時間モノ短編アンソロジー。やっぱり、テッド・チャンがよい。
名手テッド・チャンのアラビアン・ナイト的な小品。20年前と現在を自由に行き来できる扉。しかし過去をかえることはできない。事実は変わらなくても癒されることがある、という。
未来から来た「凍結者」によって、時間のなかに固定されてしまった青年と恋人。
老婦人と恋いに落ち、そして失った青年が、マックドナルドをもちいて並行世界を移動、時間を遡上する。
光が透過するのに非常に時間がかかる「スローガラス」もの。そういえば、笠原弘子に「スローガラスの輝き」というのがあるなあ。
アレクサンドリアの図書館を見に過去に戻った青年が目にしたものは、妙に現代的な街だった。
大金をはたいて終末を見に行った人々のみたものはそれぞれ違っていた。
目が覚めると、そこはまだ準備中の「水曜日」だった。
北と南で時間の流れが全く異なる世界で、北の最前線から解任された兵士が、南に戻り、また北に配属される。
記憶をもったまま、若い自分に巻き戻る「リプレイ」もの。
「ループ」もの。12時からの1時間を無限に繰り返す世界に一人だけ連続した意識をもったまま閉じ込められた男の孤独。
宇宙人により、1日単位のループに、全人類が巻き込まれ、不死の世界を生きるようになる。6時から8時の自由時間以外は、毎日完全に同じことを繰り返さなければならなくなった。しかし、その繰り返しは完全ではなかった。
原始状態ではじまり夕方には産業が発達する、というループを繰り返す世界。
表題作。意識の連続性を保ちながら、自分の人生の時間軸の上をあちこちとびまわる男が、同じ境遇の女性に出会い、人生を改変していく。
早川書房
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