2011年4月6日水曜日

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫) 上橋 菜穂子 ISBN4480427279 ちくま文庫

アボリジニというと、多くの場合オーストラリア北部に白人文化と隔絶されて暮らす人々を思い浮かべるが、オーストラリア西部には白人と混ざり、白人文化に半ば取り込まれて暮らす、多くのアボリジニがいる。北部は経済的に無価値だったため入植が行われなかったが、西部は酪農が可能だったため、多くの白人入植者がおとずれ、地域の伝統文化を破壊した。伝統文化の大半を失ったアボリジニは、一見白人文化に適応したかにみえるが、実は根っこのところで伝統社会から切り離されておらず、それが事態をさらに複雑にしている。

筆者は、小学校の教員として住み込み、その地に暮らすアボリジニと交流して、個々の物語を引き出している。筆者が女性で、しかもファンタジー作家であることが、この本を特別なものにしている。女性でなければこれほど多くの女性から物語を引き出すことはできなかっただろうし、作家でなければこのような形で記述することはできなかっただろう。

アボリジニ迫害の歴史は不幸だったとしかいいようがないが、じゃあ、どうするべきだったのか、というのは今から考えてもよく分からないのが悲しい。

隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)
上橋 菜穂子
筑摩書房
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