パパの子育て短編集. 冒頭作のタイトル「ふにゅう」は「腐乳」ではなく「父乳」.育児休暇を取り育児に専念する主人公だが,やはりママには勝てないと非常手段に訴える. 他は, 911直後のニューヨークで出産に立ち会う美容師を描く「デリパニ」, 息子に本気で嫉妬する「ゆすきとくんとゆすあしちゃん」, 息子をゲイの道に進ませまいと,不必要に体を鍛えてしまう「桜川エピキュリアン」, 1月の出張に出たママの留守に息子と娘とパパが「脱皮」してしまう「ギンヤンマ,再配置プロジェクト」. 解説は「だめんず」のクラタマだが,はっきり言ってこの本にはまったくあっていない.
2009年3月30日月曜日
2009年3月28日土曜日
ねじの回転
主人公の若い女性家庭教師は古びた貴族屋敷に住む両親を無くした美しい兄妹の教育をまかされる.始めはすばらしい仕事のようにおもえたのだが,兄妹は,二人をを悪の道に誘い込もうとする死んだ二人の召使いの幽霊にとりつかれいた.
怪奇ものの古典らしい.映画にもなっているようだ. ジュネからもコミックがでているそうだ.なるほど,ちょっと世界が近いかもしれない. 恩田陸が「ねじの回転 Febrary Moment」という作品を書いているが,これからタイトルを とったそうだ.が,あんまり共通点はないかなあ.幽霊が出てくるぐらいで.
2009年3月27日金曜日
格闘する者に○
マンガ好き女子大生可南子のぐうたらな就職活動と70近い書道家との恋を描く. タイトルは全然関係ないいい間違いから来ているのだけど,なかなかぴったりだ.
実にいきいきとした1人称で書かれている.著者はエッセイストとして活躍している そうだが,そっちの方が向いているかも,と思わせる.エッセイも機会があれば読んでみたい.
2009年3月25日水曜日
蒲公英草紙―常野物語
一種の超能力者である常野一族を描く一連のシリーズ「常野物語」の一つ. 日清戦争後,日露戦争前の福島との県境にある宮城県の山村が舞台.裕福な地方の名士の病弱なお嬢さん聡子のお話し相手として屋敷に通う峰子の一人称で語られる.他人を「しまう」能力をもつ4人の一家が屋敷を訪れる.一家に村人が慣れたころに,山村を大雨が襲う.
恩田陸一流の情緒あふれる作品だが,最後が甘く終わってくれないところがなんとも... 解説は新井素子.
2009年3月23日月曜日
JavaScript: The Good Parts
一見C言語系っぽい見た目に反して,実はかなりの奇言語であるJavaScriptの言語機能を「Good Parts」と「Bad Parts」に分けて解説.newを使っちゃ駄目とか,かなり面白い.この奇天烈な言語が標準となったために,世界中で失われたプログラミング時間を考えるとちょっとめまいがする.きらいじゃないけどね.
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2009年3月20日金曜日
虚栄の肖像
絵画修復師,佐月恭壱のシリーズ.「深淵のガランス」の後の話.3編の中編が納められている.表題作には冬狐堂が登場.佐月は焼け焦げた絵の修復を依頼されるが,それには冬狐堂と佐月の両方を狙った罠が仕組まれていた.朱大人のボディーガード,ミヤギの兄が登場.
他2作は,佐月恭壱のかつて恋人由美子の父でもある師匠との確執が語られる「葡萄と乳房」,無名の作者による緊縛絵に禁断の荒技引き剥がしによる修復を行う「秘画師遺聞」.
2009年3月18日水曜日
深淵のガランス
銀座の花師にして絵画修復師の佐月恭壱を主人公にした中編が二編(表題作と,血色夢)収められている.表題作のガランスはフランス語の garance (茜色).ギャラリーフェイクとZEROを足したような話だ.全体に無駄に気障なハードボイルド調なところはZEROのほうに近い.もちろんZEROよりは人物造形に深みがあるが.
表題作では,クリーニングを依頼された絵画の下塗りの下に描かれていた絵を,表面の絵を拭い取ること無く再現する.
血色夢では,岩手の山中でみつかった壁画の修復を背景に,複数枚に分割されそれぞれ独立した作品だとされていた絵の修復(といっていいのか..)が語られる.
空中ブランコ
短編集.ころころと太った天真爛漫傍若無人の精神科医伊良部のもとにさまざまな心に傷をおった人が訪れ,勝手に癒されて帰っていく,というシリーズ.2冊目らしい.なんと直木賞受賞作だ. 面白いには面白いんだけど,直木賞ってこういう物だったんだっけ...
太った伊良部というと例の大リーグに行ったピッチャーが思い出されてしまうけど,文中のイメージはムーミンだ.
チェーホフを楽しむために
阿刀田高が,「XXを楽しむために」シリーズ.要するに「XX for dummies」なんだけれど,要約がとても上手なので,自力で通読するよりも理解しやすいかもしれない.そのうち,チェーホフをちょっと借りてみるか,という気にさせてくれる.
いわゆる「文学」にうといので,私にとってチェーホフといえばYMOの「サービス」に入っていた,「あだなはチェーホフ」だったりする.「櫻の園」は名前は知ってるけどさきに思い出すのはこっちだったり.
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2009年3月13日金曜日
大相撲の経済学
大相撲のさまざまな問題を個人に対するインセンティブという観点から説明する.八百長はなぜ起こるのか,朝青龍はなんでああなのか.などなど.大相撲で起こっている問題は,現代社会が直面している問題の縮図であるという観点が非常に興味深い.大相撲はスポーツではなく文化なのだから文化マーケッティングをするべきだ,という主張には説得力がある.解説は舞の海.
だれでも「達人」になれる!ゆる体操の極意
著者は武術系雑誌でDS図というトンデモ理論を展開していた人物.ゆる体操とかゆるウォークとかも提唱しているようだ.この本は体だけじゃなくて精神的にも「センター」が必要,と,さらに一歩トンデモ方向に踏み込んでいる印象が.まあ,結局「なにか自分の軸になる経験を持て」というような,当たり前の話に落ち着いていたりするのだけど.
ゆるめること自体は,たぶんいいことなのに,説明がオカルトっぽいので損しているような.まあ,オカルトが好きな人もたくさんいるからそっちにアピールした方が得だという判断なのかもしれないが.
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Firefox 3 Hacks
オライリージャパン独自企画本.もともと英語のFIrefox HacksがFirefox1の当時にあり,それの邦訳も出ていたのだけど,著者がなくなってしまったので,3は日本の独自企画で出したという経緯らしい.
Hacksというタイトルからは簡単なtips集のような感じを受けるが,内部構造にかなり踏み込んだ話題も扱われている.ただここまで書くのであれば,それなりの本の構造があったのではないか.Hacksという形で,すべての話題が基本的にフラットに並べられてしまっているため,読みにくい面もあるように思う.
いずれにしろ,内容は非常に充実している.オライリージャパン,アメリカで出版されている物もなかなか翻訳してくれなくて困ったもんだなあと思っていたのだけど,こんな本が独自で出せるとはまだまだ捨てた物ではない.英訳して逆輸出したいと著者達も書いているが,あながちありえ無い話ではないのではないか.
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2009年3月10日火曜日
戦後SFマンガ史
前コミケット代表の故米沢氏による労作.少女マンガ史よりは,知っている作品が多くて分かりやすかった.「鬼太郎」の水木しげるや「ガキデカ!」の山上たつひこが,非常に本格的なSFマンガを書いていたとは.絵柄もまったく違う.奥が深い人たちだ.
寄贈された米沢氏のコレクションをベースに,氏の出身校である明治大学がマンガ博物館をつくるようだ.ぜひ,何らかの形でこれらの貴重な作品を読めるようにしてほしい.
スカイ・イクリプス
「スカイ・クロラ」シリーズの短編集.これには,いろいろと長編群の間や後の話が出てきて,ちょっとは,話が理解できる,かと思ったがやっぱり全然わからない...うーん.まあいいや.この話はきっと雰囲気を味わう物なのだろうから.
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2009年3月9日月曜日
Twitter! - Twitter APIガイドブック
TwitterのAPIを紹介している.使用言語は主にPerlだがほかにもpythonやCなど.Twitterだけでは紙面が持たなかったってわけでもだいだろうけど,Twitter以外の類似サービスのAPIに関しても述べている.2007年10月刊行.
Twitter,アカウントは作ったもののいまいち使い方がわからなっていない.そんな私にはTwitterがなんでこんなにはやっているのかさっぱり分からないわけなのだけど,APIがすごく単純でいくらでもクライアントが簡単に作れそうだということはわかった.今後のサービスはこういうAPIでつくらなければいけないのだなあ.勉強になりました.
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2009年3月3日火曜日
大密室
密室物アンソロジー.メンツは豪華.恩田陸と北森鴻の作品は,それぞれ短編集で読んだこががあった.ストレートな密室ものは有栖川有栖,恩田陸,北森鴻までで,あとはどこかメタフィクションというか,密室物をメタに見るものに走ってしまっているのが面白い.やっぱりいまどきストレートな密室物は難しいんだろうなあ...
しかし,こうやって普通に入手できる密室ものが,ひとひねり,ふたひねりしたものばかりになっちゃっていいんだろうか? シューティングゲームが玄人向けにどんどん高度化して一般ユーザの支持を失ったように,密室物が一般読者の支持を失ってしまわないんだろうか.もっと単純な密室もののミステリがあってもいいような.あ,その辺りはいまはコナンやら金田一少年やらが担ってるのか...
新潮社
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2009年3月1日日曜日
オタク学入門
いわゆるオタキングが1996年に書いた本.2000年に新潮OH文庫となったものが2008年に普通の新潮文庫に収められている.解説によると,オウム事件の直後であるという世相を反映して,意図的にオタクを持ち上げている,のだそうだ.オタクを語るにしては,各議論が結構浅いような.いまならそれぞれ遥かに深い議論がありそうだ.
2008年の文庫化時にトミノとの対談が追加されている.議論がかみあっているようなかみあっていないような.まあ,トミノはいつもこんなもんだが.
著者は近年,激やせしたので,折り返しの著者近影もやせた写真.ここはやっぱり書いたころのコロコロした写真を使うべきではないのか.著者はやせたのと同じ時期に,言うことも変化したので,昔のオタク擁護論にやせた写真が付いていると違和感があるなあ.