2003年 12 月
2003/12/27
後巷説百物語
京極夏彦
ISBN4-04-873501-2
角川書店
巷説百物語シリーズの続編。巷説百物語の時代から50年近く時が流れ、
すでに時代は明治。一白翁を名乗り隠居生活をしている百介のところに
事件が持ち込まれ、百介が昔話を語る、という形式。
やっぱり主役が出ないちょっとしまらないが、最後はなかなか
きれいに終わったかな。由良家がこんなところにも。
2003/12/21
対人恐怖の心理
内沼幸雄
ISBN4-06-159282-3
講談社学術文庫
臨床的な本なのかと思ったら、どちらかというと哲学っぽい話だった。
2003/12/18
アジア食べまくり一人旅
長崎快宏
ISBN4-569-57511-0
PHP文庫
アジア各国の屋台料理などを紹介。
なんか浅薄でつまらない。
2003/12/5
つくられた障害 「色盲」
高柳泰世
ISBN4-02-261383-1
朝日文庫
色盲者に対する日本独特の差別に対して運動を続けてきた筆者の、長年の
運動を総括した本。私は色弱なのだが、いままでなにかで困ったことはない。
しかし実は、わたしが大学受験したころにもまだまだ入学制限をしている
大学はたくさんあって、そういうところを受けていたら面倒なことに
なっていたらしい。
さらにモーターボートの免許なんかも、ちょっと前まで取れなかったらしい。
軍隊のために生み出された、いわゆる石原式のテスト(色の斑点から数字を読み取るやつ)が
あまりにも敏感で不必要な差別を生んでしまっていたということ。
2003/12/1
失われた化石記録
J・ウィリアム・ショップ
ISBN4-06-149344-2
講談社現代新書 シリーズ「生命の歴史」2
カンブリア代以前に化石が見つからないという「ダーウィンのジレンマ」が、
先カンブリア代の化石がみつかることによって解決した過程を描く。
酸素がない環境下では意外に簡単に有機化合物ができるというのが
興味深い。シアノバクテリアは35億年も前から基本的に変化していない、
というのはまったくおどろきだ。
2003年 11 月
2003/11/30
黄金伝説
荒俣宏
ISBN4-08-748171-9
集英社文庫
産業考古学を提唱し、おもに明治初期に巨万の富を築いた「王」たちの
足跡を訪ねる。とてもおもしろい。
特に、無人の孤島だった南大東島にサトウキビを植えて八丈島から
入植させた「サトウキビ王」の話はすごい。
ちゃんとしたカメラマンを連れて行っているらしいにも
かかわらず、巻頭のわずかな写真以外には、
写真がほとんど載ってないのはなぜ?単行本にはもう少し載ってたんだろうか?
2003/11/27
世界の論争・ビッグバンはあったか
近藤陽次
ISBN4-06-257300-8
講談社ブルーバックス
常識となっているビッグバン説には、それほど明確な証拠があるわけではなく、
現在のところ仮説に過ぎない、と説いている。なるほど。
2003/11/23
グランド・バンクスの幻影
アーサー・C・クラーク
ISBN4-15-011208-8
ハヤカワ文庫SF
タイタニック号沈没から100周年を迎える2012年に行われる
タイタニック号を引き上げるプロジェクトを描く近未来SF。
なぜかマンデルブロ集合がフィーチャーされていたり。
さすがに巨匠だけあって安定していて読みやすいね。1990年の作。
2003/11/23
生物社会の論理
今西錦司
ISBN4-582-76036-8
平凡社ライブラリー
今西進化論の今西錦司による、棲み分け理論を展開した名著、らしい。
論理的に組み立てられたというよりは叙述的で、データの裏づけにとぼしい感も。
理論の展開が常にトップダウンで違和感がある。
彼が棲み分けと呼んでいるのは、単なる動的平衡状態なのではないのだろうか。
2003/11/17
神の鉄槌
アーサー・C・クラーク
ISBN4-15-011235-5
ハヤカワ文庫SF
映画「ディープ・インパクト」の原作の一部となったという、小惑星激突SF。
キリスト教とイスラム教が入り混じったクリスラム教なるものが登場する。
科学的な考察もばっちりで無理がない。1993年の作。
2003/11/15
Johnny English
主要な情報部員が全員死んだため急遽ナンバーワンになったMr. Beanの
Rowan Atokinson が、
英国王室ののっとりをたくらむフランス人実業家の陰謀に挑む。
コテコテもコテコテ。芸達者なのはいいが、やっぱり上滑り気味だよなあ。
2003/11/15
Charie's Angels Full Throttle
単純なアクション。しかし、三人ともちょっと薹が立ってきた感は否めない。
次回作を作るなら女優の入れ替えが必要かも。
2003/11/15
推測統計はじめの一歩
清水誠
ISBN4-06-257283-4
講談社ブルーバックス
統計入門。式が多用され、直感的な説明もないので、教科書とかわらない。
2003/11/15
ヒトゲノムビジネス
中原英臣
ISBN4-09-404010-2
小学館文庫
ビジネスという観点からゲノムプロジェクトを語っている。
2003/11/15
鬼の研究
馬場あき子
ISBN4-480-02275-9
ちくま文庫
平安文学に登場する鬼を語った本。
とくに能、狂言への言及が多く、一度見てみたいと思わせる。
夢枕獏はこの本を読んでるんじゃないだろうか。
2003/11/13
精神鑑定とは何か
福島章
ISBN4-06-257075-0
講談社ブルーバックス
刑事犯の精神鑑定を行う鑑定人を経験した筆者が、実例を挙げて
精神鑑定の何たるかを書いている。
心神耗弱状態で犯罪を犯した人間の罪を減じるのはまあよいのだが、
心神耗弱に陥りやすい人間を社会から隔離する仕組みがなくていいのか、
という疑問がよぎる。
2003/11/7
ペンローズのねじれた四次元
竹内薫
ISBN4-06-257206-5
講談社ブルーバックス
副題「時空をつくるツイスターの不思議」。
いろんな物理系の本を翻訳している、この著者の経歴はなかなかおもしろい。
内容はかなりわかりやすく書いてあるが、もちろん本質的には
理解できないのだった。
2003/11/5
ダックスフントのワープ
藤原伊織
ISBN4-16-761401-4
文春文庫
4編からなる短編集。
家庭教師の青年が自閉気味の少女に語って聞かせる寓話を
主題にした表題作があまりにもクール。
物語の中のダックスフントやアンゴラウサギ、
青年と同じ年齢の少女の義理の母、
普段は伊達メガネをかけているが、
実はパンクっぽいバンドのボーカルをやっている少女の学校の先生など、
登場人物もクール。
2003/11/5
ナマズの丸かじり
東海林さだお
ISBN4-16-717734-X
文春文庫
週刊朝日に連載されている食に関するエッセイをまとめたもの。
文章が非常にたくみで、視点も鋭い。
2003年 10 月
2003/10/31
相対論のABC
福島肇
ISBN4-06-132813-1
講談社ブルーバックス
どちらかというと、理論そのものの説明よりも、社会的背景や
アインシュタインの人物像に焦点が当てられている。
2003/10/30
孫正義が吹く
石川好
ISBN4-09-404351-9
小学館文庫
Yahoo BBでおなじみ孫正義を取材した本。なんか
吹かれてますけど。
2003/10/29
告発!生保の邪道 だから保険金殺人は続発する
佐藤立志
ISBN4-09-404731-X
小学館文庫
続発する保険金殺人の背後にある、生保の営業方針と監督官庁、警察の怠慢にあると指摘する。
確かに、いろいろめちゃめちゃな事件が多いのに、
保険外交員が捕まったという話はついぞ聞かない。こまったもんだ。
2003/10/27
図解・わかる相対性理論
池田和義
ISBN4-06-257254-0
講談社ブルーバックス
ローレンツ収縮などを縦軸に時間、横軸に空間をとった図によって、
なんとなくわかるように説明してくれている。
わかりやすいといえばわかりやすいのだが、
根本的には納得いかないよなー。
2003/10/23
プラネットハザード
ジェイムズ・アラン・ガードナー
ISBN4-15-011260-6,ISBN4-15-011261-4
早川SF文庫
副題「惑星探査員帰還せず」。肉体的欠陥を持つものが、expendable(消耗品要員)として
危険な惑星探査員として従事させられるというヒドイ世界設定。
主人公は、上層部に逆らった提督を処分する巻き添えで、
おくりこまれた探査員が誰も帰ってこないメラクィンという惑星の探査を命じられる。
その地球そっくりの惑星には、ガラスの体を持つ人類がすんでいた。
なかなかSFっぽいSF。James Alan Gardner
2003/10/22
夜の翼
ロバート・シルヴァーバーグ
ISBN4-15-010250-3
早川SF文庫
人類が職業・種族別ギルドに分かれている、遠い未来の地球。
宇宙からの攻撃を監視する「監視員」である主人公と
蝶の羽をもつ翔人の娘が旅をする。
叙情的。
2003/10/22
ライズ民間警察機構
フィリップ・K・ディック
ISBN4-488-69615-5
創元SF文庫
一方通行のテレポートの発明によって十数光年離れた星への植民が
行われている世界。主人公は植民星からの情報がうそなのではないかという
疑問を持ち、テレポートでなく宇宙船で植民星を訪れることを計画する。
途中までは、こんな感じで結構普通のSFっぽい感じなのだが、
中盤から真実と幻想が入り混じってストーリーをまともに追うことができない。
やっぱりわたしには、ディックは無理なのか。
2003/10/19
妖奇切断譜
貫井徳郎
ISBN4-06-273727-2
講談社文庫
舞台は明治初期。美人画に描かれた女性が連続してバラバラ殺人の被害にあう。
公家の三男坊の主人公と名探偵のその友人がなぞを追う。
なんというかオチの異常さは、まあ許せるとしても、その異常さを支える
「業」みたいなものがいまいち描ききれていないので、説得力がない。
2003/10/17
華氏451度
レイ・ブラッドベリ
ISBN4-15-040106-3
早川NV文庫
すべての本が禁じられた世界。見つけられた本を焚書するファイヤーマンである主人公が、
隣人とのかかわりから本に興味を持ってしまい、逆に追われる立場となる。
1953年、マッカーシズムの中で刊行されており、「1984年」に通じるものがある。
2003/10/16
ヒカルの碁 23
ほったゆみ 小畑 健
ISBN4-088735048
集英社
ヒカルの碁最終巻。連載当時は、これでおわりなのか!と
納得いかなかったものだが、読み返してみると、これはこれでよいのかとも思う。
でも、1年に一度ぐらいでいいから、その後のヒカルも描いてほしい。
2003/10/15
暗闇のスキャナー
フィリップ・K・ディック
ISBN4-488-69609-0
創元SF文庫
ディックのドラッグ小説。ドラッグで精神が蝕まれていく、この陰鬱な話の
登場人物たちのモデルが、実際に廃人になったディックの友人だというから
すごい。
翻訳はなんと、アノ、山形浩生。当時学生だったというからさすがだ。
2003/10/11
コンピュータの熱い罠
岡嶋二人
ISBN4-06-273134-7
講談社文庫
コンピュータを使った結婚紹介所の職員である主人公が、蓄積されているデータが
自動的に詳細化されていることに気がついたことから、殺人事件に巻き込まれる。
コンピュータによるデータ集約によるプライバシィ侵害の問題をこの時期(86年)に
小説として書いていたのは評価されるべきなのかも?でも話はいまいち。
プレイボーイの彼氏があっという間に結婚詐欺師にたらしこまれるというのも
説得力がない。
2003/10/11
機械じかけの夢
笠井潔
ISBN4-480-08467-3
ちくま学芸文庫
副題「私的SF作家論」。元左翼系言論人の著者によるSF評論。
対象になっているのは、ヴォークト、クラーク、小松左京、ルグィン、ギブスン
など。非常に面白いのだが、バックグラウンドになっている現代思想が私には
わかっていないので、完全には理解できなかった。勉強してから再読します。
2003年 9 月
2003/9/30
タイム・マシン
H・G・ウエルズ
ISBN4-15-010274
ハヤカワSF文庫
SFにタイム・マシンという概念を始めて導入した表題作を含む短編集。
実は、大昔にジュブナイル版を読んだだけで、フル版は初めて読むのかもしれない。
原著は1895年発売の100年以上前の作品なのだが、50年代の脳天気なアメリカSFに比べてもはるかに
近代的な問題意識を持って書かれている。
偉大さを再認識。
「タイム・マシン」は昨年クソ映画化されていたが、やっぱり相当原作と違う。
ディティールがどうこうというよりも、原作の持つ諦観というか唯物的な史観が
完全に欠落している。
2003/9/29
愛車学
国沢光宏
ISBN4-569-57598-6
PHP文庫
副題「知らないと損するクルマの常識・非常識」。
著者は雑誌でよく見かける自動車評論家。中身は、まあよくあるノウハウ集。
水抜き剤が不要だという説明で、
「水は水素と酸素からできており、両方燃えるから水も燃える」っていう説明はあんまりだ。
こういうのが一箇所あると、本全体が怪しく思えてしまう。編集者もちゃんと
チェックしないと。
2003/9/26
極微機械 ボーア・メイカー
リンダ・ナガタ
ISBN4-15-011243-6
ハヤカワSF文庫
ボーアという天才科学者が作った人工知能を持つナノマシンが盗み出され、
たまたまスラム街に住む女性にとりつく。
いわゆるナノテクSFなんだろうけど、テクノロジというより魔法みたいな
描写なので、あまりSFという感じがしない。大体どうやって通信しているんだろう?
なんか中途半端。
ちなみに、ナガタという苗字は著者の配偶者が日系のためらしい。
2003/9/25
切り裂きジャック
パトリシア・コーンウェル
ISBN4-06-211583
講談社
検屍官シリーズのパトリシア・コーンウェルが、19世紀末のロンドンで
猟奇殺人を繰り返した切り裂きジャックの正体解明に挑む。
結論は、高名な印象派画家のウォルター・シッカートだとのこと。
1世紀以上前なのに、DNA検査ができたというのはびっくり。
ミトコンドリアDNAなので、あまり確度は高くなさそうだが。
たかが100年ちょっと前のロンドンのスラム街の暗い描写が印象的。
正直言ってウォルター・シッカートを知らないので、結論にはあまり驚きはない。
それより、調査に7億円もかけたという、パトリシア・コーンウェルの執念
のほうが驚きだ。
2003/9/22
科挙の話
村上哲見
ISBN4-06-159426-5
講談社学術文庫
伝説的な中国の官僚採用試験、科挙に関する本。
試験内容が韻文がメインだったというのは驚きだ。
なかなかおもしろい。
2003/9/18
巨大な落日
田原総一郎
ISBN4-16-735614-7
文春文庫
副題「大蔵官僚、敗走の八百五十日」。
1996年秋に始まった、日銀法改正と金融ビッグバンの背景を
大蔵官僚が何を考えていたのかという観点から読み解く。
大蔵官僚バッシングに萎縮して当事者能力を失っていた、という
のは本当なんだろうか。おそろしい。
1998年秋までの連載をまとめたものなのだが、
名前が出てくる銀行のほとんどが、よく考えてみるともうない。
すごい話だ。
2003/9/18
四人はなぜ死んだのか
三好万季
ISBN4-16-765608-6
文春文庫
副題「インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」」。
中三の女子学生が、毒入りカレー事件の際に、食中毒、青酸カリと
診断が瞑想したことで初期治療が遅れたことを論じたレポート。
後半は彼女のその後、みたいな話でつまらないのだけど、
ドアの角に頭をぶつけただけで、失明しかかった、という話は
怖かった。頭をぶつけたら病院にいきましょう。
2003/9/12
蒲生邸事件
宮部みゆき
ISBN4-16-754903
文春文庫
日本SF大賞受賞の長編。といっても、あまりSFという感じはしない。
高校生の主人公が、タイムスリップで2・26事件直前の平河町に流される。
そこで転がり込んだ元陸軍大将の蒲生邸で殺人事件がおき、
主人公が騒動に巻き込まれる。
さすがは宮部みゆきというべき傑作。一人一人のキャラクターが実に生き生きと描かれている。
2003/9/11
雪が降る
藤原伊織
ISBN4-06-273176-2
講談社文庫
「テロリストのパラソル」の作者による短編集。ストイックでハードボイルドだ。
2003/9/11
全証言 東芝クレーマー事件
前屋毅
ISBN4-09-416193-7
小学館文庫
1999年、インターネットをにぎわせたあのクレーマー事件の記録。
いまだに双方の主張に微妙に?相違があるのが面白い。
しかし、あの音声は印象的だったなあ。読んで思い出してしまった。
後日談に踏み込んでないのが、ちょっと物足りない。
2003/9/10
ライオンの夢 前田光世伝
神山典士
ISBN4-09-379213-5
小学館
あのグレーシー柔術の祖、コンデ・コマの記録。
意外に記録が残っているものだ。
後半はアマゾンへの入植の話になっている。
2003/4/
SFはどこまで実現するか
ロバート・L.・フォワード
ISBN4-06-132801-8
講談社ブルーバックス
作者は、古典的ハードSF「竜の卵」、「ロシュワールド」も書いている物理学者。
重力波通信、ワープ、ブラックホール工学、軌道エレベータなどを
物理で論じる。
ペレットを打ち上げて反動でステーションを維持するという
スペース・ファウンテンや、軌道上で長大な棒状構築物をまわして軌道脱出に
利用するロータベータなど、非常に興味深い。
2003/9/1
鍵師の仕事
段勲
ISBN4-09-404362
小学館文庫
鍵を開けることを生業とする職人吉川守夫氏に取材した本。
奥行きがない。
2003/9/1
俺はスーパーマン
横田順彌
ISBN4-06-184551-9
講談社文庫
いわゆる「ヨコジュン」による「ハチャハチャSF」。
主人公のSF作家が宇宙人にテスト用のスーパーマンにされてしまう。
つまらん。
2003年 8 月
2003/8/29
スノウ・クラッシュ
ニール・スティーブンスン
ISBN4-15-011351-3, ISBN4-15-011352-1
ハヤカワ文庫SF
「クリプトノミコン」の作者のサイバーパンク。いやポストサイバーパンクなのか?
アメリカはフランチャイズ国家に分割されており、メタヴァースという
ハビタットのすごいやつが普及している。
主人公ヒロは、ハッカーにして剣士にしてピザの配達屋の在日韓国人と黒人のハーフ。
ヒロイン Y.T. はハイテクスケートボードを使う特急便屋。ケーブルの先に電磁石の
ついたものを他人の自動車に吸い付けて(プーンするという)、引っ張ってもらうという。
なんか海腹川背みたいだ。
シュメール文明の言語はバベル以降の言語と異なる生得的なものであり、
脳のハードウェアに直接アクセスできる、という設定で、
これを用いた麻薬であるスノウクラッシュを用いて世界征服?をたくらむ大富豪に、
主人公たちが(成り行きで)対峙する。
スピード感あふれる文体とクールなガジェット。わかりやすいサイバーパンク。
2003/8/22
愛はさだめ、さだめは死
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
ISBN4-15-010730-0
ハヤカワ文庫SF
傑作「接続された女」を含む短編集。
印象的な表題作の原題は「Love is the Plan the plan is death」。
plan をさだめと訳すのは、さすがというか。
2003/8/18
電脳文化と漢字のゆくえ
平凡社編
ISBN4-582-40322-0
平凡社
Unicodeに代表される漢字の問題を識者が論じた本。
1998年出版だから5年前の本だが、その間のUnicodeの普及はすさまじい。
しかし読めば読むほど、どこまで異字体を保持するべきなのか、
という問題に対する答えはわからなくなる。
異字体と手癖の境界は、細部になればなるほどあいまいだ。
どこかで妥協するしかないと思うのだが、じゃあどこで妥協すればいいのか。
17万字を集めたというTRONの文字収録はものすごい努力だが、ちょっと見てみたら
i モードの絵文字まで入ってる。
うーん、そういうものなのか?
さらに森岡浩之のSF「星界の紋章」などにでてくる
アーヴ文字まではいってますけど。
なんだか、なにがやりたいのかわからない。
2003/8/15
ま・く・ら
柳家小三治
ISBN4-06-263777-4
講談社文庫
独演会などで語った噺の枕を集めたものだが、人柄がしのばれる
すばらしいエッセイ集になっている。
特に駐車場にとめた4台のバイクの間にホームレスが住んでしまう
「駐車場物語」は傑作。
是非独演会に行ってみたい。ということで勢いで予約してしまった(^_^)。楽しみ。
2003/8/14
惑星の暗号
グラハム・ハンコック
ISBN4-88135-665-8
翔泳社
例の「神々の指紋」の作者によるトンデモ本。
あの「火星の顔」は火星の古代文明による地球人への警告だという
のが主な趣旨。警告している内容は、巨大彗星の地球への衝突だという
ことなのだが、こちらのほうは、まあそれなりに論拠のある話であるのだが、
その分つまらない。
2003/8/14
名探偵の掟
東野圭吾
ISBN4-06-264618-8
講談社文庫
古今東西のいわゆる「本格」推理のパロディの短編集。
この続編が先に読んでしまった「名探偵の呪縛」なのだが、ずいぶん趣は異なる。
最後の古今東西の名探偵の類型が集結する章はすごい。
2003/8/12
図解 豊かさの栄養学2
丸元淑生 丸元康生
ISBN4-10-149804-0
新潮文庫
飽食時代の食生活を見直そうというシリーズ。
2巻は脂肪に重点を置いている。「あるある大辞典」が半年作れそうな、
それっぽいネタの宝庫。
で、結局何を食べればいいんだ。
2003/8/11
陰摩羅鬼の瑕
京極夏彦
ISBN4-06-182293-4
講談社ノベルズ
実に5年ぶり!の京極堂シリーズ最新刊。
毀れてしまった関口巽がなんとなく復活しているようでめでたい。
白樺湖そばの洋館で伯爵に嫁いだ花嫁が連続して殺される。
関係ないが白樺湖が湧き水を温めるための人造湖だとは知らなかった。
あと、横溝正史がでてくる。
登場人物があまりに少ないため、
推理小説としてはわりに早いうちにネタが割れてしまうのだが、
相変わらずの長口舌に幻惑されて、なかなか心地よい。
実は作品の中では「姑獲鳥の夏」から2年ぐらいしかたってない様子。
意外だ。
2003/8/1
ヨーロッパ中世の宇宙観
阿部謹也
ISBN4-06-158999-7
講談社学術文庫
ヨーロッパ中世の民俗学?のような論文集。
ヨーロッパものを読むのは初めてだけど、日本のそれとほとんどアプローチは
同じだというのがちょっと驚きだった。
そして、「ハーメルンの笛吹き」は(半分)史実だったというのはもっと驚き。
2003年 7 月
2003/7/29
フグはなぜ毒をもつのか 海洋生物の不思議
野口玉雄
ISBN-4-14-001768-6
日本放送出版協会
知らないことが多くて驚きの連続。
フグの毒は海洋性細菌が産出したものが生態濃縮されたものであり、
フグ以外のいくつかの魚介類もフグ毒をもっている。
ヒョウモンダコというタコは噛み付いたさいにフグ毒を分泌して獲物を殺す。
肉食の大型貝類にもフグ毒をもつものがいくつかある。などなど。
フグ毒以外にも貝毒というものがあり、海洋生物においては毒は
濃度の差こそあれ遍在しているらしい。
スベスベマンジュウガニなど、カニにも猛毒のものがいるらしい。
おそろしや。
さらに、とりたてのノリと魚を一緒に食べたら、
ノリについていた酵素が魚の脂を分解して毒ができ、
それに中毒していしまうということもあるらしい。
2003/7/29
虹を操る少年
東野圭吾
ISBN4-06-263545-3
講談社文庫
光でメロディを奏でる能力を持つ少年が人類を覚醒していく、といった、
二昔ぐらい前に眉村卓あたりが書いていたジュブナイルSFに近いノリ。
まあまあなのだが、なにか食い足りなく感じるのは、
主人公?である光瑠が
たいくつなスーパーマンとしか描かれていないからだろう。
2003/7/25
攻殻機動隊 1.5
士郎正宗
ISBN4-06-350406-9
講談社
最近すっかりエロイラストレータになりかかってる士郎正宗だが、
これはちょっと前の作品なのでまとも。
攻殻機動隊2と1の間の4話と、そのe-mangaバージョンを収めたCD-ROMで
2500円は高すぎ。
e-mangaというのは、へんなBGMを流しながら一こまずつ出してくるという
タルイもの。普通に読む倍は時間がかかるから見る気がしない。
どうせe-manga抜きの廉価版そのうち出るのだろうけど。
どうでもいいがサブタイトルの「HUMAN-ERROR PROCESSER」の
「PROCESSER」は「PROCESSOR」が普通。
でも士郎正宗のことだから、例によって確信犯なんだろうなあ。
どういう意味があるのか知らないけど。
2003/7/25
しあわせの理由
グレッグ・イーガン
ISBN4-15-011451-X
ハヤカワ文庫SF
期待のイーガン新作。とはいっても
SFマガジンで紹介済みのものがほとんどの日本オリジナル短編集。
実はもう一冊分ぐらい翻訳済みのがあるらしいので、さっさと
出してほしい。
内容はさすがイーガン。量子サッカーなるゲームの登場する
「ボーダー・ガード」が印象的。
表題作は20世紀SF(6)に収められていた作品。
なぜか、解説とオビを「トロン屋ケンちゃん」こと坂村健氏が書かれている。
2003/7/23
北村薫の本格ミステリ・ライブラリー
北村薫 編
ISBN4-04-343204-6
角川文庫
北村薫の選んだミステリ・アンソロジー。
EQMMに載ったものから、詩人 西條八十の作品や、吉行淳之介の小品、
さらには森の石松と小政が同一人物だったという奇説や、
新井素子の担当が大学時代に書いたものまで、バラエティ豊か。
2003/7/17
ベンチャーわれ倒産す 昔、大臣賞。今、自己破産。
板倉雄一郎
ISBN4-09-403661-X
小学館文庫
広告を掲載する代わりにただでインターネットアクセスを提供する
「ハイパーネット」の元社長が、その興隆と倒産を語る。
ハイパーネットのビジネスモデル自体には問題がなかった、という
立場のようだが、はたしてどうなんだろう。
その後の展開を見ているとビジネスモデルそのものにも
あまり先がなかったようだが。
2003/7/16
あやし 〜怪〜
宮部みゆき
ISBN4-04-873238-2
角川書店
江戸を舞台とする怪談短編集。人物が生き生きと描かれており、
あいかわらずすばらしい。
2003/7/15
虎よ!虎よ!
アルフレッド・ベスター
ISBN4-15-010277-5
ハヤカワ文庫SF
よく名前をSF評論で見かける1956年の作品。
ジョウントというテレポートを誰もができることが前提の世界。
顔にイレズミをされた主人公が、
宇宙で遭難し漂流中に見捨てていった宇宙船に、復讐を誓う。
アメコミの原作を書いていたということだけあり、ビジュアルな表現が鮮烈。
最後はイデオンなみにわけわからないですが。
2003/7/11
慟哭
貫井徳郎
ISBN4-488-42501-1
創元推理文庫
連続して幼女が誘拐され、捜査1課長が追い詰められていく。
最後のどんでん返しがおそるべし。傑作だが、ひどい話だ。
2003/7/3
ABAの殺人
アイザック・アシモフ
ISBN4-488-16704-7
創元推理文庫
アシモフの推理小説。アシモフは堂々と自ら登場。
形式としては主人公のダライアス・ジャストとアシモフの共著という形になっている。
ABAというのはアメリカ図書販売協会のこと。ABAの年次総会(展示会や
講演会、サイン会が行われれるらしい)で、
主人公の弟子であった作家が殺される。
ダライアス・ジャストは黒後家蜘蛛の4にもゲストとして登場している。
2003年 6 月
2003/6/29
ふしぎ遊戯 1-18
渡瀬悠宇
小学館フラワーコミックス
アメリカの友人へのお土産として古本屋で購入。
古代中国からつたわる巻物の世界に吸い込まれた女子高生の主人公が、
朱雀の巫女として、体に字のあざを持つ宿星の7人を探す、
という、まあありがちな。おたく腐女子向けのキャラ満載なので、
そういう方面にうけたんだろうなあ。
2003/4/20
セカンドショット
川島誠
ISBN4-04-364802-2
角川文庫
「800」の作者の短編集。表題作と「サドゥン・デス」は「800」に似た
さわやかな話だが、ちょっとダークな短編も多い。
2003/6/18
イスラム入門
ハミルトン・A・R・ギブ
ISBN4-06-159557-1
講談社学術文庫
今流行のイスラムをちょっと勉強してみようと図書館で借りてきた。
書かれたのが1948年と古く、最近の動きがフォローできていないのは残念。
2003/6/16
黒後家蜘蛛の会3
アイザック・アシモフ
ISBN4-488-16703-9
創元推理文庫
黒後家蜘蛛の会ものの3。
このシリーズは、英語やアメリカカルチャーに強く依存した話が多くて、
ネタがわかりにくいときがあるのが残念。エクソンとか。
2003/6/10
黒後家蜘蛛の会2
アイザック・アシモフ
ISBN4-488-16702-0
創元推理文庫
安楽椅子探偵ものに分類される、アシモフのミステリー。
給仕のヘンリーがさまざまななぞを解き明かす。
指輪物語ネタがでてくる。アシモフがトールキンのファンだと
いうのは、なんかうれしい。
2003/6/6
パラレルワールド・ラブストーリー
東野圭吾
ISBN4-06-263725-1
講談社文庫
古典的な親友との三角関係に
バーチャルリアリティというか記憶操作を絡ませた作品。
タイトルの「パラレルワールド」とはちょっとずれるような。
2つの世界を交互に描きながらシンクロさせていく技法はさすが。
今ひとつ救いのない終わり方だが、これは3人が正面から
消化していかなければならない問題だということなのだろうか。
2003/6/5
孤島の姫君
今市子
ISBN4-257-72199-5
朝日ソノラマ
短編漫画集。最後のエッセイ漫画「美しき獣たち」が面白い。
獣とは買っている文鳥たち。いくら手乗りといっても
原稿にフンをされる危険を冒して放し飼いにしているというのが
ちょっと信じられない。
2003/6/1
覘き小平次
京極夏彦
ISBN4-12-003308-2
中央公論新社
江戸時代の怪談話を京極流に解釈したもの。そういう意味では「嗤う伊右衛門」の
シリーズになるのかもしれないが、又市や治平もでてきたり。
相変わらずの語り口で、一気に読んでしまった。
悪党は全滅したので、ある意味ハッピーエンドなのかもしれないが、どうなんでしょう。
2003年 5 月
2003/5/29
ミラー・ダンス
ロイス・マクマスター・ビジョルド
ISBN4-488-69809-3, ISBN4-488-69810-7
創元SF文庫
マイルズ・ヴォルコシガンのシリーズ。 例によってすばらしい。
「親愛なるクローン」で登場したマイルズのクローン、マークが再登場。
マイルズは、上巻でいきなり死んでしまうので(もちろん復活するが)、
実質上の主人公はマーク。
マークはバラヤーに迎えられ順応し、
行方不明になったマイルズの凍結体のジャクソン統一惑星での捜索に参加する。
マークとマイルズのメンタリティはかなり近いので、読んでるとちょっと混乱。
シリーズはまだまだ続くようだが、マークはどういう扱いになるんだろう。
今後も楽しみだ。
2003/5/22
サンティアゴ はるかなる未来の叙事詩
マイク・レズニック
ISBN4-488-70001-2,ISBN4-488-70002-0
創元SF文庫
銀河系を舞台に、賞金稼ぎカインとエンジェルが伝説の悪漢サンティアゴを追う。
と書くと安手のスペオペみたいだが、いや、たしかにスペオペとしか
形容しようがないのだが、妙にかっこいい。傑作。
松本零士の絵にしたら結構似合うかもしれない。
あの傑作「キリンヤガ」の作者がこんなものも書けるとは、芸の幅が広い。
実はもう60過ぎのベテランで、ほかにも何冊も訳出されているらしいから
探して読んでみよう。
2003/5/16
ミュータント傑作選
R. シルヴァーバーグ編
講談社文庫
1970年代以前のミュータンントに関する短編を集めたもの。
「終りなき午後」は見覚えがあると思ったら
「地球の長い午後」の元となった連作短編の1篇らしい。
2003/5/15
ゴールド -黄金-
アイザック・アシモフ
ISBN4-15-011343-2
早川SF文庫
前半は短編集、後半はエッセイ、という変則的な編集。
そういえば、これ、原書をもっていたような。
2003/5/12
笑うな
筒井康隆
ISBN4-10-117111-4
新潮文庫
わずか200ページ強で34篇のショートショート。
2003/5/11
秘湯中の秘湯
清水義範
ISBN4-10-128211-0
新潮文庫
いつもどおり。
日本の歌謡曲をフランス語に翻訳したものを、日本語に翻訳しなおしたもの
という設定の「ジャポン大衆シャンソン史」が面白いが、
残念ながらモトネタがすでにわからない。
2003/5/8
比較文化論の試み
山本七平
ISBN4-06-158048-5
講談社学術文庫
100ページ足らずの講演まとめたもの。
基本的な主張は、日本人は自分の文化を言語化して
他文化と相対化しなければならない、といったところか?
2003/5/8
今西進化論批判の旅
L・B・ホールステッド
ISBN4-8067-1105-5
築地書館
ダーウィニズムの論客である筆者が、京都大学の客員教授として来日し、
日本独自とされる今西進化論を研究し批判する。
学術的な批判ではなく、比較文化論みたいな感じなので、
その意味では食い足りないが、「京都エリート」とかいった概念は面白い。
巻末のNatureでの往復書簡は、ホールステッドの学会での位置もわかって
興味深い。
2003年 4 月
2003/4/28
800
川島誠
ISBN4-04-364801-4
角川文庫
タイトルの800とは、800メートル走のこと。
川崎あたりのテキヤの息子「中沢」と湘南あたりのお坊ちゃまランナー「広瀬」の、
二人の主人公の一人称を交互に書くスタイル。なかなかスピード感があってよい。
引き込まれる。
映画
にもなったらしい。レンタルビデオ屋で探してみよう。
2003/4/25
地球光
アーサー・C・クラーク
ISBN4-15-010308-9
ハヤカワ文庫SF
55年に書かれた月世界ものSF。惑星連合と地球政府の間に
月に発見された重金属資源を巡って戦いが生じる。
宇宙植民者と地球が争うSFは珍しくもないが、
地球のほうが資源の点で有利という設定になっているのは結構珍しいのではないだろうか。
月世界の描写はさすがだが、今となってはインパクトがない。
2003/4/23
マッド・サイエンス入門
堀晃
ISBN4-10-142402-0
新潮文庫
1章ごとに特定のSFガジェット?を取り上げて論じている。
なかなか面白い。
ところどころで出てくるDitch Sunshine というのは自分のことなのね。
2003/4/22
ガニメデの優しい巨人
ジェイムズ・P・ホーガン
ISBN4-488-66302-8
創元推理文庫
「星を継ぐもの」の続編。壊れてしまったミネルヴァの住民である
ガニメアンが2500万年前から来訪。人類の発生の謎が解き明かされる。
20年前にはじめて読んだときにはそれなりに感銘を受けたような気がする
のだが、さすがに古さは否めない。
起源がまったく違う地球生物の遺伝子をミネルヴァの生き物に移植しても
無駄だと思うんだけどなー。人類の未来を信じるポジティブシンキングは
すばらしいと思うが。
2003/4/21
アホでマヌケなアメリカ白人
マイケル・ムーア
ISBN4-7601-2277-X
柏書房
作者はアカデミー賞で「Shame on you!」とやっていた「Bowling for Columbine」
の監督。「ブッシュ妄言録」のようなブッシュ個人攻撃本かと思っていたのだが、
ブッシュ個人ではなく、アメリカの構造的な問題に突っ込んでいて興味深い。
日本もひどいと思っていたけど、アメリカもひどいなー。
2003/4/20
ハリー・ポッタと炎のゴブレット
J・K・ローリング
ISBN4-915512-45-2
静山社
ついに上下分冊となったシリーズ第4弾。でも、ISBN番号は1つしかないのね。
話はいよいよ盛り上がり、とうとう「あの人」復活。
しかし、人が死にすぎでないか?
これでは小さい子に読んで聞かせるのはちょっと。
あと、ポートにハリーを触らせるだけなら、もっともっと簡単で
確実な方法がいくらでもあったんじゃないんだろうか。
そうそう、ハリポタの世界にプレーステーションがあるというのは
ちょっと意外だった。
2003/4/18
分身
東野圭吾
ISBN4-08-748519-6
集英社文庫
クローンをテーマに、二人の主人公を交互に描く形で進む長編。
なかなかよい。
自分がだれかのクローンだというだけで、それほど悩むだろうか?
生まれたてならともかく、20年もたてば後天的な経験のほうが重要で、
先天的な形質はそれほど問題にならないような。
2003/4/16
さよならジュピター 上下
小松左京
ISBN4-19-577438-1, ISBN4-19-577439-X
徳間文庫
いわずと知れた映画の原作。と思っていたらどうも、シナリオ先行で、
こちらがシナリオからのノベライズ、という位置づけらしい。
実は映画は見ていないのだが、読んでみると映画が不評だった原因はなんとなくわかる。
おそらく、わずか2時間強の映画としては詰め込みすぎたのだろう。
SF小説としてみると、SFガジェットの量はそれほど問題ないが、
最後のクライマックスを盛り上げるためだけのシーンなんかは、蛇足という感じ。
そもそもマリアというキャラがいらないような。
2003/4/9
言の葉の樹
アーシュラ・K・ル・グィン
ISBN4-15-011403-X
ハヤカワ文庫SF
ハイニッシュ・ユニバースものの中篇。
舞台は、エクーメンとの文化接触後に、過去の文化をすべて破棄し、焚書坑儒を
おこなった惑星アカ。
主人公は、この星に観察員として訪れる。
きっと文化大革命ってこんな感じだったんだろうなあ。
2003年 3 月
2003/3/28
筒井順慶
筒井康隆
ISBN4-10-117129-7
新潮文庫
筒井順敬について書くように頼まれた筒井康隆自身が登場する表題作ほか、
風刺の効いた4編。
2003/3/25
12人の浮かれる男
筒井康隆
ISBN4-10-117118-1
新潮文庫
戯曲集。タイトル作はいわずと知れた「12人の怒れる男」のパロディ。
割にいまいちである。
2003/3/17
うつくしい子ども
石田衣良
ISBN4-16-717405-7
文春文庫
おそらくは酒鬼薔薇事件を下敷きにしたと思われるミステリー。
舞台はつくばがモデルと思しき研究学園都市。
主人公の13歳の弟が9歳の女の子を殺してしまう。
その背景の謎解きと主人公の友情と成長を描くジュブナイル。
最後がちょっと後味が悪いが、大変によい。
2003/3/14
飢狼伝 XIII
夢枕獏
ISBN-4-575-00724-2
双葉社
ようやく出た13巻。まだまだ終わる気配もない。
力王山と松尾象山の対決から始まる。
堤城平が復活。文七はまだ復活せず。
次巻からは飢狼伝2になるんだそうな。
2003/3/8
ハイブリッド・チャイルド
大原まり子
ISBN4-15-030393-2
ハヤカワ文庫JA
機械人との戦争のために作られた機械と生物のハイブリッド兵器
サンプルBIIIを主人公とする短編2篇と長編1篇が収められている。
「歌う船」に似ているが、絵(の描写)的にははるかに鮮烈。
なかなかよい。アニメにしたら映えそうだ。
2003/3/8
メトロポリスの虎
平井和正
ハヤカワJA文庫
平井和正の初長編。4DTVイマジネータの普及で停滞した世界。
イマジネータのディレクタである主人公が、「虎」として
停滞した世界を打ち破る。処女作ということであちこち
中途半端な部分があるが、それなりに面白い。
2003/3/7
だれも猫には気づかない
アン・マキャフリー
ISBN4-488-59701-7
創元推理文庫
老摂政が残した猫が隣国の王妃の謀略から、若い王を守る。
字がでかいので、ボリュームがない。いまいち。
2003/3/3
金持ち父さん 貧乏父さん
ロバート・キヨサキ
ISBN4-480-86330-3
筑摩書房
去年のベストセラーを人から借りて読む。
金を生み出す資産を持て、会社を興して節税しろ、
勉強しろ、というぐらいか。
それほど意外な話はないが、もう少しお金のことをちゃんと考えよう、とは思った。
2003/3/2
飢狼伝
谷口ジロー
ISBN4-257-90222-1
朝日ソノラマ
夢枕獏の原作を、板垣恵介以前に谷口ジローが漫画化したもの。
原作にかなり忠実な漫画化だが、原作の1巻分しかない。
板垣版は、丹波文七はチンピラだし、へんなキャラ(泣き虫サクラとか)
がでてくるし、こっちのほうが安心して読める。
絵柄はかなりむっちりしてるけど。
2003年 2 月
2003/2/28
年刊SF傑作選1
ジュディス・メリル編
創元推理文庫
私が生まれた年に発売されたアンソロジー。
原語版は1961年とさらに古く、40年前!。
SFが単なる奇想天外な発想を競うものではなくなり、徐々に文学性を帯びていく
ころであり、どれもなかなか味わい深い。
2003/2/25
指輪物語 王の帰還 下
J・R・R・トールキン
ISBN4-556-02370-2
評論社
大団円。中盤までに指輪の棄却がおわり、そのあとは
アラゴルンの帰還と結婚、ホビット庄への旅とそこでの
意外な戦いが描かれる。
スメヤゴルは最後に重要な役割を果たす。
実は主人公はサムなの?フロドよりもサムのほうがずっとしっかり
描かれている。
なんといっても余韻のある終わり方がすばらしい。
2003/2/19
指輪物語 二つの塔 下
J・R・R・トールキン
ISBN4-556-02368-0
評論社
上巻で出てこなかった、フロドとサムの旅。
スメヤゴルと一緒の旅路という緊迫感がたまらない。
スメヤゴル、いい味出してるなあ。王の帰還ではでてこないんだろうか?
またすごくいいところで終わるし。
王の帰還はすぐ読むべきか、来年の映画の前まで待つべきか。
2003/2/16
指輪物語 二つの塔 上2
J・R・R・トールキン
ISBN4-556-02367-2
評論社
ガンダルフ復活。しかも属性チェンジ。何を意味しているのかよくわからないけど。
にしてもフロドがまったく出てこないんですが、下ではでてくるんでしょうか。
サルマンがあっさり負けたけど、このままってことがあるだろうか。
2003/2/10
妖怪の民俗学
宮田登
ISBN4-480-08699-4
ちくま学芸文庫
柳田国男と井上円了の妖怪へのアプローチの違いを議論している
のが面白い。
橋や辻などがある種の境界となっている、という切り口で
さまざまな事象を読み解いているが、ちょっと固執しすぎという感もある。
2003/2/7
逆恨みのネメシス
新井素子
集英社文庫コバルトシリーズ
「通りすがりのレイディ」の悪役安川の娘が登場。
「そして星へ行く船」に続いてしまって尻きれトンボ。
このシリーズを読んでいたのは高校生のころだったのだが、
あのころはこの説教くさい内容に共感できていたのだなあ。若かった。
2003/2/6
カレンダーガール
新井素子
集英社文庫コバルトシリーズ
所長と麻子さんの新婚旅行で宇宙船がスペースジャックされる。
風閂なつかしい。
2003/2/4
通りすがりのレイディ
新井素子
集英社文庫コバルトシリーズ
「星へ行く船」シリーズの2巻。
4,5に出てくるレイディこと木谷真樹子登場。
2003年 1 月
2003/1/29
江戸のはやり神
宮田登
ISBN4-480-08068-6
ちくま学芸文庫
江戸時代に突発的に流行しそしてすたれた、いわゆる流行神を
とおして、日本人の宗教観を探る。
大黒天、恵比寿の縁起が興味深い。
2003/1/26
流しのしたの骨
江國香織
ISBN4-10-133915-5
新潮文庫
両親と3女1男兄弟の妙に仲のよい家庭の日常を描く。
このみょうな心地よさはなんなんだろう。
タイトルは「カチカチ山」から来ているのだが、
カチカチ山のストーリーを忘れていて調べてしまった。
2003/1/17
ゴールデン・マン ディック傑作集 3
フィリップ・K・ディック
ISBN4-15-010968-0
早川SF文庫
ディック傑作集の3。本来は4の「まだ人間じゃない」との2つで1冊の短編集
だったらしい。「アンドロイドは・・・」に登場する共感ボックスと
マーサ教を先行して取り扱っている短編「小さな黒い箱」が収録されている。
著者のノートではこちらのほうがより本質的に扱えている、とのことだが
「アンドロイドは・・・」での扱いのほうがインパクトがあるとおもうのだが。
「ヤンシーにならえ」は、ヒッピーだったという著者らしい。
2003/1/18
死の民俗学 日本人の死生観と葬送儀礼
山折哲雄
ISBN4-00-600082-0
岩波現代文庫
大嘗祭がおこなわれるタイミングから王権の委譲が行われる瞬間を
考察した論考や、日本人の遺骨にたいする異常な執着から日本人の
死生観を考察した論考など。
2003/1/17
分子進化学への招待
宮田隆
ISBN4-06-257047-5
講談社ブルーバックス
ちょっとお勉強しようと借りてきた。たんぱく質やDNAの分子構造を比較することで
生物進化の系統樹を推測する。素人向けでわかりやすい。
2003/1/13
佐高信の斬人斬書
佐高信
ISBN4-19-890123-6
徳間文庫
最近見かけることの多い、よくわからない評論家、佐高信の
1987年に刊行された単行本から抜粋してつくられた文庫本。
斬人斬書のセクションと好人好書のセクションからなる。
著者の意見はともかく、紹介されている本はおもしろそうだ。
2003/1/8
台所太平記
谷崎潤一郎
ISBN4-12-200088-2
中公文庫
戦前から戦後にかけて、著者その人ではないかと思われる主人公の家庭
にやってくるさまざまな女中さんを描いた「女中さん列伝」。
なんというか「家族」というものの構造そのものがまったく現在と
違っていることを痛感させられる。どこまで実話なんだかよくわからないが、
それぞれの女中さんの性格がおもしろい。
2003/1/8
風の十二方位
アーシュラ・K・ル・グィン
ISBN4-15-010399-2
ハヤカワ文庫SF
デビュー直後の17編からなる短編集。
どれも重い。「所有せざる人々」に登場するオドー主義の創始者である
オドーを描いた「革命前夜」、
そのまた前段となる寓話「オメラスから歩み去る人々」が印象に残る。
2003/1/2
ホビットの冒険
J.R.R.トールキン
ISBN4-00-112088-7, ISBN4-00-112089-5
岩波少年文庫
「指輪物語」にも登場するビルボ・バキンスの冒険。この冒険で
ビルボはゴクリから問題の「指輪」を入手する。
この話の中ではこの指輪はただの消える指輪に過ぎないのに
「指輪物語」では世界の命運を決する指輪になっている。
このへん、「リングにかけろ」で、登場したときにはジムのおっさんがくれた
ただのメリケンサックにすぎなかった「カイザーナックル」が、
いつのまにか世界に2つしかないオリハルコン製の怪しい神器になって
しまうのを髣髴とさせる。
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