2011年2月19日土曜日

現人神の創作者たち

現人神の創作者たち 山本 七平 ISBN4480423680, ISBN4480423699 ちくま文庫

作者は「日本人とユダヤ人」のイザヤ・ペンダサンこと山本七平。幕藩体制を正当化するための朱子学の奨励が尊皇攘夷を生み、ひいては現人神を生んだ課程を、江戸時代初期の思想化群の書物、さらにそれが参照する中国の原典を紐解いて論ずる。

漢文の書き下し文が多くて読むのに時間がかかって参ったが、大変に面白かった。 残念なことに、話が江戸時代前半で終わってしまい、倒幕にどうつながったのか、さらには現人神につながったのか というあたりがちょっと食い足りない感じ。江戸前期にまかれた種が育っただけだ、ということで、自明なので省略 なのかもしれないけど。

現人神の創作者たち〈上〉 (ちくま文庫)
山本 七平
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現人神の創作者たち〈下〉 (ちくま文庫)
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2011年2月11日金曜日

どちらかが魔女

どちらかが魔女 森博嗣 ISBN406214848X 講談社

S&Mシリーズの短編集。あちこちの短編集ですでに発表されていたものをS&M限定で 編集し直したもの。ちょっとずるい?

うち何本かは、諏訪野がかなりいいポジションを得ている。アシモフの「黒後家蜘蛛」みたい。

衝撃的なのは、どうも1つめの「西之園」は萌絵ではないらしい、 と最後の話でわかること。この二つの話は、初出も短編集も共通していない。 短編集としてまとまってるおかげで1つめの話が理解できた。おそるべし。

どちらかが魔女 森博嗣シリーズ短編集
森 博嗣
講談社
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2011年2月9日水曜日

夏のレプリカ

夏のレプリカ 森 博嗣 ISBN4061820001 講談社ノベルス

S&M シリーズ。前作「幻惑の死と使途」と同時期に起きた事件を描く。 萌絵の親友ともえが2年ぶりに帰宅すると、両親と姉は誘拐されており、 本人も翌朝拘束される。その後、両親たちと合流すると犯人グループのうち2名が射殺されており、 1名は自動車で逃げ去る。

いわゆる叙述トリック。なかなか読後感が悪いが、最後にちょっと救いが。これがなかったらかなりきつかった。

夏のレプリカ (講談社ノベルス)
森 博嗣
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2011年2月5日土曜日

老化で遊ぼう

老化で遊ぼう 東海林 さだお、 赤瀬川 原平 ISBN4101364036 新潮文庫

「アサッテくん」の東海林さだおと、「老人力」「超芸術」の赤瀬川源平の昭和12年生まれコンビによる対談集。小説新潮に隔月で連載されていたものを纏めたもので、なんと3つめなのだそうだ。

このくらいの年になると、こんなことも平気で話せるようになるんだなあ、的なお話が沢山。まあ自分を顧みてもそういう傾向はあるな。いくつかはゲストを迎えての鼎談になっていてそれも面白い。

老化で遊ぼう (新潮文庫)
東海林 さだお 赤瀬川 原平
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2011年1月31日月曜日

幻惑の死と使途 ILLUSION ACTS LIKE MAGIC

幻惑の死と使途 森 博嗣 ISBN4062730111 講談社文庫

犀川助教授と西之園萌絵のS&Mシリーズ。だいたい読んでいるつもりだったのだけど、リストを見てみたら結構抜けていたので落ち穂拾い。しかし、このころの森博嗣は面白い。というか、ちゃんとミステリーの範疇に収まっている。最近のは、どうもなあ。。。まあ、あれはアレでいいと思うんだけど。

脱出を得意とする初老のマジシャンが、池での箱からの脱出劇の際に胸をナイフで刺さされて死亡する。さらに、その葬儀で遺体が霊柩車の棺のなかから消え失せた。その後、マジシャンの道具作成を担当してた男が殺害されているのが発見される。3人の弟子のうちの一人である、女性の弟子が崩壊するビルからの脱出直後に殺される。

トリックよりも動機が面白い。ちょっと異常だが納得のいく範囲。97年の本なのだが、インターネットの描写が懐かしい。大学のインターネット環境が一番快適、って、確かにそういう時期だった。「ホームページ」はあるけど「ブログ」はまだ。HTML を手で書いていたころだ。

そうそう、Gシリーズの主人公の一人、加部谷恵美が、まだ中学生で端役として出てきてる。ちょっとうれしい。

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2011年1月26日水曜日

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語―

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語― マーク・ベニオフ ISBN4478012482 ダイヤモンド社

クラウドの最古参業者であるセールスフォースの創業社長Marc Benioffによる111のアドバイス。 技術書を期待してたんだけど、バリバリのビジネス書だった。。。まあ、縦書きだし、 ダイアモンド社だし、技術的な内容を求める方がおかしいのだけど、もうすこし書いてあっても 罰は当たらないと思うけどな。なぜクラウドにしたほうがいいのか、についてすらあまり書かれていないのは ちょっとどうかと。

Marc BenioffがもとOracle社員だったというのは知っていたが、副社長までつとめていたとは。Larry Ellisonと非常に親しく、Larryは初期の投資家のひとりで、Salsesforceの大株主なんだそうな。Salesforce と Oracleは製品発表の度にお互いをけなし合っているけど、そういうパフォーマンスもこのような人間関係があってこそなのだな、と納得。

にしても、Marcという人はちょっと面白い。冒頭でSalesforceを立ち上げるか、Oracleに残るかをなやんでインドに旅行に行き、ダライラマと会見しちゃうあたりなど、面白いを通り越してちょっと引いてしまう。Salesforceは社会貢献を重視していて1-1-1運動として、利益の1パーセント、就業時間の1パーセント、製品の1パーセントを無償で各種団体に提供してるのだそうだ。就業時間に関しては有給のボランティア休暇が6日間つくのだそうだ。6日間が1パーセントというのはどういう計算なのか謎だが。。。

アップルでのインターンの話も面白い。ジョブズがいるときと、追い出された後の2回インターンに行ったのだけど、全く会社の雰囲気が違っていたそうだ。そうなんだろうなあ。

Salesforceという会社が非常に特殊なリーダーに率いられた、非常に特殊な会社であることはよくわかった。 こういうビジョンをもった会社は働きやすそうだなあ、などと。

クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語―
マーク・ベニオフ カーリー・アドラー 齊藤 英孝
ダイヤモンド社
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2011年1月25日火曜日

世界がわかる宗教社会学入門

世界がわかる宗教社会学入門 橋爪 大三郎 ISBN4480422277 ちくま文庫

社会構造を規定するものとしての宗教について 世界の主要な宗教について紹介している。 東工大の授業をまとめたものらしく、端的でとてもわかりやすい。 特に朱子学を江戸幕府が推奨したことの矛盾のあたり、面白かった。

山本七平の「現人神の創作者たち」に言及されている。次はこれを読んでみよう。

世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)
橋爪 大三郎
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