」からの短編集。ホラー系ミステリー。 江戸川乱歩、横溝正史、夢野久作など。 やはり古いせいかイマイチなものが多い。 2001/11/27 「葛橋」坂東眞砂子 中篇集というが、200ページで3作だと短編集だろう。 坂東眞砂子なのだから仕方がないが、読後感がわるい。 2001/11/26 「覆面作家の夢の家」北村薫 美貌で外弁慶なミステリー作家「覆面作家」シリーズの3作目。 ライトな短編が3編。最後のはあまりにも甘々だが、まあいいか。 これで一応完結しているが、2作目は未読。 2001/11/24 「今昔続百鬼 雲」京極夏彦 京極堂シリーズと時代、世界を共有する別シリーズ。 妖怪馬鹿のセンセイと「ワトソン君」役の主人公が、妖怪めいた事件に 巻き込まれる。「岸涯小僧」「泥田坊」「手の目」「古庫裏婆」の短編集4編。 最後の話には中禅寺も登場。全体にかるく、主人公のキャラがいまいちたって いない感じ。最後の話がなかなかよい。 挿絵のふくやまけいこは嫌いではないのだけど京極にはあわないかなあ。 2001/11/20 「不在証明崩壊(アリバイくずし)」 8名の作家によるアリバイをテーマにしたミステリーのアンソロジー。 面白かったのは法月綸太郎ぐらいか。いまいち。 2001/11/19 「アルケミスト 夢を旅した少年」パウロ・コエーリョ ブラジル作家によるおとぎばなし?スペインのアンダルシアの羊飼いの少年が 運命に導かれてピラミッドに宝を探しに行く。あまりにも素朴で、なんというか コメントしがたい。ブラジルやアメリカではかなり売れたというが本当か? 2001/11/16 「なにかが道をやってくる」レイ・ブラッドベリ ずいぶん前から本棚にあったのだが、なぜか読んでいなかった高名な傑作。 ハロウィーンの直前に町に怪しいカーニバルがやってくる。 さすがに、評判に違わず、詩情ゆたかな傑作。SFではないような気もするけど。 竹宮恵子の「私を月まで連れてって」にも、この話がでてくる。 2001/11/16 「Cats & Dogs」映画 犬アレルギーを治す薬を開発している科学者を、猫の陰謀から守る 犬のエージェントのお話。料理の仕方によっては面白くできそう なのに、演出過剰でまったくつまらない。映画館で金を払って 見ていたら相当腹が立っていたことだろう。機内で見ても時間の無駄。 2001/11/10 「マイノリティ・レポート」フィリップ・K・ディック 映画化された表題作や、シュワルツネッガーの馬鹿映画「トータル・リコール」 の原作(ということになっている)「追憶売ります」を含む短編集。 ディックというと、なんかわけわからない話を書く印象があるのだけど、 結構正統的な娯楽作が多く、読みやすかった。 2001/11/10 「Legally Blonde」映画 ブロンドで胸がでかいというだけで、まともに扱ってもらえない 主人公が、ハーバードのロースクールを出て弁護士になるおはなし。 日本でも胸がでかいと馬鹿っぽいというイメージがあるが、アメリカ だと、ブロンドにもそういう要素があるというのは面白い。 2001/11/9 「地を這う虫」高村薫 元刑事を主人公とした短編を集めた短編集。なかなかよい話ばかり。 「実録 刑務所暮らし あなたが逮捕された日のために」別冊宝島編集部編 刑務所や留置所、少年院などの内部ルポ。佐川一政のパリの刑務所の話が 載っているが、文章がかなりとっちらかっている。昭和天皇崩御での恩赦を 狙って、刑を確定させるために控訴を取り下げ、結果的に夫婦そろって同日に 死刑されてしまった、夕張の話が興味深い。 2001/11/7 「無限の境界」ロイス・マクマスター・ビジョルド 再読。中篇集。エネルギードームで作られた捕虜収容所からの脱出を描く表題作の他、 バラヤー山村でも奇形のまびきを描いた「喪の山」、遺伝子工学でつくられた 狼少女の「迷宮」の3篇。「迷宮」がいちばんよいかな。 2001/11/3 「千と千尋の神隠し」 ようやく見た。なんというかすごい話。くらくらする。 教訓は無理に導き出さないほうがよいのだろうなあ。 単純におもしろかった。 2001/11/2 「ルー=ガルー 忌避すべき狼」京極夏彦 「近未来少女武侠小説」というなぞのあおりがついている。主役はナイフ 少女に、メカ好き天才少女に、中国拳法少女ときたもんだ。 ネットや雑誌で集めた設定を使って書いた、ということでなんかいまいち な感じ。世界設定は、神林長平の世界に近い。

10月

2001/10/28 「天空の遺産」ロイス・マクマスター・ビジョルド マイルズ・ヴォルコシガン シリーズの長編。時代的には、22歳当時。 セタカンダの皇太后が急逝し、マイルズは特使として派遣され、 セタカンダでの内乱騒動に巻き込まれる。 セタカンダの2重構造の貴族制度が日本の平安時代をモデルにしている というのは面白い。遺伝子プールを意識的に制御するというアイディアも。 2001/10/24 「審問」パトリシア・コーンウェル ケイ・スカーペッタシリーズの11作。とうとう上下2巻になっている。 前作の直後から始まる。狼男は逮捕されているが、わけのわからない言い訳を し、逆にケイがブレア殺しで告発される。 なぜか最終巻だと思っていたのだけど、全然終わってない。まだ楽しめそう。 2001/10/19 「残像」ジョン・ヴァーリィ 短編集。全盲、全聾の人々が築いたコミューンを描く表題作は ヒューゴー・ネビュラ ダブルクラウン。どの話も独特の情緒があって 本当にすばらしい。表題作の原題「The persistence of vision」に対する 訳語として「残像」というのが適切なのかちょっとわからないが。 2001/10/14 「心狸学・社怪学」筒井康隆 心狸学編・社怪学編7編づつからなる短編集。 芸風が1編づつ変えてあるあたり、さすが。 「20世紀SF(6) 90年代 遺伝子戦争」中村融、山岸真 編 このシリーズも最終巻。 病気とその治療の結果自分の好みを自由にさだめられるようになってしまった 男を描く、イーガンの「しあわせの理由」がすばらしい。 「キリマンジャロ」もなかなか。 「しのぶセンセにサヨナラ 浪花少年探偵団・独立篇」東野圭吾 浪花少年探偵団の続編。しのぶセンセが2年間国内留学をし、小学校に もどってくるまで。残念ながら、これ以上このシリーズは書かないと 作者は書いているが、そんなこといわずに書いてほしい。 2001/10/13 「無伴奏ソナタ」オーソン・スコット・カード 「エンダーのゲーム」の短編版が含まれた初期の短編集。短編版も悪く ないが、長編版のほうがはるかによい。こういうのって珍しい。再読。 2001/10/9 「脳死再論」立花隆 先行する「脳死」に対する批判?に答えた本。筆者の議論は非常に明確で、 竹内基準を支持する人々の不明晰さが浮き彫りになる。 それにしても8章の和田移植の実情はショッキング。こんなことがわずか 30年前にあったとは。そういえば、最近になっても心臓移植のために ドナーの治療を十分にしなかったのではないかという話があったなあ。 インフォームドコンセントが十分に根付いていない現状では、脳死移植 には無理があるのかもしれない。 2001/10/5 「20世紀SF(5) 80年代 冬のマーケット」中村融、山岸真 編 いわゆるサイバーパンクの時代。ジェフ・ライマンのカンボジアを題材 にした「征たれざる国」がコワイ。 2001/10/2 「トンデモ本の世界R」と学会 「トンデモ本の世界」の続編。小林よしのりや「買ってはいけない」など、 社会派なものも取り上げられているのが特徴か。大藪春彦「飢狼の弾痕」 は大笑いだが、この人の場合、他の本も似たようなものでは? 2001/10/1 「浪花少年探偵団」東野圭吾 小学校の先生である、しのぶセンセと、彼女の担当する悪がき達が 活躍する短編集。話はシンプルだが、しのぶセンセが味わいぶかくてよい。 じゃりん子チエみたい。続編もあるそうなので楽しみ。

9月

2001/9/30 「スタパ齋藤の俺はハマリ者!!」スタパ齋藤 物欲ライタースタパ齋藤のDOS/V POWER REPORTの連載をまとめたもの。 100円で購入。やはりこの手の物欲話はリアルタイムでないとあまり 意味がない感じ。 2001/9/28 「みんなのいえ」映画 三谷幸喜監督作。田中邦衛と唐沢寿明がなかなかよい。ココリコの田中も いい味出している。それほど深い内容はないが、それなりにハッピー。 「アロング・ケイム・ア・スパイダー」映画 モーガン・フリーマン主演の刑事物。主人公のアレックス・クロスは 心理学者兼警察官。上院議員の娘が誘拐され、かれに挑戦の電話がかかる。 最後にどんでん返しがあり、意外な人物が主犯だったりするのだが、 なんか後味悪い。モーガン・フリーマンは実によい。 2001/9/21 「日本アパッチ族」小松左京 小松左京の処女長編。廃墟の中の人間が変容したスクラップを食べて鋼を 排出するアパッチ族と日本政府の対立と日本の消滅を描く。これも広く 言えば破滅物と言っていいかもしれない。一見スラップスティックだが 緻密なプロットと文明批評があり、さすが。 2001/9/20 「天空の蜂」東野圭吾 自動操縦装置を備えた新型掃海ヘリが盗みだされ、高速増殖炉の上空で ホバリングする。そして、「全国の原発を破壊しなければヘリを落とす」 という脅迫状がFAXで届けられる。ヘリには取り残された子供が。 技術的な解説も確かだし、社会的メッセージも明確で、なおかつ 小説として非常によい。傑作といえよう。 2001/9/19 「エンダーの子ら」オーソン・スコット・カード 「ゼノサイド」の続編。ピートとワンムがルタジニア艦隊を止めるため の工作に旅立ち、エンダーは3つに分裂した肉体を維持できず死にかけ、 アンシブルが切断されてジェインが死ぬ。日本のヤマト魂やら、サモア のパパギリやらがでてくるが、消化不良の感。とはいえ、エンダーも ジェインも新しい肉体を得たので、このシリーズもまだ続くか。 西武が三千年後にも一大財閥として栄えており、人類全体に強い 支配力を持っていることを知ったら、堤兄弟も喜ぶだろう。 あと、別に注意してもいないのに、誤植を2箇所発見。ハヤカワには珍しい。 2001/9/17 「所有せざる人々」アーシュラ・K・ルグィン 祖先としてハイン人を地球人と共通の祖先とする星系が舞台。オドー主義 という共産主義のような思想をもった人々が月(といっても大気がある)に 隔離されて150年後、月の物理学者がアンシブルの原理となる理論を発見し、 それを手土産に、本星を訪問する。非常に哲学的だが、楽しめた。 2001/9/10 「ブラッドミュージック」グレッグ・ベア 80年代の「幼年期の終わり」と謳われるヒューゴー・ネビュラ受賞作。 再読。DNAをチューリングマシンのテープのように用いることで細胞に 知性を持たせた研究者が、それを自分に注射。世界は変貌してしまう。 確かにインパクトのあるテーマだが、パニックものとしてはいまいち だし、設定のリアリティも今ひとつ。 2001/9/8 「皮膚の下の頭蓋骨」P.D.ジェイムス 「女には向かない職業」の続編で、コーデリア・グレイが活躍する。 孤島で行われるアマチュア劇団の主演女優に脅迫状がとどき、護衛 のためにコーデリアが雇われる。孤島での殺人というコテコテのネタ だが、トリックなどはほとんどなくて、人物描写に主眼が置かれている。 書き込みが綿密なので読むのに時間が掛かるが、十分にその価値はある。傑作。 シェイクスピアも読んでみたくなった。 2001/9/3 「0の殺人」我孫子武丸 速水三兄妹シリーズの2作目。富豪の御婆さんの姪、甥、弟が次々に 死んでいく。トリックというか話の構造が面白い。 2001/9/1 「8の殺人」我孫子武丸 速水三兄妹シリーズの1作目。著者の処女作。対称性のある 建物の図面がでてきたら鏡のトリックを疑え、というのは常識だと 思うがこれもそのとおり。トリックはともかくなかなかよく書けて いる。最後のどんでん返しも。

8月

2001/8/30 「メビウスの殺人」我孫子武丸 警部補を長男とする速水三兄妹が活躍するシリーズの3作目。 なぜかこれから読んでしまった。スラップスティック新本格 ミステリー?まったく関係の無い人々が 次々と殺されていくが、名前にその秘密が。3目並べはわりに すぐに気が付いた。初手が2-2だからね。 2001/8/29 「見知らぬ明日」小松左京 「復活の日」「日本沈没」と同じく、絶滅物のSF。中国奥地にUFOが 来襲し、徐々に戦禍が広がり、米ソは水爆をつかい、ついに富士山 にまで水爆が向けられる、という過程を丹念に描写している。 「復活の日」では、細菌が絶滅してオチがついているし、「日本沈没」 でも日本が沈没しきることによってある種のオチがついているのに 対して、本作は本当に絶滅していくだけ。より純粋な絶滅物と いえるかもしれない。 2001/8/28 「復活の日」小松左京 漏洩した細菌兵器によって人類が絶滅寸前になるが、水爆によって 細菌が無効化して、南極に閉じ込められていた人類が復活する。 絶滅の過程が丹念にリアルに書き込まれている。さすが小松左京 この手のものを書かせると、他の追随をゆるさない感じ。 ウィルス体を経由しないで核酸だけが増殖する核酸兵器というのも すごい発想。映画も機会があったら見てみたい。 2001/8/26 「新・トンデモ超常現象56の真相」皆神龍太郎 志水一夫 加門正一 と学会系、ひさびさの新刊。まあいい加減まんねりなのだが、 いくつかの件でアメリカまでいって、現地で取材しているのはすごい。 岐阜のポルターガイストの話もおもしろい。 2001/8/25 「ロボットだって恋をする」築地達郎+京都経済新聞社取材班 中公新書ラクレ。著者は元日経新聞記者。いろいろインタビューを したものをまとめたものだが、内容は希薄。 結局なにがいいたいのかよくわからないのが問題。 「ロボットが実用化されることは社会生活全般にインパクトを与える」 というあたりまえのこと以上のことはなにも書いていないと思う。 2001/8/23 「大人のための徹底!ロボット学 」北野宏明 副題「最新テクノロジーから,ロボカップまで」。30分で読了。 中身なし。Pinoの話が(瑣末な)デザイン論しかでてこないのは おどろき。予算を取るためのヨタ話をそのまま本にしたかのような。 「地球になった男」小松左京 短編集。宇宙人に日本の土地をすべて売ってしまう「日本を売った男」、 自動手術機を使って自分を食べてしまう「兇暴な口」など。 「昔の女」がこれにも入っている。 2001/8/22 「サテライト・オペレーション」小松左京 昭和52年発売。宇宙ものの短編集。いわゆるハードSFではなく、 精神的な話が多い。表題作は惑星規模の自己修復機械体に 生じる癌と言うネタ。このころの日本SFは結構レベル高いよなー。 2001/8/21 「天の向こう側」アーサー・C・クラーク 主に宇宙進出時代を描いた短編集。50年代の作品なので、 ある意味では、現実が追い抜いているのだが、別の意味では まったく追いつけていない。それにしても 21世紀になっても火星に到達していないなんて、あのころの SFファンは考えてもみなかっただろう。 2001/8/19 「クリスマス13の戦慄」アイザック・アシモフ 他編 クリスマスに関連した短編を集めたアンソロジー。バリエーションが ゴシック・ロマンスから完全なSFまで幅広く、さすがと言う感じ。 ラブクラフトやクラークの作品も入っている。 2001/8/16 「女には向かない職業」P.D.ジェイムス 名前だけは以前から知っていた古典的ミステリ。パートナーに死なれた 若い探偵見習のコーデリア・グレイが、貴族の子弟の自殺原因の追求する。 情景の描写が非常に丁寧で、改行も少なく、ページ数の割にかなり 読み応えがある。傑作といえましょう。いしいひさいちのほうも読んでみよう。 2001/8/15 「最後の隠密」小松左京 短編集。さすがの博識。おそるべし。 「昔の女」は、別のところで読んだことがあるような。 2001/8/14 「白鹿亭綺譚」アーサー・C・クラーク 下のがいまいち過ぎたので、原点を再読。ロンドンのパブ白鹿亭に 集う人々がSFがかったほら話?をする、という趣向。 40年以上前に翻訳されたものだが、まだまだ面白い。 2001/8/7 「ゑゐり庵綺譚」梶尾真治 宇宙ステーションにあるそば屋「ゑゐり庵」で起こるさまざまな出来事を 描いた短編集。まあ、この程度でしょう。 2001/8/5 「スズメバチの巣」パトリシア・コーンウェル 「検死官」シリーズとは別のシリーズの1作目。やはり警察がらみ。 スズメバチの巣とは、舞台となるノースカロライナ州の大都市のシンボル マークらしい。主人公は女性副署長のウエストと若き新聞記者兼ボランティア 警察官のブラジル。1作目なので顔見世的な感じ。「検死官」シリーズよりは 軽くてよみやすいかも。

7月

2001/7/31 「侠骨記」宮城谷昌光 中国春秋時代に題をとった短編集。なかなか面白いが、勉強が足りなくて 国の名前がよくわからん。こまったものだ。 2001/7/30 「心とろかすような マサの事件簿」宮部みゆき 「パーフェクト・ブルー」の続編。といっても短編集。シェパードの サブによる一人称で書かれている。宮部みゆきとしてはいまいち。 かるい。 2001/7/26 「警告」パトリシア・コーンウェル 前作でのベントンの死が濃い影を落とす第10作。推理的、アクション的 要素は経って内面的な描写が多い。このシリーズで犯人が殺されなかったの 初めてじゃないだろうか。インターポールが出てくる点も特徴的。 ル・ガルーって狼男のことなんだ。しらなかった。京極夏彦の同名作 を読まなければ。 2001/7/22 「美しき凶器」東野圭吾 ドーピングの過去を持つ4人の体操選手が、ドーピングを施した医師を 殺害、その医師が最後にドーピングで作り上げた怪物が復讐に立ち上がる。 東野の作品としてはいまいち。 2001/7/20 「エリン・ブロコビッチ」映画 なぜか7月のUAはジュリア・ロバーツ特集らしい。行きの飛行機では 「プリティ・ウーマン」と「ノッティンヒル」をやっていたが帰りでは これをやっていた。高等教育を受けていない子供を抱えた女性が 電力会社を相手取った公害訴訟で史上最高額を勝ち取る、というお話。 なかなかおもしろかった。ジュリア・ロバーツ背が高すぎ。 「プルーフ・オブ・ライフ」映画 メグ・ライアンとラッセル・クロウ。南米でメグ・ライアンの夫が ゲリラに誘拐される。ラッセル・クロウはネゴシエータ。なんだけど 交渉だけでは間が持たないらしく、結局最後はドンパチ。 まあこんなもんでしょう。主演の2人は魅力的。 Webページによると、2人のラブシーンがあったのにカットしたそうだ。 なるほど。あったほうが自然かもしれない。 2001/7/15 「ターン」北村薫 交通事故のはずみで、誰もいない世界で7月の一日を繰り返すことになった 版画家の話。版画のプロセスがみずみずしい。29歳という主人公の年齢が 絶妙な感じ。最後がきれいでよかった。「スキップ」はちょっと悲しかったので。 ここのところ暑いので、どうせ繰り返すならもっと涼しい時期がいい、など と考えてしまう。ところで主人公は「私」シリーズと同じで東武線沿線に 住んでいるもよう。やはり著者も東武線沿線住人なのだろうか。 2001/7/10 「スピリット・リング」ロイス・マクマスター・ビジョルド マイルズシリーズのビジョルドによるファンタジー。15世紀ごろの イタリアを舞台にした、恋と魔法の物語。スピリット・リングとは、 きちんと埋葬されなかった死者の魂魄を封じ込めて鋳造した指輪の ことで、非常に強い魔法の源となるもの。主人公の少女はかわいらしいし 少年は純朴で素敵。宮崎駿で映画化して欲しい(^_^;)。 2001/7/8 「A.I.」映画 なんというか、余分なディティールとご都合主義な思いつき設定が多すぎ てつかれてしまった。デビッドが山のように並んでいるシーンは、コンバ トラーVのガルーダのエピソードを思いおこさせる。一番の疑問は、最後の 部分は余分じゃないのかということ。 「デビッドは幸せな夢を見ました」 ではいけないの? あちこちに、日米の文化的な相違がみられて、そういう意味では興味深い。 さすが、牛は食うけど鯨は食わない民族だぜ。 ディティールはさすがによくできていて、画像的にもとてもきれい。 何も考えずに、ピノキオのリメイクだと思って見れば、まあ、それなりか。 2001/7/4 「猫は幽霊と話す」リリアン・J・ブラウン 新聞記者のクィラランが猫のココの助けを借りてなぞを解くという形式の ミステリー。よく知らなかったのだが、結構有名なシリーズらしい。 最近読んでいるコーンウェルの検死官シリーズと比較すると、 信じられないくらいのどかでくらくらする。変死体を検死せずに あっさり埋葬しちゃうし。検死官シリーズなら、即Y字切開であろう。 2001/7/3 「大まかに生まれた女。」いのうえさきこ わざわざ注文して取り寄せるあたり、私ってすごい。 前作「理由は聞くな。大人なら。」が横開きの変則フォーマット だったのを反省してかB5版の縦型にはなったが、そのため 本を横にして読まなければならない部分があったり。 さらに右開きと左開きの両方の漫画がまざっていたりして、 すんごい読みずらい。まあ、いいけど。 いのうえさきこって、ヘタウマな絵柄、自虐性、破滅性など、 表層的には西原理恵子に似ていると思うんだけど、西原理恵子の 「洒落にならなさ」がなくて私のような小市民には安心して読める。 2001/7/3 「マーケッティングの基本がわかる本」木幡健一 友人の書架から借りてきたPHP文庫。タイトルどおりのビジネス本 でタイトルどおりにつまらない。失敗。

6月

2001/6/30 「業火」パトリシア・コーンウェル 第9作。キャリー再登場。超主要な人物死亡。まったくこのシリーズは 油断ならない。マグネシウムの棒は日本でも手に入るのだろうか。 最後の空中戦は、このシリーズらしくないし、なによりキャリーらしく ないと思うのだが、ほんとに彼女はこれで死んでるんだろうか? 2001/6/28 「攻殻機動隊2」士郎正宗 1巻から実に6年。全編にCGが多用されていて、絵的には非常に細かくて 美麗だが、話は良くわからない。永野護ほどじゃないにせよ。 私はどちらかという士郎正宗の女の子よりメカが好きなので、 アップルシード5巻希望。 2001/6/27 「むかし僕が死んだ家」東野圭吾 幼少期の記憶を失った女性が、父親の遺品として見つかった地図と カギをたよりに、記憶をさがして長野の山奥を訪ねる。 なかなかすごい結末。 2001/6/26 「接触」パトリシア・コーンウェル 第8作。前回はA(tomic)兵器、今度はB(io)兵器とは。しかも天然痘。 あまりに最後の展開が急速なのでちょっとおいてけぼりなかんじ。 2001/6/23 「20世紀SF(4) 70年代 接続された女」中村融、山岸真 編 ティプトリィ Jr. による表題作は非常に印象的。 文学としてのSFが成立している感じ。 2001/6/21 「「陰謀」大全」別冊宝島編集部編 さまざまな「陰謀」説を解説する。義経-ジンギスカン説が唱えられた 時期と背景が興味深い。落合信彦のはなしも面白い。落合信彦の「作品」 は読んだことがないが、今度古本屋でさがしてみよう。 2001/6/19 「死因」パトリシア・コーンウェル 第7作。新興宗教団体が、原発を襲ってプルトニウムを盗み出そうと する、というシリーズ最大の大事になってますけど。 2001/6/16 「赤い予言者」オーソン・スコット・カード 「奇跡の少年」の続編。角川文庫。開拓時代のアメリカを舞台にした、 「メイカー」たるアルヴィン少年の半生。はたしてこれはSFなのか? ファンタジーですらないような気もする。 2001/6/11 「ソングマスター」オーソン・スコット・カード 再読。世界中にソングバードやソングマスターを派遣するソングハウスから 皇帝のもとに派遣されたソングバードのアンセットの一生。 短編をつなげた形式。エンダーといろいろな意味で似ている。 原点と言えるかも。 2001/6/9 「20世紀SF(3) 60年代 砂の檻」中村融、山岸真 編 いわゆる New Wave の時代。SFの多様化時代。 破滅系が印象的。 2001/6/1 「へびつかい座ホットライン」ジョン・ヴァーリー ガス惑星系のインベーダによって人類が地球にいられなくなった未来史、 「八世界シリーズ」の長編。ハヤカワの復刻フェアで復刻された。 クローンでどんどん分割されていく主人公の主観が面白い。 読後感が「スキズマトリックス」に似ている。サイバーパンクに分類される ことがあるのもうなずける。 「続巷説百物語」京極夏彦 巷説百物語の続編。VOWWOWでやっていた「七人みさき(死神)」を含む。 前作よりもトーンが重め。どれもなかなか傑作。とくに最後のお別れのシーンは 格好良すぎ。連作でいくらでも続けられそうなネタなのに、 きちんと終わってしまっていて、続編が書けなさそうなのが残念。

5月

2001/5/31 「20世紀SF(2) 50年代 初めの終わり」中村融、山岸真 編 50年代。初期の科学万歳的作品は減り、テクノロジーへの恐怖や、 レッドパージなど当時の社会不安を反映した作品が多い。 2001/5/25 「私刑」パトリシア・コーンウェル 6作目。5作目の2ヶ月後。ゴールト大活躍。ようやく死んでくれて ちょっと安心。マリーノはわずかな間に復活している。 ゴールトは空手の有段者と言う設定で、がんがん蹴り殺しているが、 向こうではまだそういう幻想があるのだろうか。 ちなみに作中では、1作目から10年経っているらしい。 2001/5/22 「卒業 雪月花殺人ゲーム」東野圭吾 青春推理物。7人の仲良しグループの二人が殺される。 大学生時代の加賀君がでてくるが、なかなか楽しそうな青春を送っていて、 その後の話から受ける印象と反する感じ。 形状記憶合金でこんなことができるのだろうか?ちょっと疑問。 2001/5/21 「死体農場」パトリシア・コーンウェル 5作目。ケイがベントンといい感じになってしまい、マリーノがやさぐれている。 ルーシーも大きくなってFBIに入りそうだし。 (代理)ミュンヒハウゼン症候群がでてくるが、日本でも最近あったなあ。 前作に引き続き、ゴールドの影がちらつくが、今回はちがったらしい。 次作と一組らしいので次を読まねば。 「悪魔祓い」上田紀行 スリランカの悪魔祓いに関して。催眠暗示療法や、サイモントン療法 との類似性を指摘した上で、「癒し」としての必要性を論じている。 民俗学的なものを期待していたのだが、ちょっと違っていた。 2001/5/18 「真犯人」パトリシア・コーンウェル 4作目。死刑を執行されたはずの犯人の指紋が現場で検出される。 実は、刑務所長の陰謀によりゴールドという男が解き放たれて いることが判明する。が、つかまらず。いいのか? 2001/5/16 「教祖誕生」上之郷利明 いわゆる新興宗教の教祖を取材したルポ。全体に突っ込みが甘い。 最後が麻原彰晃なのだが、サリン事件よりもずいぶん前に書かれているので のんきなことがかかれている。 2001/5/11 「遺留品」パトリシア・コーンウェル 第3巻。アベックが連続して殺害される。1巻ででてきた 妹を殺されるいやなジャーナリストアビーが友人として再登場。 今回も犯人は射殺され、自ら動機をかたることはない。この 犯人の徹底した匿名性は特徴的かも。 「タクラマカン」ブルース・スターリング かつてのサイバーパンクの旗手による短編集。最後の、タクラマカン 砂漠の地下の核実験でできた空洞のなかに、少数民族を宇宙船に乗せた かのように偽って押し込める、というのはなかなかすごい。 しかし著者近影の髪型はやめてほしいなあ。プロレスラーか、 ヤンママを母にもつ5歳児か、というようなエリアシ。 2001/5/8 「依頼人の娘」東野圭吾 「探偵倶楽部」なる探偵社がからむ5件の短編集。 男女ペアの探偵は、端役で狂言回し的存在。あまりに名探偵すぎて 主人公にすると話にならないのか。わりに純粋な推理小説的 なものが多いが、軽め。 2001/5/5 「20世紀SF(1) 40年代 星ねずみ」中村融、山岸真 編 20世紀の生んだ文芸ジャンルであるSFを回顧するために、各時代を 代表する短編をまとめたもの。第一巻と言うことで40年代。 時期が時期なので、シンプルな一発アイディアものもあるが、 かなりメタっぽい話まである。 2001/5/3 「証拠死体」パトリシア・コーンウェル 第2巻。マイアミから帰ってきた小説家が殺される。 1巻であんなことがあった家にまだ住んでいる主人公にはおどろきだ。 犯人は例によってサイコ野郎だが、レッサーパンダ帽の男がニュースを 騒がしている昨今、こういう話もリアリティが出てきたなあ。 2001/5/1 「検屍官」パトリシア・コーンウェル 女性検死官ケイ・スカーペッタを主人公とするシリーズの第1巻。 作者がモルグでプログラマをしていたということでなかなかの臨場感。 講談社文庫。主要登場人物がのった栞がついていて便利。

4月

2001/4/30 「ブッダの夢」河合隼雄・中沢新一 ユング系臨床心理学者の河合隼雄と、オウムの一件でミソをつけた 宗教学者中沢新一の対談集。対談と言う形式は、うまく編集しないと 話題が散漫になり、何が言いたいのかわからなくなるきらいがあるが、 まさにその典型。お互いに納得しているようだが読者置いてけぼり といった感じ。箱庭療法の臨床例はインプレッシブだが、うーん。 2001/4/26 「妖怪馬鹿」京極夏彦・多田克己・村上健司 妖怪馬鹿の3人+編集の青木某による京都での対談集。 非常に奥が深く、一般人にはわからない会話にはちゃんと脚注が ついていて有意義。参考文献リストとしても有効そう。 京極夏彦がいろいろな有名作家の画風を器用に真似した漫画も ついていてお買い得な感じ。 2001/4/20 「学生街の殺人」東野圭吾 初期の代表作らしい。大学を卒業したあとぶらぶらと ビリヤードやのレジ係をしている青年の周りで殺人事件が起こる。 かなり悲しい結末だが、最後のシーンがかっこよすぎ。 2001/4/18 「悪意」東野圭吾 加賀刑事登場。殺された人気作家の作品は盗作だった、と思いきや、 二転三転で面白い。 登場人物の手記による推理小説というスタイルを逆手に取った手法で、 なかなかに巧妙。はじめの話がこうつながってくるとは。 2001/4/12 「ゼノサイド」オーソン・スコット・カード 「死者の代弁者」の続編。再読。 中国系植民星パスの神の声を聞く人々の設定はおぞましい。 改めて読んでみると、エンダーの心の中からよみがえったピータや、 ピータとともにスターウェイズ議会を目指すシーワンムなど、 なかなかおそろしい終わり方をしている。「子ら」が楽しみだ。 2001/4/7 「死者の代弁者」オーソン・スコット・カード 「エンダーのゲーム」の続編。といっても場所も時代もまるで別。 「エンダーの子ら」が発売されたので、準備として再読。

3月

2001/3/27 「脳を究める」立花隆 科学朝日に連載されていたインタヴューをまとめたもの。 研究法はいろいろ進歩しているし、さまざまなことがわかってきた とはいっても、コンピュータで言うと素子レベルの話で、より重要な アルゴリズムやデータ表現などに関してはまだ手がうてないレベル、 という印象。先は長い。 2001/3/23 「飢狼伝 XII」夢枕獏 すくね流の話がちょっとは進むのかと思ったら、逆にブラジル 時代に逆戻り。力道山と猪木(力王山と巽)の話になってしまった。 ほんとにこの話を終わらすつもりがあるのだろうか。 「回廊亭殺人事件」東野圭吾 回廊亭と呼ばれる旅館を舞台に、財閥一族のだれかに恋人を 殺された元秘書が変装して復讐する。読後感悪し。救いがない。 2001/3/19 「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾 役作りのために山荘に泊り込んだ7人の劇団員が、 役作りのための芝居なのか本当の殺人なのかわからないなかで、 ひとりひとり消えていく。ものがたりが3重構造になっている。 2001/3/14 「十字屋敷のピエロ」東野圭吾 最後の部分を除けば、わりに古典的な推理もの。トリックはチープで 金田一少年みたい。屋敷の対称軸が垂直でも水平でもなく、斜め45度 だというところが怪しい。まあまあ。 2001/3/13 「白夜行」東野圭吾 オイルショック前夜の大阪で質屋の主人が建設中のビルで殺され、 一年後、質屋に出入りしていた未亡人がガス中毒で死亡した。 この質屋の息子と未亡人の娘の20年間を描く。 とても面白いが、重い。重すぎ。ぐったり。 宮部みゆきの「火車」を思わせる。 2001/3/8 「駆込寺蔭始末」隆慶一郎 駆込寺の住持である尼僧を、隠密剣の使い手である「麿」が守る、 連作短編集。全体に書き込みが甘く、いまいち。 2001/3/5 「魂の駆動体」神林長平 クルマというものがなくなってしまった近未来、二人の老人がクルマを 設計する。後半はうって変わって、翼人という人類の子孫が支配する遠未来に、 このクルマの設計図が発掘され、実際に製作される。 クルマはいいよねえ。 「舌先の格闘技」中島らも 減らず口をたたきあう対談集、という企画らしいが最後のほうは完全に ただの対談になっている。対談相手は松尾貴史、鮫肌文殊、いとうせいこう、 吉村智樹、前田日明。 2001/3/1 「夜のオデッセイア」船戸与一 ハードボイルド。 八百長ボクサーとマネージャーがマフィアとアラブのスパイがらみの 事件に巻き込まれ、大型バン「オデッセイア」でアメリカを放浪する。 すべてがおわると結局もとどおり、という。ブランデー・ジョーと ウィスキー・ジョーの二人のレスラーが魅力的。

2月

2001/2/28 「洗脳体験 <増補版>」二澤雅喜 島田裕巳 1980年代後半にライフダイナミクスというセミナーを受けた二澤の 体験記に、島田が解説をつけている。セミナーの段取りがかなり詳しく かかれていて興味深い。エヴァの最終回のようだ。セミナー体験で 一時的には変わったような気がするが、結局それは長続きしない、 4日やそこらで注入できる価値観では、半生かかって築き上げた価値観 を置き換えることはできない、というのは当然だが、ちょっと安心。 2001/2/26 「ぼくたちの洗脳社会」岡田斗司夫 「オタキング」にして「怪傑のうてんき」であるところの岡田斗司夫の 処女作。現在はパラダイムシフトのさなかであり、経済至上主義の後には 洗脳を基本とした社会がくると説く。洗脳と言っても、価値観の宣伝程度 のニュアンスで、今後の人間はさまざまな領域でにおける価値観を パッチワークして自分を作り上げなければならない、というような意味。 それほど意外な内容ではない。小林よしのりと太田光が解説を書いているのが 面白い。 2001/2/22 「眠りの森」東野圭吾 バレエ団で起こった連続殺人事件。 はからずして加賀恭一郎出演作品を3つ連続で読むことに。 どうも所轄をはずれて警視庁本庁に入っているようだぞ。 しかも、今回は彼女まで見つけて、まあめでたい。 裏表紙のあらすじの「プリマたち」という表現はおかしい。 プリマはひとつのバレエ団には一人しかいないのでは。 2001/2/21 「私が彼を殺した」東野圭吾 結婚式の日に毒入りカプセルを飲まされて(元)人気作家が殺された。 容疑者は3人。さて真犯人はだれでしょう、というもので「どちらかが」 と同じ趣向で、犯人は明示されていない。なんどか読み返したのだが こちらは犯人がわからん。だれか教えてくれー。とか思って検索してみたら いくつか引っかかったのだが、なんか納得いかないなあ。 2001/2/17 「どちらかが彼女を殺した」東野圭吾 妹を殺された交通課の警官が個人的に犯人と思われる、被害者の 元恋人と親友をを追い詰める。 「純粋に推理の過程だけを楽しむ」 ことを追求したということで、 他の作品よりも味わいが落ちるかも。利き手がポイントなのだが、 犯人じゃないほうが左利きじゃなかったら解決しなかったというのは うーん、どうなのだろう。 2001/2/13 「太陽風交点」堀晃 第一回日本SF大賞受賞作品。1977年当時のいわゆる「ハードSF」の 短編集。ニーブンを思わせる、科学考証のしっかりしたSFである。 が、やはり時代の束縛というか、短編だからなのか、一発ネタで終わっている 感が強く、今読むと古典的という印象。 2001/2/10 「フラッシュフォワード」ロバート・J・ソウヤー CERNでの実験の影響で全世界の人が21年後を垣間見るという、ある種の タイムパラドックスもの。例によって、夫婦の愛情と離婚が作品中の 大きな位置をしめている。未来の改変と時空の構造がテーマなのだろうが、 結局この話の中ではブロック宇宙論は破綻しているんだよなあ。 2001/2/6 「死国」坂東眞砂子 四国にはお遍路さんが左回りに回っているがこれは、石鎚山を 回ることで結界を張っているのであり、逆に回ると死者が復活して くる、という設定。主人公は高知のふるさとに戻ったイラストレター、 死んだ幼馴染が復活してくる。さわやかな読後感を求める私としては、 いまいち。 2001/2/2 「闇狩り師」夢枕獏 副題「ミスター仙人・九十九乱蔵」 80年代初期のシリーズもの。主人公乱蔵は「キマイラ」の三蔵の兄。 解説で北上次郎は、夢枕獏については「キマイラ」が終わってから まとめたい、と書いているが、そんなこといっているといつまでたっても まとめられないぞ。

1月

2001/1/30 「ゴールデン・フリース」ロバート・J・ソウヤー 恒星間宇宙船アルゴのメインコンピュータ、イアソンの殺人を被害者の 前夫が解き明かすミステリー。ネタ的にどうしたってHAL9000が 思い出されるが、実際似ているのかもしれない。ウィルスと 地球での核戦争の関係は書かれていないけど、やっぱりあると 考えるべきなのだろう。そうするとウィルスがモノリスに相当するわけか。 2001/1/29 「バラヤー内乱」ロイス・マクマスター・ビジョルド マイルズシリーズの長編。「名誉のかけら」の続編にあたる マイルズ誕生直前、人工子宮に収められたマイルズを奪回しに 首都へ向かうマイルズの母コーデリアが主人公。あいかわらずよい。 ヒューゴー、ローカスのダブルクラウン。 2001/1/19 「淋しい狩人」宮部みゆき おじいさんとその孫が運営する古本屋を舞台にした古書ミステリー?の 連作短編集。例によってすばらしい。特におじいさんが素敵。 こういう爺になりたいものだ。 2001/1/17 「平安妖異伝」平岩弓枝 藤原道長を主人公にした平安もののけもの。ちょうど「陰陽師」と同じ時代で、 安部晴明も名前だけ出てくる。陰陽師の晴明にあたる役は秦真比呂という 天才少年楽士。出たもののけを真比呂が調伏するという構造は「陰陽師」と 同じだが、陰陽師のもののけほど業を感じさせないあたりが弱い。 2001/1/16 「宿命」東野圭吾 主人公の刑事と学生時代の宿敵が殺人容疑者として再会。実は二人は。。。 というミステリー。戦後に行われた人体実験と現代の大企業の社長殺人が 複雑にからまっていて面白い。最後のオチもなかなか。 2001/1/15 「太陽系辺境空域」ラリイ・ニーブン いわゆるノウンスペースものの短編集。「無常の月」にも含まれている 短編が2編ほど。クオリティは高いがアイディア一発ものの短編が多く、 時代を感じさせる。 2001/1/11 「無常の月」ラリイ・ニーブン 短編集。なかなかの傑作ぞろい。スーパーマンの子作りにかんする考察や テレポーテーションに関する考察はなかなか笑える。表題作は、 「月が突然明るくなった。それの意味することは」ってな感じの、 一種の破滅ものだが新星ではなく太陽フレアだったということで救いと ひねりが入っている。全体的に科学的な考察はさすが巨匠。 2001/1/10 「東亰異聞」小野不由美 もう一つの東京、東亰の明治末期を舞台にしたミステリー? 火炎魔人とか闇御前とか、ちょっと江戸川乱歩っぽいのも素敵。 結局お家騒動にからんだちょっと凝ったミステリーなのかな、と 思った最後の最後でどんでん返し。東京ではなく「東亰」であるのは 伊達じゃないってことか。面白かった。他のも読んでみよう。 2001/1/6 「ゴジラ生物学序説」サーフライダー21編 92年発行の、「ウルトラマン研究序説」」の露骨なフォロアー。 ゴジラという作品が初期のシリアスからお子様向け怪獣大行進を経て、 誰をターゲットにしているのかわからない、いわゆる平成シリーズへと 変遷しているのに、対象となるゴジラという生き物を絞り込めていない ので、考察がめちゃめちゃ。章によってゴジラの体長や体重が変動するし。 一生懸命書いた生物学の先生方には気の毒だが、企画そのものに無理が あると言えよう。 2001/1/2 「こわれた腕輪」アーシュラ・K・ル=グウィン ゲド戦記のII。Iが世界中を動き回る話だったのに対して、こちらは 一つの教会の敷地で話が終わってしまっている。ゲドは立派な ドラゴンスレイヤになっている。

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