2012年1月28日土曜日

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉 石田 衣良 ISBN4167174065 文春文庫

池袋の何でもや真島マコトの活躍を描くシリーズ2冊目。 1巻同様「クール」な感じでいいんだけど、描かれている事件が かなり陰惨でちょっときつい。パトリシア・コーンウェルとかに 比べれば、そんなにひどいわけでもないんだけど、日本が舞台で 日本人の子供が被害者として描かれると、 やっぱりちょっと、読後の不快感の強度が違う。 このシリーズ、今後も読むかどうか迷うところだ。

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉 (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋
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セドナ、鎮まりてあれかし

セドナ、鎮まりてあれかし 泉 和良 ISBN4150310181 ハヤカワ文庫JA

舞台のセドナは、冥王星よりもさらに遠い楕円軌道をもつ実在の小惑星。この世界では 人工太陽を持ち、人口的に重量物質を内核に流し込まれて、大気を持ち 居住可能な環境としてテラフォームされている。しかし、 過去において大規模な人類同士の抗争の戦場となり、多数のナノマシンが ばら撒かれた結果、生態系が破壊されて、ほとんど居住不能になっている。 夜になるとナノマシンの砂嵐が吹き荒れる。

このお話は、戦闘において脳にダメージを受けたため、聖なる白痴となった 主人公ゴロが、セドナに唯一駐留する老将軍と、お供のアンドロイドとともに 先の大戦犠牲者の遺骨を収集する、というもの。 ヤマもなければオチもない。

素直に読めば、日本は二次大戦の戦没者の遺骨収集を国を挙げてやるべき、 というように読めるんだけど、そこまですら考えないで書いていそうで怖い。

ナノマシンがほとんど魔法の用に扱われている。なにしろ、 語り手はナノマシンの集合体がなんとなく意思をもった何かだし。 老将軍の遺志で、戦没者の遺書が太陽系中に発信されるし。 こういうのってSFでもなんでもないよね。

セドナ、鎮まりてあれかし (ハヤカワ文庫JA)
泉 和良
早川書房
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日本はじっこ自滅旅

日本はじっこ自滅旅 鴨志田 穣 ISBN4062768712 講談社文庫

著者は、サイバラの元旦那。サイバラに家を叩き出されての 各地放浪エッセイ。やっぱり、お酒のみすぎだよ。 お酒怖い。

日本はじっこ自滅旅 (講談社文庫)
鴨志田 穣
講談社 (2011-01-14)
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2012年1月16日月曜日

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク 石田 衣良 ISBN4167174030 文春文庫
石田衣良のデビュー作にして出世作。映像化もされている、 一人称の小気味良い文体のハードボイルド風青春小説。 母親の営む池袋西口の果物屋を手伝う何でもやの主人公マコトが、 仲間の力をかりて池袋でおこる様々な事件を解決する、というフォーマット。 仲間がキャラが立っていてよいが、続編が続くうちにルパンみたいにマンネリに なっていたらやだな。
マコトがクラシックを聞くというのも面白い設定。出てくる曲を聞いてみたくなる。
どうでもいいけど、マコトが愛用しているのが「ケータイ」じゃなくてPHSなのがなんとも。そういえばそういう時代もあったなあ、と。
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石田 衣良
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小指の先の天使

小指の先の天使 神林長平 ISBN4150308411 ハヤカワ文庫JA

再読。というか再読のつもりはなかったのだけど、読んだことがあったという。。。 たった4年前なのにほとんど全部忘れている。。

短篇集。仮想世界で生きる話が多いのだけど、大量の脳を仮想的に計算機の中で実行してしまう イーガン流とは違って、脳はそのままで入出力だけ計算機につなぐというマトリックス流。 よくも悪くも、アイデンティティが「肉体」に立脚しているわけだ。 それにしても古いコンピュータに干上がった脳が入ったカプセルがたくさんぶら下がっている、というのは なかなかイヤな絵面だ。

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神林 長平
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プランク・ダイヴ

プランク・ダイヴ グレッグ・イーガン ISBN4150118264 ハヤカワ文庫SF

短篇集。「ワンの絨毯」を含む7編。イーガン

  • 「クリスタルの夜」 超高速な計算機の中で人工的に淘汰を繰り返し知的生物を生み出し、この宇宙の 謎を解かせようというプロジェクトが想像外の結末を迎える。計算機の中の生命体に対して淘汰をおこなうこと の倫理的な問題がひとつのトピック。
  • 「エキストラ」 移植用の組織を保持するために脳の機能を抑制したクローンを大量に保持することが 裕福な層にとって一般的になっている世界。主人公は、組織の移植ではなく、脳の大脳皮質部分のみの 移植に踏み切るが。。。意識というか人間のアイデンティティがどこにあるのかを問う。これが一番 イーガンっぽかったかな。
  • 「暗黒整数」 傑作「ルミナス」の続編。異なる公理体系を持つ宇宙との計算での攻防。
  • 「グローリー」数学を極めた先史文明を持つ惑星に調査のために知的生命体が送り込まれる。
  • 「ワンの絨毯」異星の海には、巨大な有機分子が浮かんでいた。知的生命体との邂逅を期待していた探検隊は失望するが、この有機分子では計算が行われており、その中に知的生命体が。。 長編「ディアスポラ」の一部伴っている中編。
  • 「プランク・ダイヴ」宇宙の謎を知るために、計算機に意識を移し、ブラックホールに突入。もちろん得た知識をもって出てくることはできないわけだが。
  • 「伝播」リニアレールガンを用いて、ナノマシーンを超高速で射出、ターゲットの惑星上で、ロボットを作成させ、そこに意識をバースト転送で移植する、という。
相変わらず高品質だけど、なんというか薄味。 もっとイーガンならではの強烈なインパクトの作品が読みたい。

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)
グレッグ・イーガン
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