2011年3月30日水曜日

民間軍事会社の内幕

民間軍事会社の内幕 菅原 出 ISBN4480427198 ちくま文庫

イラクやアフガニスタンには、派兵されている米軍と同数かそれ以上の数の民間人が民間軍事会社(PMC: Private Military Company)から派遣されているという。本書はそういった軍事の「アウトソーシング」の現状を論じている。

簡単な警備だけでなく、兵站や、尋問のような高度な作業までアウトソーシングされているというのはびっくり。本質的には、米軍が人員削減したにもかかわらず、戦線が拡大していることが原因なのだろう。 たとえば、現地の米軍のキャンプの食事や衛生管理などは、ほとんどが民間会社に委託されているのだそうだ。さらに欧米人では給与がたかいということで、アフリカや東南アジアから人身売買同然に調達されてきた安価な労働力をつかったりしているのだそうだ。もちろんキャンプが攻撃されれば、死傷者も出る。さらに面白いのはperception management と呼ばれる宣伝活動。イラクのフセインを大量破壊兵器を持つ大悪党に仕立て上げたのもPMCの活動の一環なのだそうだ。

警察や軍隊などの暴力装置を独占することが、古典的な国家の定義のひとつなわけだけど、この現状ってどうなんだろう。こういう会社が活躍している国(アフガニスタンやイラク)は国家として成立していないということになるのか。

民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)
菅原 出
筑摩書房
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2011年3月28日月曜日

アルツハイマーを知るために

アルツハイマーを知るために 佐藤 早苗 ISBN4101310513 新潮文庫

父親をアルツハイマーでなくした著者による,アルツハイマーの概説。一番始めにあやしいと気がつくのは本人なので、 早期に診断を受け進行を遅らせる薬を飲んで、その後の計画を立てるべし、とのこと。病変が進むと、本人の意志で計画を たてることは難しくなってしまうので、その前に診断をうけようということ。しかし、恐ろしいなあ。

さらに恐ろしいのは、この本、4年前に既読だったということ。冒頭の著者の父の残した絵で思い出したが、タイトルをみても 全然ぴんと来なかった。。。怖いなあ。

アルツハイマーを知るために (新潮文庫)
佐藤 早苗
新潮社
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2011年3月25日金曜日

Hadoop徹底入門

Hadoop徹底入門 太田 一樹, 下垣 徹, 山下 真一, 猿田 浩輔, 藤井 達朗 ISBN4798122335 翔泳社

こちらもHadoopの解説書。オライリーの「Hadoop」が決定版的な良書なので、別の本はなかなか書きにくかろうと思っていたが、ちゃんと直接競合しないように企画されている。サブタイトルに「オープンソース分散処理環境の構築」とあるように、パッケージのインストール方法や、PXEを使ったクラスタのインストール、Gangliaを用いたクラスタ監視、Hadoop実行の性能チューニングなど、実際に環境を構築、運用する際に有用な情報がまとめられている。Hiveに1章割かれているのも特徴。オライリー本と相補関係にあるといっていいだろう。こちらも良書。あわせて読みたい。

Hadoop徹底入門
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太田 一樹 下垣 徹 山下 真一 猿田 浩輔 藤井 達朗
翔泳社
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Hadoop

Hadoop Tom White ISBN487311439X オライリージャパン

話題の分散処理システムHadoopの解説書。Hadoopはかなり複雑なシステムだが、それを逐一丁寧に解説している。すごい情報量。Hadoop 本体だけでなく周辺技術となる、PigやHBase、ZooKeeperなども解説している。

この手の技術に関してはオンラインにも沢山情報があって、書籍の価値を見いだしにくいこともしばしば。しかしこういう本を見ると、きちんと整理された情報がまとまった形で供給される書籍という形式は素晴らしいと再確認できる。良書。

Hadoop
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Tom White
オライリージャパン
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2011年3月19日土曜日

語り女たち

語り女たち 北村 薫 ISBN4101373302 新潮文庫

これも短編集。物語好きのお金持ちが、物語を語れる女性たちを募集し、寝椅子に横たわりながら聞いたお話、という体裁。17編。いずれもヤマもオチもないのだけどじんわり来るお話ばかり。さすが名手だ。

これ、直木賞の候補作だったらしい。その後、「鷺と雪」で取っているのはご存じの通り。そういえば「鷺と雪」まだ読んでないな。

語り女たち (新潮文庫)
北村 薫
新潮社
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2011年3月11日金曜日

1950年のバックトス

1950年のバックトス 北村 薫 ISBN4101373329 新潮文庫

短編集。というよりもショートショートに近い。何しろ300ページ弱に23編も。短いものは3ページ弱だったり。

しかし北村薫、短編うまいなあ。わずかな紙面でほっこりと余韻の残る文章がよくかけるものだ。この短編集には、いろんなところに書いたものが集めてあるのだけど、こういうのは、まとめて読むよりもひとつづつ、大事に読みたい気もする。

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北村 薫
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2011年3月10日木曜日

日本沈没 第二部

日本沈没 第二部 小松 左京, 谷 甲州 ISBN4094082743, ISBN4094082751 小学館文庫

未曾有の悲劇から25年。各地に入植した日本人はそれぞれに拠点を築いていた。中田首相は、メガロフロートによる日本再建をもくろむが、 中国との利権対立で暗礁に。さらに地球シミュレータ(!)によって、大規模な氷期の訪れが予想され、混乱に拍車がかかる。

小松左京を中心としたチームが構成し、谷甲州が執筆、というスタイルでかかれた続編。何でも元々日本沈没は、沈没以後を書くための小説だったらしい。そういう意味ではこちらが本編。科学的な考察、政治的な考察がちゃんとされていて読み応えがある。米国と対立した日本を救うのがリークだというのも、WIki Leaksやsengoku事件を思わせる。ユダヤ人との比較、ナショナリスト対コスモポリタンの議論も興味深い。

特筆すべきは、地球シミュレータの大活躍。関係者は是非読むべき。こんなに精度よく予想できるんだったら本当にいいんだけどね。。。

日本沈没 第二部〈上〉 (小学館文庫)
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2011年3月5日土曜日

宇宙暮らしのススメ

宇宙暮らしのススメ 野田 篤司 ISBN4054041426 学習研究社

著者は、JAXAの「現役宇宙エンジニア」。 イラストというか漫画をあさりよしとおが書いている。「科学漫画のオーソリティ」だそうだ。そうだったのか。

内容は中高生向け?の解説書。あさりよしとおの漫画解説もわかりやすい。 重力井戸への突入、脱出に多大なコストがかかる惑星をさけて、 小惑星ベルトに行って中を掘ってコロニーを開拓するべき、と説く。 なるほどね。宇宙に行くのは理屈じゃない!という熱さがよい。

宇宙暮らしのススメ
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野田 篤司
学習研究社
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2011年3月1日火曜日

シンギュラリティ・スカイ

シンギュラリティ・スカイ チャールズ・ストロス ISBN4150115672 ハヤカワ文庫SF

21世紀の半ば、人類は謎の異星人エシャトンによって、数千光年に渡る範囲に強制的にばらまかれた世界。 人類はそれぞれのばらまかれた点で独自の文化を形成し星間航行に乗り出し再会していたが、 エシャトンはその後も、因果逆転を本質的に意味する超光速航行を意図する種族を滅ぼしている。 そんななか、旧ロシア帝国の伝統を引く、技術を否定し19世紀に退行した世界に、 電話が降り注ぐ。電話は情報と引き替えに願いをあらゆる願いをかなえ、 急速に世界の経済と政体を破壊する。

これを侵略ととらえた帝国の主星は艦隊の派遣を決定。艦隊は時間を遡航しての 不意打ちを仕掛けることを決定。 しかし、艦隊にはこれを妨害する任務を帯びた工作員が。 さらに国連から謎の密命を帯びた美女が。。

なんか、ガジェットいっぱいすぎておなかいっぱいです。 エシャトンは完全にスルーだし、フェスティバルも嵐のように去ってしまうし。。。 アレステア・レナルズとかもそうだけど、最近のイギリスSFはいろいろ 盛り込みすぎなんじゃないだろうか。 まあ、面白くはあるのですが。

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Excelプロトタイピング ―表計算ソフトで共有するデザインコンセプト・設計・アイデア

Excelプロトタイピング ―表計算ソフトで共有するデザインコンセプト・設計・アイデア Nevin Berger, Michael Arent, Jonathan Arnowitz, Fred Sampson ISBN4873114411 オライリージャパン

Excelほど「創造的」な使われ方をしているソフトも珍しい。 あるときもらったExcelファイルには、複数のファイルがただ貼り込まれているだけだった。 つまり、アーカイバの代わりに使われていた、という。。。 履歴書などのテンプレートがWordじゃなくて、Excelだったりすることもよくある。

まあ、つまりExcelはある意味万能なので、いろんな使い方ができちゃう、ってことなんだろう。 この本は、そんなExcelをつかってWebページやソフトウェアなどのデザインモックを作りましょう、 という本。Excel方眼紙を使うのは日本人だけかと思っていたら、そんなことはないらしい。 Excelには、いろいろな部品があるし、UIがこなれているから、やりたいことがすぐできるので プロトタイピングにぴったり、ということなんだろう。

しかし、それでいいのか、という気も。明らかに別の目的に作られたソフトウェアなのに。 とはいえ、Excelほどお金をかけて作られたソフトウェアも滅多にないわけなので、 プロトタイピング用にあらたにソフトウェアを書くよりもなんぼか効率的なのかも。。。うーん。

オライリーにはめずらしいフルカラー。付録に安藤幸央氏による、日本版オリジナルのiPhone UIプロトタイピングという記事付き。

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さらば国分寺書店のオババ

さらば国分寺書店のオババ 椎名 誠 ISBN4101448175 新潮文庫

椎名誠のデビュー作なのだそうな。昭和54年に単行本がでている。 駅員や警官、さらに教条的なルールを押しつけてくる国分寺の古書店のオババに対する 愛憎をぶちまける、エッセイ?なのか?

自ら「昭和軽薄体」をなのる軽い文体は今読んでも面白い。30年前当時はさぞやインパクトあっただろう。

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