2013年4月28日日曜日

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル 東 浩紀 ISBN4062173980 講談社

「動物化するポストモダン」で知られる思想家による論考的エッセイ。 本人が論文ではなく、エッセイであると書いている。実際とても読みやすい。 講談社の「本」に連載したものに加筆したもの。 冒頭に、あの東日本大震災の直前に完結したもので 今書くとしたら全然別の内容になるだろう、というようなことが書かれている。

私が把握した内容はこんな感じ。

  • 個々の意思の集合から、議論を経ることなく、いきなり立ち上がる「一般意志」は、集団の無意識のようなものである。ルソーはこの一般意志が共同体の主権者であると主張した。
  • ルソーの時代には、「一般意志」を機械的に抽出する機構が存在しなかったが、今は存在する。「ツイッター」や「ニコニコ動画」のコメントなどの、ほとんど反射的に書き込むメディアがそれである。 とはいえ、この「一般意志」が直接政治を行なうことは不可能である。
  • インターネットやSNSの発達によって、人的交流が促進され、 ひいては熟議が促進されるという議論は古くからあるが、 実際にはSNSでは似たような人間がクラスタを形成し、個別の島宇宙化して しまうので、実は議論の深まりにはまったく結びつかない、
  • さらに、個々の問題が複雑になりすぎ、議論に参加するだけで 非常に高度な知識を要求される ようになった現在、一般市民による熟議は事実上不可能である。
  • また、「熟議による民主主義」は、構成員がある程度の基盤を 共有していることを暗に前提にしているが、社会の多様化、複雑化により この前提は崩れている。現に、2chではまともな議論が成立していない。
  • したがって、代議員による熟議という形を今後も取らざるを得ないが、 その際に、議論を広く公開し、機械的に抽出された「一般意志」を フィードバックすることによって議論にある種の抑制を行なう ことが現実的ではないか。具体的には「ニコニコ生放送」を さらに洗練させ、タグクラウドや頻出語を議論参加者に 提示する。議論参加者は提示された内容を完全に無視することも できるが、現実にはかなり難しく、議論の方向性に一定の枠をはめる ことになるだろう。

平易でわかりやすく、面白かった。 ツイッターとミクシィ、フェイスブックのアーキテクチャの微妙な違いが、 社会における役割の決定的な違いに結びついている、という観察はさすが。 そうとなれば、意図的にデザインする事もできそうだが、 流行ってくれないとどうにも意味が無いからなあ。。

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