2011年4月30日土曜日

クマムシ?!―小さな怪物

クマムシ?!―小さな怪物 鈴木 忠 ISBN4000074628 岩波 科学ライブラリー

苔などの中にいる1ミリに満たない緩歩動物クマムシ。4対の足で歩く様はたしかに熊をおもわせ、かわいらしい。 ゆっくり乾燥させると手足を縮めた樽型に乾き、代謝が停止して、高圧、高温、低温、真空にも耐えるという。

本書は、国内の第一人者がまとめた入門書。わかったのは、なにもわかっていないんだな、ということ。クマムシは独立した門を構成するらしいのだが、生態も、どこにどのくらいの種類がいるのかもまた区分かっていない。

樽型形態のサバイバル力はすごいけど、蘇生した個体は、樽型前の個体と記憶などの点で連続性があるのだろうか。実はなにもかも忘れてたりして。

このシリーズ、軽くて読みやすくてよい。字もでかいし。ターゲットは中高年か?

クマムシ?!―小さな怪物 (岩波 科学ライブラリー)
鈴木 忠
岩波書店
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星の舞台からみてる

星の舞台からみてる 木本 雅彦 ISBN4150309981 ハヤカワ文庫JA

ほとんどの人が、バディとよぶエージェントシステムとネットワークを使って生活している近未来。死後の後始末全般を請け負うHCC社に務める主人公香南は、HCC社の設立メンバにして伝説的なハッカー野上の死の処理を任され、野上の人生をたどることになるが、親会社からの妨害、謎の高校生の乱入、死んだはずの野上からのメイルなどなどにより難航する。一方香南のエージェント「カナ」は野上のエージェント「ボク」とコンタクト、「ボク」は得体のしれない新たなエージェントを育て始める。

代理人としてのエージェントは好きなんだが、モバイルエージェントのエージェントはちょっとなあ。。 「トップをねらえ!」の「オカエリナサヰ」ネタがうれしい。

作者は仕事でお世話になっている某社の現役SE。ということで、近未来といわず現行のテクノロジーの話がたくさんでてきて面白いというか、夢がないというか。夭逝したネットワーク系ハッカーというとitojun氏を思い出す。

星の舞台からみてる (ハヤカワ文庫 JA キ 7-1) (ハヤカワ文庫JA)
木本 雅彦
早川書房
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2011年4月27日水曜日

人形式モナリザ Shape of Things Human

人形式モナリザ Shape of Things Human 森 博嗣 ISBN4062735857 講談社文庫

瀬在丸紅子、保呂草潤平、小鳥遊練無、香具山紫子が活躍するVシリーズの2作目。練無がバイトに行った高原の別荘地の乙女文楽の博物館で、長老にあたる老婆が刺殺される。たまたま訪れていた紅子の元夫林警部とその愛人祖父江らが捜査にあたるが、さらに別の毒殺事件と傷害事件が。。。

人形モナリザの話は、まあそうかな、という感じのはなし。最初の刺殺のトリックは伏線どおりでなかなか好ましい。Vシリーズはつまみ読みして筋が全然わからないので、頭のほうから読んでないのを補っていく所存。ちょっと登場人物がわかったぞ。

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)
森 博嗣
講談社
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有限と微小のパン

有限と微小のパン 森 博嗣 ISBN4062732947 講談社文庫

S&Mシリーズの最終作。1作目「すべてがFになる」のサブタイトルが「The Perfect Insider」であったのに対して、こちらには「The Perfect Outsider」というサブタイトルがついている。

萌絵と二人の友人は、萌絵の幼少時の許嫁にして、ナノクラフト社の社長塙の招待に応じて、 ナノクラフトが本社を置く長崎のユーロランドなるテーマパークを訪れ、 不可解な殺人事件に巻き込まれる。ナノクラフト社は、真賀田 四季と協力関係にあった。

Virtual Reality や Augmented Reality 的な話が出てきておもしろい。1998年当時は 相当斬新だったんじゃないだろうか。トリックはトリックと言うほどのものでもない感じ。反則気味。

一般人モードの四季が描写されているのは初めてかも。 随分古い作品のような気がしていたのだけど、「綾波レイ」が言及されている。 よく考えるとエヴァンゲリオンは1995年だから、1998年にでたこの話よりも古いのか。。

有限と微小のパン (講談社文庫)
森 博嗣
講談社
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2011年4月24日日曜日

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 竹中 正治 ISBN410610279X 新潮新書

日米の経済文化比較論。単純に日本が悪い、遅れてる、というような話になっていないのがよい。 タイトルは、最大公約数をターゲットにマスプロダクションを行うマクドナルドと、作り手が自己の職人的センスを信じて少量生産を行うラーメン屋に、日米のビジネスモデルの相違が現れている、と言うような意味。 日本のベンチャーが少ないのは、日本人がリスクをとるのを嫌うためではなく、外的要因への正しい反応だとしている。 日本は、危機感駆動型だ、というのは思い当たる節があるなあ。

客室乗務員は見た!

客室乗務員は見た! 伊集院 憲 ISBN4101317712 新潮文庫

JALの元チーフパーサーが語る、さまざまなお客たち。 機内で産気づいて出産しちゃった、と言う話はびっくりだな。

とはいえ、人間対人間の関係が成立しているファーストクラスの話がほとんど。 エコノミークラスは荷物扱いでそもそもそういう関係が成立してないからな。

客室乗務員は見た! (新潮文庫)
伊集院 憲弘
新潮社
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コワ~い不動産の話

コワ~い不動産の話 宝島編集部編 ISBN4796676147 宝島SUGOI文庫

一戸立ての施工不良や、マンションのスラム化などなどの話題を広く浅く。 マンションのスラム化は、構造的に確実におこる様な気がする。特に数百戸レベルの大マンションや 高層マンションを、住民が総意を統一して建て替えられるとはあんまり思えない。 40年後、湾岸マンション群は一体どうなるんだろう。

コワ~い不動産の話 (宝島SUGOI文庫 A た 5-1)
宝島社編集部
宝島社
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2011年4月23日土曜日

椅子と日本人のからだ

椅子と日本人のからだ 矢田部 英正 ISBN448042797X ちくま文庫

コルプス(武蔵野身体研究所)主宰の本。修士論文をまとめた直後に書いた、とのことで、論文にありがちな文体になっているのがちょっとおかしい。要するに骨盤をささえるのが重要で、背もたれは必須ではない。ランバーサポートではなく、もう少し下を支えるべきだ、ということなのだが、何か話が大仰だ。作品の椅子はウツクしく欲しくなってしまう。ただ、どれもあんまり仕事向きじゃないな。

椅子と日本人のからだ (ちくま文庫)
矢田部 英正
筑摩書房
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2011年4月19日火曜日

シャーロック・ホームズ最後の解決

シャーロック・ホームズ最後の解決 マイケル・シェイボン ISBN410203613X 新潮文庫

コナン・ドイルではなく、現代の作家が書いたシャーロック・ホームズ最後の事件。ホームズ89歳。ひとりで田舎に引込み、養蜂家となっている。孤独な老人の一人暮らしや、ホームズの衰えた体と精神が丹念に書かれていて、なかなか来るものがある。

ホームズ宅の近隣の司祭館に下宿する販売員が撲殺され、しゃべることのできない障害を持つ9歳のユダヤ人が大切にしていたオウムが姿を消す。オウムはあやしい番号を喋ったりしていた。 正直言ってミステリーとしては、ネタもなにもなくしょうもないのだが、描写がよい。こういう晩年に立ち向かうホームズもなかなかよい。

英語のタイトルはThe last resolutionでホームズの名は入っていないし、文中も一貫してホームズの名前は出てこない。 著者は、07年に「ユダヤ警官同盟」でヒューゴー、ネビュラ、ローカスを総取りしているのだそうだ。これもぜひ読まなければ。

シャーロック・ホームズ最後の解決 (新潮文庫)
マイケル シェイボン
新潮社
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コワ〜いパチンコ店の話

コワ〜いパチンコ店の話 宝島編集部 ISBN4796681485 宝島SUGOI文庫

パチンコ、スロット関連の業界のうわさ話。大した内容ではない。 表層的な話ばかり。もっと構造的な問題に関する話が読みたかったなあ。。

コワ〜いパチンコ店の話 (宝島SUGOI文庫)

宝島社 (2011-03-04)
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2011年4月14日木曜日

世界一わかりやすいMBA入門講座

世界一わかりやすいMBA入門講座 トム・ゴーマン ISBN4893466925 総合法令出版

アメリカの本屋でよく見かけるTHE COMPLTE IDIOT'S GUIDE シリーズ。日本語で書けば「さるでもわかるMBA入門」といったところか。このシリーズ、なかなか面白いのがそろってるけど、かなりアメリカ文化べったりなのでなかなか邦訳されない。手元には「Martial Arts」があるなあ。似たような感じのシリーズに「For Dummies」シリーズがある。Twitter Application Development For Dummies とかニッチなものもあってびっくりだ。「Making Marriage Work for Dummies 」とか「Dating for Dummies」とかもある。すごいな。

内容はざっくりとMBAで学ぶ内容を広く浅く説明している、らしい。会社のオペレーション、マーケティング、会計、プロジェクトマネージメントなどなど。知らないことばかりで大変参考になる。このくらいの内容は高校で全員に教えてもいいんじゃないかと思うぐらいだ。古い本で絶版になっているようだが、 reviseして再版してもいいんじゃないだろうか。

3人の訳者がかかわってるのだが、最後の部分の翻訳だけひどいことになっている。すべてのhave を「持つ」と翻訳するレベル。これはいただけないなあ。他の訳者がチェックしないと。

世界一わかりやすいMBA入門講座
トム ゴーマン
総合法令出版
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2011年4月13日水曜日

増補・日本経済新聞は信用できるか

増補・日本経済新聞は信用できるか 東谷 暁 ISBN4480427058 ちくま文庫

さまざまな意味で日本をリードする経済新聞であるところの日本経済新聞が、実は定見も根拠もなく米国追従を繰り返しているだけだ、と説き、過去の社説や記事がいかに変遷したかを論じる。著者は「民営化の虚妄」と同じ人。

たしかに「あおり記事」のようなものも多いのかもしれないが、そもそも経済学者や経済誌に定見を求めるのは無理なのではないかと言う気も。。。本当に問題なのは、日経新聞を相対化するような経済メディアが日本に他にないことなのだろう。

増補・日本経済新聞は信用できるか (ちくま文庫)
東谷 暁
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2011年4月12日火曜日

Javaルールブック ~読みやすく効率的なコードの原則

Javaルールブック ~読みやすく効率的なコードの原則 大谷 晋平、 米林 正明、 片山 暁雄、 横田 健彦 ISBN4774145475 技術評論社

大谷さんの名前が出ていたので。入門書を読み終わり、言語仕様を一通り理解した上で、Javaで実際にコードを書くときの注意事項が丹念にまとめてある。なにしろ一つ目は「(キーワードなどに)英語を使う」だ。ローマ字のキーワードを見ると気が抜けるもんな。

Javaでプログラムを書かせる大学の研究室などでも一冊常備してコーディング規範にするといいかも。

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2011年4月6日水曜日

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫) 上橋 菜穂子 ISBN4480427279 ちくま文庫

アボリジニというと、多くの場合オーストラリア北部に白人文化と隔絶されて暮らす人々を思い浮かべるが、オーストラリア西部には白人と混ざり、白人文化に半ば取り込まれて暮らす、多くのアボリジニがいる。北部は経済的に無価値だったため入植が行われなかったが、西部は酪農が可能だったため、多くの白人入植者がおとずれ、地域の伝統文化を破壊した。伝統文化の大半を失ったアボリジニは、一見白人文化に適応したかにみえるが、実は根っこのところで伝統社会から切り離されておらず、それが事態をさらに複雑にしている。

筆者は、小学校の教員として住み込み、その地に暮らすアボリジニと交流して、個々の物語を引き出している。筆者が女性で、しかもファンタジー作家であることが、この本を特別なものにしている。女性でなければこれほど多くの女性から物語を引き出すことはできなかっただろうし、作家でなければこのような形で記述することはできなかっただろう。

アボリジニ迫害の歴史は不幸だったとしかいいようがないが、じゃあ、どうするべきだったのか、というのは今から考えてもよく分からないのが悲しい。

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)
上橋 菜穂子
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2011年4月4日月曜日

"脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?

"脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? 池谷 裕二 ISBN4101329214 新潮文庫

脳科学者による、脳の解説、って最近やたらこういう本、多いような。VISAの出している会誌「VISA」での連載に、それぞれ口述で内容を補足した体裁になっている。解説はあの中村うさぎ。

最近の知見も書かれてるのだけど、やっぱりまだまだ全然分かってないんだなあ、ということを確認してるだけのような。

トヨタの闇

トヨタの闇 渡邉 正裕、 林 克明 ISBN4480427171 ちくま文庫

巨額の広告スポンサー料によってマスコミに追求されない聖地となったトヨタのなかで何が起こっているのか、というおはなし。 My News Japan の記事をまとめたもの。まるで北朝鮮のように閉鎖的な村社会、労使協調によって機能しない労働組合、残業にカウントされないQC活動、下請け孫請けへのコスト圧力などなど。

どこまで信じていいのかわからんけど、たしかにトヨタと仕事をしたことがある人で、トヨタをよく言う人って見たことない。

それはさておき、電気自動車時代には、トヨタの得意とする垂直統合モデルの優位性が薄れ、トヨタのアナログ的ノウハウとそれを支える終身雇用モデルは競争力を失う、と言う指摘は正しいような気がするなあ。。。創業一家を社長に据えてる様な時代じゃないと思うんだが。大丈夫かトヨタ。

トヨタの闇 (ちくま文庫 わ 9-1)
渡邉 正裕 林 克明
筑摩書房
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2011年4月3日日曜日

マンション管理組合の理事になったとき最初に読む本

マンション管理組合の理事になったとき最初に読む本 主婦と生活社 ISBN4391130068 主婦と生活社

法的な問題から、修繕に関する基本的な知識までカバーしていて、すばらしい。本当はマンションを買う前に読んでおくべき本のような気がする。

なんでこんな本を読んでいるかというと、やっぱり理事になってしまったからであり。。。しかも理事長。どうしたらいいんだ。。

あたりまえだが、まじめにやると、すごく大変だということが分かった。一方、管理会社にお任せして2年間すべてを先送りすると言う方法もありそうだなあ。。とにかく理事会のメンバーがちゃんと決まっていないと言う状態を何とかしないと話にならないわけだが。。

マンション管理組合の理事になったとき最初に読む本

主婦と生活社
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2011年4月2日土曜日

Apache Maven 2.0入門 Java・オープンソース・ビルドツール

Apache Maven 2.0入門 Java・オープンソース・ビルドツール 野瀬 直樹, 横田 健彦 ISBN477412964X 技術評論社

JavaのビルドツールMavenの本。随分前に買ったんだけど、ちゃんと読んでなかった。何となく使っていて、ちゃんと理解できていなかった重要なコンセプトを、いくつか理解できたように思う。

しかし、この本なんか読みにくい。おそらく章立てやテーマを読者に提示する順番に問題があるのだと思う。たとえばプラグインの書き方なんか、2章で書くようなことじゃないと思うのだが。リファレンス的な部分と概念の説明が整理されていないのも読みにくい理由の一つではないかと思う。後半は、開発の進め方とかプロジェクトマネージメントの話になっていて、Mavenとあんまり関係なかったり。

しかし、サンプルを見て思うのはやっぱりXMLベースのツールはキツイ、ということ。Mavenに限ったことじゃないけど、XMLが流行ってしまったのは、人類にとって大きな損失だったんじゃないだろうか。

Maven 3.0 もでたということだけど、このやり過ぎ感の漂うツールはこれからもは使われ続けるのだろうか。

Apache Maven 2.0入門 Java・オープンソース・ビルドツール
野瀬 直樹 横田 健彦
技術評論社
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