新装版 まぼろしの邪馬台国
ISBN4062761351, ISBN406276136X
講談社
1970年台の邪馬台国ブームを巻き起こした本を80年台に改定した新板をさらに文庫化したもの。 盲目の著者が妻の助けを借りて歴史の謎を解き明かす、ってことなのだろうけど、 読んでみるとなんというか、「トンデモ本」の匂いがプンプンする。 それは、議論の内容ではなく、そこここで、現在日本の風潮を嘆き、 学会の偏屈さを嘆き、同業者の剽窃を指弾し、 日本の将来を憂う、実にうざったい文章の構成から立ち上ってくるのだろう。
主張のポイントは、日本書紀、古事記に書かれた漢字にとらわれず音素だけを見て解釈すべきだ、 という点。それなりに説得力があるのかもしれないけど、結局最終的に比定した邪馬台国の場所が 著者の郷里である島原半島だというのでは、なんとも説得力に欠ける。。。
読んでみて、なぜあの頃邪馬台国のブームが起きたのかは、なんとなくわかった。 戦時中はイデオロギー的に議論が封殺されていたのが、重しが外れたということなのだろう。 近畿ではなく、九州に持っていったのも、戦時中の「正史」に対する反動なのだろう。
この本を読んで思い出したのは、清水義範の「序文」。 ある市井の学者が発表した奇天烈な書籍の、それぞれの版の序文だけを集めたものという趣向で、 著者は版を重ねるごとに傲慢になっていくが、死後すべての学説が否定されたことが明らかにされるというもの。 この人の学説がその後どのように検証されたのか知らないが、やっぱりもう少し謙虚に書いたほうが なにかといいんじゃないだろうか。
新装版 まぼろしの邪馬台国 第1部 白い杖の視点 (講談社文庫)
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